第四十六話「魔神戦争」
※改稿済み(2017/5/1)
「ゴホゴホ……すまぬのうルーシェリア王子。遥々王国から尋ねてくださったのに療養中の身にてベッドの上からで申し訳ござらぬが勘弁してくだされ」
「お父様、王子は細かいことは気にしないお方なのです。お気に病むことはないのですよ」
ドロシーは瞳に悲しみの色を浮かべ、竜王様の背中を優しく擦る。すると竜王様はドロシーを心配させないように、元気そうに振舞う。そんな二人の姿を見ていると、やるせない気持ちになってきた。
けれどもドロシーは俺を気遣ったように、人懐っこい笑顔を向け、
「わたしもお父様も無事なのですよ。王子がわたし達の無念を晴らしてくれたのです! わたしもお父様も王子に感謝してるのですよ!」
それでも俺の立場はミッドガル王国の王子。どんな経緯であったとしても、まったく無関係を装うことはできない。晩餐会に招待したのはミッドガル王国であるのだから。
なので頭を下げようと思ったのだが、竜王様がそれを遮るように「よいよい。お主達の気持ちは十分に伝わっておる。むしろ腰を低くせねばならぬのはワシのほうじゃ。わっはっは」と、言った調子で愉快そうに笑うと俺に真剣な眼差しを向けてきた。
「お主はワシの娘を将来嫁に迎えてくれるのじゃろ? よろしく頼むぞ!」
頭を下げられた。そしてドロシーの顔が瞬時に上気し「お、お父様っ! いきなりなんなのですかっ!」と、頬を真っ赤に染めた。
また話の流れから察するとドロシーは竜王様の実の娘ではないようだ。つまり育ての親であり義父であるのだ。けれども本当の親子みたいに仲睦まじいな。
また、話は変わり郷田が襲撃して来た時の様子を聞くこともできた。竜王様は竜に変身して戦ったそうだ。それでも郷田の強さには敵わなかったらしい。死を覚悟したところで、ドロシーが竜王様を必死に庇い。そのドロシーを二人の召喚勇者が庇ってくれたらしい。
間宮が言っていたことは事実だった。間宮と清家は本当に竜王様とドロシーを庇っていたのだ。しかも清家は郷田の目を盗んで、竜王様に治癒魔法もかけていたのだ。そのおかげで竜王様も命拾いしたらしいのだ。
処刑は厳し過ぎるな……メアリーもそう感じたような表情をしていた。
「ところでルーシェリア王子よ。年寄りの昔話にちょいと付き合ってくれぬかの?」
竜王様もシャーロットと同じように、魔神戦争の時代から生きている。
どうやら当時の戦争について語ってくれるそうだ。
「お父様は昔話が大好きなのですよ! 王子もメアリーさんも是非聞いてあげてください!」
「すまぬのう……若い者を目の前にすると、ついつい語りたくなるのじゃ」
「いえ、僕の方こそ興味がありますので」
「私も是非、お聞かせして頂きたいです」
俺とメアリーが頷くと、竜王様は遠い目をして語り始める。その話の序盤は俺も知っていた話であり、要約すると魔逢星が接近すると邪神が復活し、闇の種族達は邪神の呪縛に囚われるという話だ。
また、この世界でいう闇側の種族とは、魔物や魔族、闇エルフを一般的に指すようなのだが、竜族は闇側の種族ではないらしい。無論、人族もそうなのだが、心に大きな闇を抱えている者は、その隙間を突かれ種族に関係なく闇堕ちするらしい。要は心の問題だという。清い心が勝れば邪神の波動に打ち勝つことができるそうなのだ。
しかし、残念なことに竜王様は一度闇堕ちしてしまったらしい。
だが、二人の英雄が闇堕ちした竜王様の心を救ってくれたという。その一人がミッドガル王国建国の英雄王であるレビィ・アレクサンダー・ベアトリックス一世であり、もう一人がシャルル・シャーロット・シルヴェスターだ。
それから本格的に光と闇が袂を分かち、それぞれの種族の生存をかけた戦いが始まったそうだ。そして最後に邪神と雌雄を決した者達が、六英雄として今でも語り継がれているようなのだ。
「六英雄ですか」
「うむ。残念なことにワシはその中に含まれておらぬ。しかしな……そんなことは小さき事じゃ……」
そう言いつつ、凄く残念そうな顔をする竜王様。その竜王様の顔を見たメアリーが可愛らしく微笑み、
「英雄王様とシャーロット様以外の英雄様達は、私もあまり存じません。よかったらお話して頂けないでしょうか?」と、メアリーが言葉を発した。
すると竜王様は静かに頷き、一人ずつ丁寧に、その他の英雄達の話をしてくれた。
まず最初に話してくれたのがドワーフ族の戦士で、その名は酩酊のファーガス。
酒に酔えば酔うほど強くなる特異体質のドワーフだったそうで、彼が振るう戦斧は、有象無象に生えだす邪神の触手をことごとく屠ったそうだ。酔拳みたいだな。
その次に語ってくれたのは無双の槍の使い手である狂戦士ジェラルド。魔族でありながら不屈の精神力で邪神の波動を退けたらしく。狂戦士化してもその不屈の精神力は折れることもなく、自我を維持し戦い続けたそうだ。並みの精神力じゃねーな。黒い剣士も顔負けだな。
そして次に竜王様が名をあげたのは若き聖女セリーヌ。天使族と呼ばれていたそうなのだが、竜王様と同じように竜の姿に変身することもできたようなのだ。神聖魔法に長けていたらしいのだが、最後の決戦時にその命を儚く散らしたらしい。
最後に話してくれたのが、赤髪のラッセル。
小人族で手先が器用な吟遊詩人だったらしく、魔力の籠った歌や音楽で仲間をサポートしたらしい。英雄譚を世界に広めた人物でもあるらしいのだ。
そこまで語り終えた竜王様は深い溜息を吐く。話し疲れたのかな? そう思った直後、竜王様は深刻そうな顔でポツリと呟いた。
「法王庁はワシとこの浮遊城の存在を許さぬであろうな……」
竜王様はいかにも聞いて欲しいと言わんばかりの表情だ。
「どうしてなんです?」
「魔逢星が接近した時にワシがまた闇堕ちし、またもや敵に回ると考えておるのじゃろう」
なるほどな。この浮遊城の存在にも法王庁は恐れを成しているらしい。
「ちなみに竜王様、この浮遊城ってなんなのですか?」
「ワシにも詳しくは分からぬ。分かっていることは、ワシは赤子の頃からこの宇宙船にいたようなのじゃ。もう既にお主も気づいていると思うのじゃが、この城の土台は宇宙船であるのじゃ……もしかするとワシは宇宙人なのかもしれぬな。わっはっは」
……宇宙人って……ひょっとして、どこかの惑星から漂着して来たしてきたナ○ック星人とか言わないよな?
しかもこの宇宙船には、まだまだ未知の科学兵器が格納されているらしいのだ。
マジかよ! それめっちゃ見たいわ!
「竜王様、その古代兵器を見せてくれませんか?」
「別に構わぬぞ。ドロシーよ。王子達を案内して差し上げるのじゃ」
「はい、なのです。お父様」
それはきっと壁画に描かれていた戦車や戦闘機に違いない。オラ! わくわくしてきたぞ!
「では、王子。早速ご案内するのです!」
そんな訳で俺達は格納庫へと足を運ぶのだった。
六章改稿も残りあと3話です。大幅に書き直してます。
この調子でがんばろう。あと別に軽いノリの従魔使役系の俺つえーも書いてます(息抜きに)




