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第一話「29歳人生を後悔する」

ようこそ超魔術の世界へ、きっとあなたを魅了する世界へと誘います。

面白いですよ! 是非読んでみてください! 悲惨な主人公は1話だけです。

UFO・ロボット・ビームセイバー・そして現代世界なんかも先の話で登場します!

また1話の最後に誤解を生まないように加筆してます。

ジャンル変更に関しましては活動報告に記載しております。

※改稿済み(2017/3/24)


 俺は29歳。名を語るまでもない。

 引き籠り歴10年以上の、ベテランヒキニートだ。

 究極のブサメンで、この世に生を受けた俺は生まれながらにして、リア終だと悟った。


 小中学校は理不尽にバカにされ、イジメに耐えながらも乗り切った。

 ゴブリンのような顔の俺でも、両親だけはいつも優しかったからだ。


 人の価値は顔なんかじゃない。

 顔や身体なんて魂の器でしかない。

 大切なのは見た目ではなく、人を思いやれる優しい心だ。

 そう語る両親の言葉を、励みに今まで生きてきた。


 いつの頃だったか……人生で初めて恋心を抱くまで――――。




 高校二年の夏。俺は初めて恋をした。

 ブサメンは未来永劫、恋愛なんか縁がない。

 そう思い頑なに拒絶して生きてきたのだが、クラスメートにはにかむ笑顔が天使のように素敵な女の子がいた。


 授業中、俺の落とした消しゴムを隣の席にいた彼女は、優しく拾い上げてくれた。

 俺の私物に触れることすらキモいと躊躇(ためら)うヤツらが大半という、混沌とした環境の中でだ。


 彼女は消しゴムを拾い上げ手渡してくれただけでなく、にっこりと微笑みかけてくれたのだ。


 それは――――まさに俺にとっては奇跡ともいえる大事件であった。


 女の子に優しく微笑みかけてもらったことなんて、高校二年までの17年間の人生で一度たりとも、なかったからだ。


 あの日、俺の心は何かに揺り動かされた。

 胸がじーんと熱くなって、思わず涙がこぼれそうだった。

 両親以外で俺に微笑みかけてくれる存在など、皆無であったからだ。

 



 ある日。

 夕焼けが射し込む放課後の教室で、俺は偶然、彼女と二人っきりになった。

 消しゴムの件から俺は彼女に淡く切ない想いと期待を寄せていた。

 多くの女子生徒が俺を冷たく拒絶し避ける中、彼女だけは俺を見てもイヤな顔ひとつ見せたことが無い。

 むしろ視線が合うと微笑みかけてくれる。


 そう俺にとって彼女だけが希望だ。


 彼女は美少女ではないが、愛橋ある顔立ちの癒し系で、クラスでも3、4番目ぐらいに人気があった。

 もし彼女を恋人にできれば俺の17年間のリア終は終わりを告げ、起死回生のリア充となることだろう。


 クラス最底辺で究極のブサメンの俺でも、可愛い恋人ができれば頑張れる。勇気を貰える。ハッピーになれる。けれども俺を見下してきたヤツらに、ざまぁしたいと思う卑しい考えもあった。


 時間が経てば経つほど期待感だけが無限に膨らんでいった。

 胸が高鳴りドキドキする日常。


 そして――――ふと気がつけば、頭の片隅にあった打算も消え失せ、俺は本気で彼女に想いを寄せていた。

 

 この気持ちを打ち明けたい。 

 きっと彼女は優しく微笑んでくれる。いつもように。

 不安だ。不安だが、彼女が他の男と付き合うことになったら俺は立ち直れない。

 

 早い者勝ちだ。告白は絶対にイケる。彼女は俺に気がある。

 目が会う度に微笑んでくれる。それってつまり、そうだよな。 

 


 しかし……二人っきりになるチャンスなんて早々巡ってこない。



 だが、謀らずともその機会は自然に訪れた。

 夕陽で染まる教室に彼女が一人佇んでいたのだ。 


 二度とないチャンスだと思った。

 

 全身が震えた。極度の緊張状態で俺は覚束ない足取りで歩を進めた。


 黒髪を夕焼けで幻想的に焦がす彼女が、俺の接近に気がつき振り向いた。

 目が合った。俺は渾身の想いで告白した。


 いつものように微笑みかけてくれる。

 そう信じて……。


 ところが、現実は残酷だった。


 彼女は俺を見るとギョッと驚き、足が縺れ姿勢を崩しその場に倒れ込んだのだ。

 慌てて手を差し伸べると、彼女はその手を取ることもなく土下座し震え声で俺に言ったのだ。

 魔物でも見るような目で、


『ゆ、ゆるしてください……』、と。


 彼女は一言、俺にそう告げると怯えたように走り去った。

 俺はその後ろ姿をただただ茫然と見送ったのだ。


 教室に一人、ポツンと取り残され、夕焼け空がやけに俺の心を抉ったのを今でも鮮明に覚えている。

 窓から夕陽を眺め見て、底知れぬ哀愁を感じた日であった。

  

