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二度目の訪問

使用人のアドバイスに従って再び屋敷を訪れる袴田。

俺の初恋は中学1年のときで、相手は男だった。

そいつは小柄で、王子さまめいた外見の控えめな子だった。

それ以来、惚れるのは綺麗な顔の男ばかり。

女の子が嫌いなわけではない。会話するのは楽しいし、目の保養になる。

大学時代には女性の恋人がいたこともある。最後までいく気にはなれなかったのだけど。

その頃にはさすがに自分はホモなのだと判断した。それからは開き直っている。



「なんでお前がここにいるんだ」

「この前よりは暇だろ? 俺も今日は非番だし」


学生時代の友人・蓮見怜司と再会してから一週間が経過した。

穂積さんのアドバイス通り、怜司の時間に余裕がある時を見計らって屋敷を訪れた。

怜司の部屋らしい場所に通してもらったが、自室にしては生活感のない空間で、だだっ広いビジネスホテルを連想した。

テーブルの上にはパソコン。この家には一体何台のパソコンがあるんだ。


「空いた時間は有意義に使いたいんだよ俺は」


新聞を片手に、怜司が吐き捨てる。

俺がここに来てから怜司とは一度も目を合わせていないのだが、まあこのくらいの反応は想定内だ。

怜司がこちらを見ないのをいいことにして、向かいのソファーに腰掛けた怜司の姿を眺める。

しかめ顔で新聞を読んでいるだけだというのに、どういうわけか絵になっている。

学生の時から大人びた男ではあったが、以前より色っぽくなったように思う。なんというか雰囲気が。

少し長めの黒髪、白い肌(あんま外出ないんだろうな)、紙面を追う瞳。

艶と優美が額縁付きでこいつを飾っている。


前回会った時に目の下にあったクマはもうない。

ただ、11時になろうというのに、怜司は時折眠そうに目をこすっている。起きぬけなのだろうか。

そういえば学生時代にも、こいつは朝いつも眠そうな顔をしていた。低血圧なのかもしれない。


「よろしければどうぞ」


穂積さんがテーブルにコーヒーカップを2つ置く。俺の分と、怜司の分だ。

俺は礼を言って、砂糖とミルクを入れて混ぜた。


「こいつにまで出さなくていい」

「はいはいツンデレツンデレ」

「蹴られたいのか」


ブラックコーヒーを飲む手を止め、怜司がこちらを睨みつける。

美貌が冷たい毒をはらむ。美形が凄むと迫力がある。

結局、何度か軽口を交わした後に部屋を追い出されてしまった。

やっぱり「もっと外出ろよ」と言ったのがいけなかったのだろうか。ひきこもりめ。

来たばかりで家主に追い返された俺を気遣って、穂積さんが客間に通してくれた。


「いやー、わざわざすみません穂積さん」

「よろしければ穂積とお呼び下さい」


自分は使用人だから畏まる必要はないと言われた。

お言葉に甘えてフランクに話すことににする。


「じゃあ穂積…は俺のこと応援してくれてるんだよな?」

「はい」

「つまりその、ホモってことなんだけど…」

「その点でしたら、怜司さまは気になさいませんよ」


まじか。ホモ(もしくはバイ?)だったのか。いや俺も人のことは言えない。

ためしに、怜司の好みのタイプを聞いてみた。

知ったところで自分を変えられるかといったらまた別の問題だが、なんらかの参考にはなるだろう。

カードは多いに越したことはない。ただ、使いこなさなければ意味はない。これは親父に教えられた。


俺の質問に、穂積が頬に手を添えて考え込む。顎のラインで切りそろえられた茶髪が揺れた。


「そうですね…、知的な方がお好きなようですよ」


穂積の口から告げられたのは、明らかに俺とは縁遠いタイプだ。


「それは遠まわしに諦めろと…!?」

「好みは変わるものですから、わかりませんよ」


愕然とする俺に反して、穂積は微笑みを崩さない。

穂積は誤魔化すことなく答えてくれたのだから、むしろ感謝しなくてはいけない。

まあこれからだよな。このぐらいで怜司への恋心を諦めるわけにはいかない。



これは長期戦になりそうだ



諦めの悪い男、袴田。

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