討伐者たちの道行き―2
目的地・死の島へと上陸を果たした討伐隊ご一行だったが―――
「ち、ちょっとォ!?」
―――上陸した場所が悪かった。
「無計画でしたからねぇ」
―――と狩人。
「神官のオネーサン、無茶しやしたから」
―――と盗賊。
「盗賊、何度いえばわかるのアタシ男よ! なにげにアタシが悪いの?!」
「だってオネーサン、魔女の態度に呆れすぎて、見失ってたスよね」
「無計画だ」
「うっせぇ盗賊! アタシは男だっていってんだろ!! 剣闘士、ようやく発言したと思ったら何ヨそれ?!」
―――とまぁ、言葉だけを聞いていれば痴話喧嘩(?)のように聞こえるかもしれない。穏やかかつ平和な痴話喧嘩(?)だ。
しかし、実際は穏やかでも平和でもない。穏やかで平和なのは言葉の上だけだ。
「そこーお! わたしのおねにいさまにー、なぁにちょっかいだしてんのー!」
この発言は、お花でデコレーションしピンクで統一された箒に乗る魔女である。魔女は可愛らしく頬を膨らませながら、嫉妬発言をしたのだ。「誰がおねにいさまだ!」と吠える神官を無視し、魔女は左手を盗賊に向け、深呼吸。一拍おいて、魔女の左手のひらからピンク色の炎の球がいくつも放たれる――向かう先は、盗賊。
「アブねぇっすよー?! しかも詠唱ナッシング?!!」
盗賊は、寸前で炎の球を避けた。すれすれだった。避けるのがあと数秒遅かったら、彼はバッチリ炎の球の餌食になっていただろう。
「ちっ」
「舌打ちしたっスよね?!」
盗賊が避けた炎の球は、一度地面にバウンドして、今にも盗賊を襲おうとしていたハルピュイアに命中する。
ハルピュイアが雄叫びをあげながら絶命していくのを見て、盗賊は肝を冷やした。そして希望と感謝に満ちた視線を魔女に向けた。彼はありがとうといいかけて―――
「ちっ」
魔女の舌打ちを耳にした。
「酷いっスよ!!」
彼らが上陸した場所は、確かに目当てのダンジョンへは目と鼻の先だった。しかし、創造以上に魔物に溢れていた。
「青春ですねぇ。青春はいいですねぇ」
狩人は、四人から少し離れたところでウンウンと一人頷いていた。狩人から見れば(魔女を除けば)息子の年齢の彼らである。だから、彼らが戯れると青春のワンシーンのように思えてならない。
「おっと」
狩人は、ゆったりとした動作で懐から果物ナイフを取りだし、振り返りもせずに後ろへ放り投げた。
「人の楽しみを」
―――グサッ
「邪魔するなんて―――次」
―――グサッ
「無粋―――次」
―――グサッ
「ですねぇ――トドメ、おまけの三本」
―――ブスッ、ブスドスグサッ
「弱いですねぇ。実に弱い」
手をはたきながら振り返った狩人の前には、下半身が蛇体、上半身が手足が六本あるヒヒ、頭部が何かのガイコツといった魔物が一体倒れていた。その魔物の縦の大きさはたいしてないが、横幅がありえないくらいに広かった。
「未確認の魔物ですか」
フム、と顎に手を当てて狩人は考え込む。
「しかし」
そして、彼の視線は横へと滑る。
「弱いですねぇ」
―――彼の横には、目の前で倒れる魔物が四体いた。
「君たち、楽しませてくれますかね?」
狩人は笑った。余裕に満ちた、捕食者の笑みだった。
―――若者四人、玄人一人にわかれて退治し始めること一時間。
「わたしとおねにいさまのじゃましないでえーー!!!」
「だれがてめえのおねにいさまだー!!」
―――ついに、魔女がキレた。
突如叫び始めた魔女は、無詠唱で魔法を乱発し始めたのである。あまりにも突発的な行動であり、神官が咄嗟に神聖防護結界を――こちらも無詠唱で――発生させていなかったら、盗賊あたりがかなりヤバかった。
「ひぃっ?!」
今も神聖防護結界に守られているとはいえ、盗賊は魔女の八つ当たりの標的になっていた。悲鳴とは裏腹にどことなく幸せそうではあるが。
「魔物のあほばかー! おまえのかーちゃんで○そー! あんたのピーなんかピーになって○○になっちまえー!」
魔女の心からの叫びに、
((なんて低俗で卑猥な……))
仲間(盗賊以外)である狩人たちは口に出さずにそう思った。
―――結局、魔女が放送禁止用語(一部除く)を連発し、辺り一面に魔法を八つ当たりした。
当然、火属性やら水属性やら様々な属性の高位魔法をぶちこまれたため、辺りは焼け野はらになってしまった。所々ヘドロまで発生し、異臭を放っている始末である。
「……………」
「……………」
「……………」
この時、狩人を除く若者三人衆は「魔女を怒らせまい」と堅く誓いあったとか、なかったとか。
―――ともあれ、ダンジョン周辺の魔物を散らした討伐隊ご一行。ダンジョン前を後にし、意気揚々と(魔女だけ)内部へと侵入を再開したのであった。