 その日が人生のターニングポイントだったのかもしれない。


 翌日から俺の学校生活はさらに悲惨で苛烈なものに変貌した。

 告白した噂が学校中に知れ渡っていったのだ。


 俺の惨めな学校生活は、最底辺からさらなる深みへと嵌り転落したのだ。


『おい見ろよ、あいつが告白魔だぜ!』

『うわぁ~……きっも!』

『告白が許されるのはせめてフツメンまでだよね~!!』


 校内で俺を見た生徒は揃って同じ言葉を口にする。

 たった一度の告白で『告白魔』たる不名誉なあだ名が付いた。


 周囲から負の感情が押し寄せてくる。

 ゴミを見る目、侮蔑、蔑み、失笑。

 たまらず俺は走り出した。


 後ろ指をさされようとも、走り出した足はもう止まらなかった。


 気が付くと俺は男子トイレの中に逃げ込んでいたのだ。

 息も絶え絶えで全身から汗がびっしょりと滲み出ていた。

 少しでも心を落ち着かせようと思い、静かに鏡の前に立つとそこには――――


 はぁはぁ……と息を荒くしたブタ公爵がいた。


 死にたいぐらい下品な顔。顔面偏差値は限りなく低い。

 その時、もう恥ずかしくて学校に来れないと思ったのだ。


『あんた、キモいんだよ!』

『寄るな! この豚! 変態が感染するだろ!』

『こんなのに告白されたら流石のあたしも自殺しそうだわ……』


 飛び交う罵詈雑言。

 その監獄の中を悠々と歩く鋼の心。もはや完全に砕け散っていた。


 自殺したいのは俺の方だ……。


 そして俺は悟った。この世はブサメン厳しい世界。

 俺は生まれながらに不幸を背負っているのだと。

 


 ――――翌日から不登校になり、断固として引き籠った。

 それからの日々は……食う寝るゲーム、ラノベ、マンガに没頭。

 食の大半が菓子になった。



 人は生まれながらにイケメン、フツメン、ブサメンの三種族に区別される。

 残念ながら俺はブサメンたる種族の中でも究極のブサメンだったのだ。




 ――――29歳のヒキニート。それが今の俺だ。

 

「クソみたいな人生だ」


 長年引き籠っていた自室で俺は吐き捨てるように呟いた。


 無精ひげが生え、髪もボサボサ。

 

 親からは仕事しろだの散々言われ続けてきたのだが、この歳になると両親も諦めたのか、昔のように口酸っぱく小言を言うこともなくなっていた。


 俺の現状を哀れ悲しんでいたのだろう。その両親も、もうこの世にいない。

 最低なクズ野郎だけが、この家に取り残された。


 本来なら家から一歩も出たくないのだが、そうも言ってられない。


 重い腰をあげ両親の墓前に添える花を買うため花屋に立ち寄ったのだ。


 レジに運ぶと店員の女性は、何かおぞましいものでも見ているかのような目付き。

 スマイルの欠片もない。


 俺は投げやり気味に突き出された花束を受け取りそそくさと花屋を後にする。

 周囲の視線を気にしながら徒歩10分の距離にある両親の墓前へと辿り着いた。

 

 両親の墓前に花を添え俺は、胸が張り裂けそうな思いで謝罪した。


「父さん、母さん……すまなかった……ごめん」


 両親は一ヶ月ほど前、交通事故でこの世を去っている。


 小遣いという名の収入も途絶えた。このままではヒキニートもままならない。

 だからと言って仕事をしようとも思わない。

 この世界に俺の居場所なんて……そもそもなかったのさ。


 結論、クズは状況が変わろうがクズのままだ。

 いまさら人生をやり直す気力などない。もはや手遅れなのだ。


 後悔が尽きない――――ブサメンでも人生逃げずに頑張っていれば、もう少しマトモな人生を送れたかもしれない。違った未来があったかもしれない。奇跡的に家庭を築くことができたかもしれない。


 時間は過去には戻らない。一人ぼっちは寂しい。俺のターン終了だ。


 心の片隅で死を求めるように帰路、彷徨い歩いた。

 自殺する勇気すら持ち合わせていないチキン野郎なのだが。

 それでも死ねる機会を切望してた。


「ん? なんだあれ?」


 交差点だ。見知らぬ少女がふらふらと赤信号を横断していた。

 しかもトラックが接近している。


 神の悪戯? いや悪魔の囁き?


 わからない。

 わからないが、俺は無我夢中で駆けだしていた。


 29年間の人生に終止符を打つかのように。

 せめて、人生の最後はクズを卒業したいと思ったのかもしれない。

 

「あ、あぶなっ!!!」


 少女を突き飛ばした。

 その瞬間、


 ――――ドガアアアァ、グッ、カハッァ。


 俺の身体はトラックに激突し宙を舞った。


 最後に「ドカッ」っとアスファルトに打ち付けられた。


 全身から生温かいものが流れ出す。


 意識が薄れゆく中、最後に見たもの……それは少女を抱きしめる母親の姿だった。




 俺は満足し、死を覚悟した。














 ――――なんだろう……人の話し声が聞こえてくる。


「損傷が激しいな……けど、細胞組織が無事なら治療できるわ!」

「し、しかし白鳥教授……まだ実験段階ですっ!」

「構わない! 今すぐEmilyを起動してっ!」


 誰の声? 知らない声だ。ダメだ眠い……


「那由他くん、ありがとう。君の勇気で娘は無事だよ。復活するまで悠久の時を経るかもしれないけど、君が元気になることを心から祈ってるわ」


 夢見心地で俺はふたたび、深い眠りにつくのであった。

只今、1話から順番に改稿してる途中です。頑張って改稿進めてますので、次話の投稿は気長に待って頂けると嬉しいです。ブクマ・評価等、頂けるととても励みになります。(評価する場所は最新話の中の下の方にあります)

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