最後の唄
合鍵ももらえずに
いつとも知れぬ日を待った
うんと愚かだった私は
液化して気化した私は
御守りを捨てて泣いた
花瓶につめた夢が散る
記憶など曖昧なもので
苦しみも幸せも
消せるだけ消して
これで終わりにしましょう
最後のあなたの眼を
死ぬまでには忘れるかしら
澄んでいて優しくて
せめて名前を呼んでくれたら
それだけで良かったのに
単なるお遊びのつもりが
稚拙な嫉妬を積み重ねては
疲れ果てて眠った
天まで届かず弾けて消える
透明な私はしゃぼん玉
何も残らなかった
憎いけれど愛していた
縫いつけた糸をほどいて
眠りから覚めた頃には
脳の奥であなたは消えるの
始まりも終わりも
ひずんだ心があったせい
二人はやがて一人になって
別々の夢を見ながら
ぼんやり春を思うでしょう
守られなかった約束
身を切るような思い出
無実のあの人を許せず
眼をあけたまま
もう私は死んだのね
やめたくてやめた事
夢を見たくて眠った事
呼んでも戻って来ない事
分かっているわ、全部。