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千里眼とニンゲン―2

法事と仕事で一ヶ月あいてしまいました、申し訳ありません。


 ニンゲンの間では、魔物で溢れかえる場所がいくつも存在する。そういった場所はだいたい魔所といい、忌み嫌われ、敬遠される。ニンゲンからすれば死の島がそれにあたる。

 また、ニンゲンの間では魔所と正反対のものもある。神、伝説上の存在エルフといった「日常の枠外」に位置する「非日常な存在」のゆかりある場所、例えば聖地だとかである。そういった場所は「いつかはいってみたい」とニンゲンは思い、敬遠などはされない。

 聖地と同じように、エルフや神といった存在じたいも、そうだ。「会えないとはわかっていても会えたら会いたい」、そんな存在。

 そんな魔所で、伝説上の伝聞や文面だかで伝えられてきたエルフの特徴を備えた存在に遭遇し、さらに魔所をさして「ここは自分の土地」とエルフがいう。

 ――そんな、通常ならば誰にも想定できるはずもない事象に遭遇したニンゲンの反応といえば。


「まさか、こうして生きている間にお会いできるとは……あなたはエルフ、でしょう」


 職業柄、そして見た目に反し、戦いと見れば何のためらいもなく自ら身を投じていくタイプの狩人は、ニンゲンが避ける魔所に何度も足を運んでいる。狩人は戦いさえできれば、場所じたい全く意に介さない根っからの戦狂いだった。

 魔所に通うだけあって、狩人の胆力と豪胆さは、ニンゲンの基準からかなりかけ離れてもはやそれは圏外といっても過言ではないだろう。

 そんな狩人であっても、エルフの登場は目を見張るものがあったようである。たった一瞬とはいえ、狩人は確かに驚愕した。

 対し剣闘士は、どうにか立っているだけ、といった有り様だ。

 エウアーラ・ユリディークの放つ気迫は半端がない。おそらくは無意識で垂れ流しの状態のこの気迫、ニンゲンたちがダンジョン内で戦ってきた魔物やダンジョンの主、そして先ほど刃を交えたピネットでさえ敵わないレベルである。

 剣闘士は、自然と足を後退させていた。それでも目はエウアーラ・ユリディークから離さない。このあたり、剣闘士も成長しているのである。


「おお、その反応は“見た通り”だねぇ。つまらない、実につまらないよ、ニンゲンたち!」


 エウアーラ・ユリディークは、先ほどまでころころと笑っていた表情を消し、むっすりと顔をしかめた。ちなみに狩人の言葉はまるまる無視である。

 けれども、狩人はエルフ断定発言をさらりと流されても何も思わないようであるし、そもそもエウアーラ・ユリディークはニンゲンの反応はいちいち“予想の範疇内”、千里眼で見た通り“すでに知っている反応”だからこそ、かなり退屈のようだ。


「是非ともニンゲンには我を楽しませてほしいんだけどねぇ……」


 大袈裟に溜め息をつきながらも、エウアーラ・ユリディークは胸の前で左手をさっと振った。するといつの間にやら振り抜かれた左手には、一本の指揮棒が握られているではないか。

 エウアーラ・ユリディークの左手に光るのは、十五センチから二十センチくらいの金色の指揮棒だ。何度見ても、どこからどう見ても指揮棒である。

 エウアーラ・ユリディークの左手の変化に、狩人と剣闘士は何かを感じ取ったようで、いつでも戦いに臨めるように構えをとった。狩人が経験や場馴れから、

 剣闘士が直感で感じ取ったのは、戦いの開始の合図であった。


「さあ、起きているニンゲン二名と寝てるニンゲン一名で、我をどこまで楽しませてくれるかなぁ?」


 エウアーラ・ユリディークが左手をくいっと捻る。そのエウアーラ・ユリディークの表情は歓喜に溢れていた。



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