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作者: 大澤豊

さわやかな朝。

雲一つない、青い透き通るような空。

俺は空を見上げ、山の朝みたいだとぼんやり思う。

交通事故に遭ってからここで何度朝を迎えたことだろう。

いつもさわやかな朝。燃えるような夕日。

プラネタリウムみたいに星と月の眩しい夜。ここは天国なんだろうか。

毎日、ぼんやり空を見上げながら草原で散歩をしたり昼寝をして過ごす。

次第に自分の事、家族の事、忘れていった。そして今、もう何も思い出せなくなった。


俺に家族はいたんだろうか。


ある朝、目覚めたら泣いていた。

どうして泣いているのか分からなかった。悪い夢ではなかった気がする。

夢の内容はどんなに思い出そうとしても思い出せなかった。

ただ俺の頬を伝う涙だけが勝手に流れ続けた。


次の日の朝も泣いて起きた。

また夢が思い出せなかった。同じ夢だったような気がした。


さらに次の日の朝も泣いて起きた。

今度は少しだけ覚えていた。

目の前に女の人がいたような気がする。でもそれが誰だか分からなかった。


さらに次の日の朝も泣いて起きた。

起きた後も涙が止まらなくて何度も鼻を啜った。

また同じ女の人が出てきた。

女の人の事は思い出せないが、生きていた頃の俺にとってすごく大切な人だったんじゃないかと思う。


毎朝泣いて起きるようになった。

毎晩あの女の人の夢を見る。


俺はこの世界をひたすら歩いた。

どこかにこの世界の終わりがあるのかも知れない。そして、この世界から飛び出して、あの女の人に会いたいと思った。


毎日毎日ヘトヘトになるまで歩いて、毎朝泣きながら起きる。毎晩女の人の夢を見る。

俺は次第に疲れていった。


ある時、俺は倒れた。

そして意識を失った。


朝、気が付くと、見た事もないほどの眩しい世界が広がっていた。

俺はいつものように泣いて起きた。

でも、いつもの朝ではなかった。いつもの世界ではなかった。俺は赤ちゃんになって、またこの世界に生まれてきたのだ。


母親の顔を見て、全てを思い出した。


ずっと夢に出てきた、俺の娘だった。


いつか喋れるようになったら、全てを話せるだろうか。

眩しすぎるほどの朝日を浴びながら俺は泣き続けた。






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