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三毛猫とホットケーキ

作者: lavender

 ある日三毛猫が近所を散歩していたときのことです。


フワァーっと甘いニオイがしてきました。


三毛猫はそのニオイの方向へ歩いていくと人間のお母さんがホットケーキを焼いていました。鼻歌を歌いながらご機嫌です。


この甘いニオイはご機嫌になる不思議な魔法のように三毛猫は思いました。


こんな甘いニオイの中でお昼寝することができたらどんなに幸せだろう。


三毛猫は自分も作ってみたいなぁと思いました。自分にはちょっと無理かもしれないなぁと思いながらもホットケーキから目が離せません。


とにかく材料だけでも揃えていけば何とかなるかもしれないと三毛猫は思いました。


三毛猫は材料を探しに行きました。


 人里離れたところに小さな小さな小屋があります。そこは動物だけのマーケットがありました。

動物たちは自分のお気に入りの物を持ち寄って自分の欲しい物と交換するのです。


三毛猫は交換できる物を探しました。

自分が持っている物と言えば小さな鈴くらいしかありません。これは三毛猫が子猫の時につけていた物でした。鈴には赤色の小さなリボンがついています。今は三毛猫も少し大きくなって苦しくなってきました。


これと交換してもらおう。三毛猫は思いました。


こんな小さな鈴とホットケーキの材料と交換してもらおうなんて厚かましいかもしれないなぁと思いました。


三毛猫は小さな小さな小屋のドアを開けると

動物たちが集まってきました。


「きみは何を持っているの?」


三毛猫は小さな鈴を見せました。


鈴を見た動物たちはガッカリした顔をしました。


特に犬は息を荒くして怒りました。

「こんな物で交換しようなんて虫が良すぎる」


近くに居た雀も小さな声で言いました。


「興味ないなぁ」


三毛猫はガッカリして少し泣きそうになりましたがそれでも諦めずに動物たちに鈴を見せました。


そこに白黒のブチの猫が来ました。


「カッコイイ鈴だね・・」


三毛猫は嬉しくなってブチの猫に鈴を見せました。


「交換してくれるの?」


「いいよ。この缶と」


「これは何?」


「世界が終る缶だよ」


「えええっ・・そんな」


「欲しくないの?」


缶はきれいな装飾が施されていました。

ブチ猫は缶を振るとカラカラ音がしました。その音はとても心が軽やかになる音がしました。

三毛猫はとてもその缶が欲しくなりました。


「交換したいな」


三毛猫がそう言うとブチ猫は喜んで缶を渡しました。三毛猫も鈴をブチ猫に渡しました。


ブチ猫は三毛猫に注意深く言いました。


「開けたらダメだよ。絶対に。」


「どうして」


「今の世界が終っちゃうから!」


ブチ猫は小屋から出ていきました。


三毛猫は茫然としました。


何て自分はバカなんだろうと思いました。三毛猫はホットケーキの材料を探していたのに、ちょっとキレイな缶を見たばっかりに自分のたった一つの鈴と交換してしまい泣きました。


周りの動物はそんな三毛猫を哀れそうな顔をして見てはいましたが誰も声をかけてはくれませんでした。


 三毛猫は小屋から出ました。

ブチ猫からもらった缶を見ます。

キラキラした光るツブツブがついていてとてもキレイです。何か文字のようなものが書かれていますが三毛猫は読めません。缶を振るとカラカラとてもイイ音がします。


しょうがない。この次はこの缶と交換してもらおう。


もう一度缶を見ます。


キレイな缶だなぁ・・・。

この缶を大切にしよう。

それに、本当にイヤになったらこの缶を開けてしまえばいい。そうすれば・・・。


三毛猫は疲れてしまい、その缶の上で眠ってしまいました。


 次の日近所の男の子が三毛猫の缶を偶然見つけました。


三毛猫は眠っています。

男の子は三毛猫を起こさないようにそっと缶を取り出すと中を開けました。


缶の中に入っていたのはドロップでした。男の子は一つ取り出すと口に入れると缶を三毛猫のそばに戻しました。それから三毛猫を撫でました。

三毛猫は目を覚ましました。

男の子がやさしく三毛猫を撫でています。


その時男の子のお母さんが来ました。


男の子はお母さんを見上げ甘えたように言いました。


「ねぇ、猫飼おうよ。」


お母さんは三毛猫を見ましたが、三毛猫のそばにあった缶も見ました。


「あらこの缶、この間ブチの猫が持って行ったヤツじゃない」


お母さんは缶を手に取っています。

それから缶を開けようとしました。


三毛猫は世界が終ると目をつむりました。そしてその缶を開けると世界が終るということを三毛猫なりに言いました。


男の子もお母さんも不思議そうに見ました。

やっぱり通じない・・。

三毛猫はうずくまりました。

本当なら今回のいきさつを全部話したいところです。


お母さんは三毛猫を見ました。

男の子は三毛猫を嬉しそうに撫でています。


お母さんは何か独り言をつぶやいてそれから三毛猫を抱き上げました。


三毛猫は何があったんだろうと思いました。


 家に入ると三毛猫はダンボールに入れられました。不思議と落ち着きます。

男の子は嬉しそうに三毛猫を見ています。


時計が3回鳴りました。


男の子は何かお母さんに言っています。


しばらくすると甘いニオイがしてきました。このニオイ・・。


三毛猫は甘いニオイにまどろみながら眠くなってきました。それからブチ猫のことを思い出しました。


あの缶。

今の世界が終るって言っていたっけ。

たしかにそうだなぁ。

これからは甘いニオイの中でお昼寝することができるんだもの。

初短編です。

ほんわか読んでいただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界が終わる缶詰、ホットケーキ、動物の市場、独特の雰囲気が有って素敵だと思います。柔らかいような……そんな感じ?(曖昧ですいません) 場面をすぐに想像できるのも良い点だと思います。 ほっこ…
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