第三十六話「間宮祐介」
※改稿済み(2017/4/21)
鉄格子の向こう側に間宮祐介がいる。
鍵を廻し中へ踏み込むと、間宮は俯いていた顔をそっとあげた。
「どうも……先日の王子様ですね」
その声には抑揚もなく体力的も消耗しているようだが、清家と違って落ち着いた雰囲気を纏っていた。今回の俺は真顔であり、ウルベルトも出しゃばらない。
俺は穏やかな口調で、
「君にも聞きたいことがある」
そう言うと間宮は、「私が知っていることなら、包み隠さず何でも話しますよ」と、返答した。憔悴しきっているにも関わらず柔らかい笑みを浮かべる。
そして俺は間宮に尋ねた。
「なんで竜王様を襲ったりしたんだい?」
すると間宮は落ち着いた口調で、
「その理由の一つに魔逢星が絡んでいるようです」
「魔逢星だって?」
「ええ、法王庁は世界各地に存在する魔を宿す者達に恐れを抱いてるのですよ」
魔逢星が襲来すると、闇の種族達は体内の魔素が活性化され、邪神に心を奪われるという。つまり法王庁は事前に敵になり得る者達を駆逐し排除しようとしているようだ。
「でも、竜王様はそうじゃないだろ?」
「そうですね……私も竜王様を拝見してそう感じましたよ」
間宮は竜王様を襲撃した件を悔やみつつ、さらに話を続ける。
「王子、私の個人的意見なんですが、法王庁の目的は闇の者達の撲滅の他にも何か別に真の目的があるように感じます。しかしながらそれが何なのか全く見当はつきませんが……」
間宮は違和感を覚えているようだ。だよな……かつて竜王様は邪神が放つ闇の波動に打ち勝った。人族と共に戦ったのだ。
とりあえず法王庁の目的は世界秩序の維持のようで、『魔女狩り』ならぬ『魔族狩り』を推し進めようとしているようだ。それはいずれ本格的に動き出す。今はその準備期間でしかないという。なるほどな。
この世界で魔を宿す者達は、ミッドガル地方とはまた別の大陸であるベルベット大陸。通称、魔大陸でその多くの者達が暮らしている。
メアリーとウルベルトも間宮の話に頷きつつ、聞き入っていた。
淡々と素直に答える間宮にウルベルトも好感を抱いたようで、
「坊ちゃん。毒殺されたシメオンの件についても尋ねてみましょう。何か知っているかもしれません」
間宮はその質問に答える前に、「私は処刑の日を待つだけの状況です。ですからけして嘘偽りは語りません。法王庁に義理立てする気もございません」と、前置きし、正面の牢屋に投獄されていたシメオンに抗議したことも俺に伝えてきた。
また、この世界に召喚されてきたクラスメートの半数近くが、元の世界に帰れることを切に願っていることも添えてきた。召喚されたなら戻る方法もあるはずだと、シメオンを問い詰めたらしい。が、結局彼は間宮の問いに答えることもなくこの世を去ったのだ。
毒殺に関しては間宮は何も知らなかった。
シメオンは粗末な食事に不満をもらしつつ、口に運んだ途端、呻き声を上げ苦しみだしたらしい。
その日からしばらく間宮と清家は恐くて食事が喉に通らなかったらしいが、いずれ処刑される身。空腹に耐えかねて食したそうだが、毒は盛られていなかったとの話である。
間宮はそこまで話すと深刻な表情を俺に向け、
「ルーシェリア王子、お願いがあります」
その願いは命乞いだった。
「私と清家さんは、反対したのです。郷田くんと骨山くんは聞く耳を持ってくれませんでしたが……」
詳しい話を聞くと、間宮と清家の二人は、瀕死の重傷を負った竜王様の命乞いをした魔術師を身を呈して庇ったそうだ。
つまり、竜王様を襲撃した一味ではあるけれども、ある意味竜王様やドロシーを助けたのは自分達だと主張した。
参ったな……この展開は予測していなかった。
複雑な心境だ。この話が真実なら、俺は彼らを助けたい。
もっと詳しくドロシーに聞いとくべきだったな……あの日の俺は自分の過去のことを告白するだけで頭の中がいっぱいになっていた。
間宮や清家も自らの判断で状況を踏まえつつ、行動に出ていたということだ。
処刑されちゃうのは可哀想だな。ウルベルトも困ったような表情をしていた。
だが、二人の処刑を裁断したのは、法王庁であり、彼らの身柄は法王庁に属する。
俺は考えた。法王庁は何で彼らにそんなに厳しい処断を下したのだろうかと。
勝手な推測なのだが、竜王様襲撃は暗殺であり、しくじったことにより、事が明るみになってしまった。
なので、法王庁としては、その首謀者を祭り上げる必要がある。実際、法王庁もこの件に関しては、シメオンの独断による暴挙だと言い張っているようなのだ。
つまりミッドガル王国の体面を潰した詫びとして、彼らを差し出したのだろう。
体のいいトカゲの尻尾切りだな。
「ルーシェリア王子……私と清家さんを助けてくれませんか? どうにかなりませんか?」
寂しげな眼差しでそう言った。
しかし、俺の独断で助ける訳にもいかない。
伯父上であるオースティン公爵が、承認したものを覆すのは困難だ。
この国の祭り事は、国王も伯父上に任せているようだし、そもそもこのミッドガル王国の最高権力者と言っても過言ではないのだ。
助けてあげたい気持ちは芽生えているのだが、7歳の姿の俺に何ができるのか? 今日で8歳らしいけど。とにかく今は何も妙案が浮かばない。時期を窺い機会を待つしかないだろう。
「間宮……僕個人としては何とかしてあげたいと思う。でも……期待はしないでいてほしい」
「ルーシェリア王子のお気持ちは理解できました。期待せずに待ってますね」
儚げな表情を浮かべる間宮を見て、メアリーもウルベルトも胸が痛んだような顔をしていた。
実際、彼らはこの世界に有無言わず拉致されて来た。望んだ人生ではないだろう。
間宮の成績なら有望な大学に進学し、大企業に就職できたかもしれない。
とはいえ成長した彼がどんな人生を歩んで来たのかは知らない。29歳までの記憶があっても、引き籠っていた俺には友達がいなかったからだ。
なので、クラスメート達のその後の人生を風の便りで聞くこともなかった。
ともあれ処刑が執行される日まで、まだ猶予はある。出来ることなら助けてあげたいものだ。そんな想いで俺は牢獄を後にするのだった。
響~小説家になる方法~という漫画を全巻買ってきました。まだ読んでませんが、面白いと聞きました!
2017年のマンガ大賞の大賞受賞作と帯に書いてあります。改稿の合間にわくわくしながら読んでみようと思ってます!小説書くのに役に立ちそうな話らしいです!
休みの日になるべく改稿進めて、次話投稿できる日が近づくように頑張ります!




