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地上組、新たな戦いー3


 ――ピネットは例外を除き、負け知らずだった。

 例外は主と脳筋牛男(※ゲオルダンデウス)。ピネットは主と脳筋牛男以外に負けたことがないのだ。

 ゆえに、負けるという焦りや恐怖というものを感じたことがない。

 ピネットは強い。ピネットはいつもいつも余裕で、物足りなかった。たまに物足りそうな相手がいても、もって数分だった。手応えが無かった。ピネットがこれだ! と感じる手応え歯応えのある相手に会ったことがなかったのだ。

 ゆえに、例外を除き、ピネットは数分以上は戦ったことがない。例外はむろん主と脳筋牛男である。

 ピネットはいつも短時間で戦いを終えてきた。今までピネットの強さについてこれるものなどいなかったから、当たり前だった。皆、ピネットより弱かったから。

 ゆえに、ピネット自身気付いていなかった。

 ――意外に彼女自身短気で、かつ集中力が持続しない気質ということに。意外に彼女の体力が続かないこということに。

 つまり、長期戦の経験の圧倒的な少なさ――何しろ彼女が長時間戦った相手は主と脳筋牛男だけ――と、そのことゆえに、力の加減と配分がわからなかったのだ。

 ……結果。

 ピネットは己の弱点を知らなかった。己の弱さを知ってこそ、強さというものは成長する。しかしピネットは群を抜いて強く、負けた経験は二回しかなかった。己の弱点を知る機会が無かったうえに、相手が弱すぎて――力任せにぐいぐい戦うために、弱点をつくという戦略も知らなかった。

 己の弱点を知らぬなど、とてつもない致命的大問題であった。そして己の弱点を知らぬ強者など、本当の意味で強者ではなく弱者であった。


「息があがってるって、意味ないと思うんだけどねぇ」


 ――己の部下の戦いを見ているエウアーラ・ユリディークは驚いていた。

 部下のピネットは強い。ピネットは伊達に規格外ランクではない。モンスター族と魔物は上から、規格外、X、SS、Sのランク(魔物・モンスター共通)というランクでわけられる。

 S以下はA、B、C……と続き、だいたい一般的な強さはBあたりだ。その上のAはほどほど強い、Sはめっぽう強い、S以上は雲の上。そして規格外とくれば、だいたいどれくらい強いかわかるだろう。

 また、規格外の強さのモンスター族は数えるほどしかいない。規格外の魔物はもっといない。


「何なんだろうね、このニンゲン。ぞくぞくするねぇ、わくわくするねぇ」


 そんな規格外の強さを相手取り、防ぎながら攻めるニンゲン。

 彼らが戦いはじめて数分たったいまだって、あのニンゲンは全く疲れていない。ピネットと戦って数分もっていることだけでも凄いのに、まだまだ余裕のよっちゃんである。

 対し、ピネットはといえば――動きにキレがなくなってきたではないか。しかも息があがってるきている。つまり、余裕がなくなってきた。

 ピネットの錐状の指の豪雨のような刺突攻撃も避け、頭部の針が嵐のように飛来する攻撃も避け、刃の鱗が真空刃を伴って襲い来るのも避け――その回避行動ひとつひとつが余裕綽々としており、さらに合間合間に反撃も行って、さらに挑発までやってのける。

 そんな規格外の中の規格外、予想外で実力が計り知れないニンゲンを見て、エウアーラ・ユリディークはうずうずしてきた。我慢できない昂りが一気に噴出した。

 ――面白い。面白い。面白い。

 エウアーラ・ユリディークは九割の未来を予知し、それは九割的中する。よって、だいたいのことはわかってしまうから、つまらなかったから、予想外や範疇外といったものを強く好む傾向にある。


「混ざりたいねぇ……!」


 興奮するエウアーラ・ユリディークの前で、ついにピネットがニンゲンの攻撃を受けた。


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