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第二十三話「真相」

※改稿済み(2017/4/3)

「い、今の……お、お前がやったのか?」


 岩砲弾を高速で撃ちだし、郷田の大剣を粉々に粉砕してやった。

 郷田は砕け散った刃を呆然と見つめた。


「もう茶番はおしまいだ。僕がケリをつけてやる!」 


 俺はシャーロットの負傷した肩に成長活性の魔術を施す。

 成長活性の魔術は自然の治癒力を極限にまで高める魔術だ。神聖魔法のような圧倒的な回復力はないのだが、傷口を塞ぐ程度ならお安い御用だ。


「応急処置ですが、これで我慢してください」

「ありがとう。嘘みたいに痛みが引いたわ」


 シャーロットが郷田から負わされていた傷口は想像以上に深かった。痛みが引いたというよりも若干痛みが軽くなった程度だろう。


「シャーロット。この戦い……後は僕に任せてください!」


 骨山が石を投げ、間宮が沈黙の魔術で決闘を妨害したのだ。誰にも文句は言わせないぞ。 

 周囲の反応を窺う。オースティン公爵も異論を唱える様子はない。むしろ郷田の大剣を軽々と破壊した俺の魔術の威力に驚嘆していた。


 しかし、声を荒げる者が一人だけいた。シメオン司祭だ。


「ルーシェリア様! このような乱入、けして許される行為ではございませぬぞ!」


 シメオンは癇癪を起こしたように憤慨し、鼻の穴を膨らます。

 

「この決闘は女神アリスティアの名の下によって行われているのじゃ! それはすなわち、神聖なる儀式。つまり神を冒涜した行為なのじゃ! この罪状、王子といえども免れませぬぞ!」


 俺はすました顔でいい返す。


「へ~、罪状ねぇ……この僕を異端審問にでもかけようってのかい? 面白い冗談だよ」


 逆上したシメオンが、あーだこうだと説教じみた屁理屈をこねてくる。あまりにも鬱陶しいので、耳を塞ぐ。塞ぎつつも郷田の動向には注意を払う。


「邪魔だ! どけ、おっさん! ……く、クソガキがっ! 絞め殺してやる!」


 ぶちキレた郷田がシメオンを突き飛ばし、俺に牙を剥いてきた。

 完成済みの魔術術式を発動。それは生命の活動を封じる凍結魔術。郷田の身体がピキピキと凍りつく。


「君にはもう無理だよ。その身体でどうやって僕を絞め殺すつもりかい?」

「くっそ……! ま、またかよ! う、動けねぇ!」


 頭だけ残し凍結させた。後から洗いざらい吐いてもらうためだ。

 そして俺は、すぐさま間宮に向って叫ぶ。


「無駄だ。無詠唱の僕には沈黙の魔術は通用しない!」

「あはは。バレていたんですね……恐れ入ります」


 間宮はクラスで一番の秀才だった。彼はミッドガル王国から賢者の称号を授与されている。間宮は爽やかに微笑み素直に白状した。郷田を手助けする者は、もはやこの場にはいない。仮にいたとしても叩き潰すのみだ。


「この狼藉者めがっ!」


 このような状況に及んでもシメオンの罵詈雑言は尽きない。


「おいっ! シメオンのおっさん! もうネタは上がってるんだぞ!」


 7歳児には似つかわしい言葉を吐いてしまった。俺も少々興奮気味なのだろう。

 だが、冷静に対処せねばならない。俺は間宮に問う。


「お前が沈黙の魔術を行使したのは、シメオンの命令だよな?」

「隠してもバレていますよね……」

「ま、間宮殿! 何を申される! で、でたらめを申すでない! わ、わしは知らん! 知らぬぞ!」


 もの凄い狼狽ぶりだ。愉快でたまらん。


「やい、シメオン! 決闘は神聖な戦いなんだろ? でも、お前が命じてやらせたのなら、その罪は償って貰わないといけないな」

「ルーシェリア様、な、なんてこと申されますのじゃ! あなたの命を救ったのはこのシメオンではございませぬか!」


 シメオンは直接的には俺に神聖魔法をかけていない。それはメアリーに訊いて確認済みだ。アリスティア神殿にいる若き神官騎士達が頑張ってくれたのだ。むしろシメオンは俺が元気になって残念そうだった。少なくとも俺はそう感じていた。


 シメオンがオースティン公爵の方へ視線を移す。


「殿下! オースティン殿下! ルーシェリア様の乱入は万死に値する行為です! どうかお下知を!」


 何故、国王ではなく伯父上に指示を仰ぐ? やはり伯父上とシメオンはグルなのか?


 メアリーとウルベルトが俺を守るように駆け寄ってきた。フィルは負傷しているシャーロットの元へと向かう。


 ……さて、伯父上はどう判断するのだろう。この俺を糾弾してくるのだろうか。


「見苦しいぞ! シメオン司祭!」


 オースティン公爵は有無言わぬ迫力で、シメオンを一喝。予想外の展開にシメオンは激しく狼狽した。


「……で、殿下……なんと申されますか!」

「そなたはこの戦い。公平を期すと申しておりながら、石を投げた者を見過ごしていたではないか。実にくだらん余興だ!」


 オースティン公爵は厳格にそう言い切り、国王に耳打ちした直後、


「ヴィンセント、帰るぞ!」

「はっ!」


 漆黒の外套を翻し、この場を早々に立ち去る。


 シメオンは肩を落とし、その場に崩れるように膝をついた。


 あれれ? どうなってるの? シメオンは見捨てられたのか? 


 こうしてる間も郷田は罵声を上げ続けていたのだが、急激に体温を奪われた郷田は、もはや虫の息。元気がない。


 竜王様襲撃の件を追及したい。

 聞くところによると、竜王様は心お優しい方らしいのだ。襲う必要など断じてない。

 しかも晩餐会の日、郷田と骨山の両名は、竜王様の側近である魔術師をあざ笑った。

 失禁するほど追い詰めた。その魔術師は将来の俺の嫁であるドロシーのことかもしれないのだ。


 さて、その真相。


 知っていることを洗いざらい吐いてもらうぞ!


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