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娘、絶句する




「………………………」


「何してますのかしら、あのバカ」


 ダンジョン最奥部、マスターの部屋。ここには、ダンジョンの命の要ともいえる姿見――こちらへ引っ越したときに、鏡から姿見へ変えてみた――、スキルの中心部があった。

 ミノタウロスとしての眼力は喪失せども、アステリアはまだ他のスキルを失ってはいない。

 ラビリントがあるからこそ、まだまだアステリアはミノタウロスであった。もう、頭の形は違うけれども。

 だからこそ、こうして“干渉”してきた侵入者たちを記録映像として残す、ラビリントの派生スキル“メモレント”もまだ生きているわけで。


「………父さん」


 ラビリントのマスターより上級レベル(身内に限る)のモンスターによる干渉。干渉は、迷宮ダンジョンの構造に直接触れて変化させる(父・ゲオルダンデウスが、ダンジョンの壁に穴を開けて入ってきたこと)侵入パターン、そして今回みたいに―――


「何、ひとの住まい破壊してるのよ……」


 ダンジョンに直接触れずに破壊、という侵入パターンがある。

 要するに、ダンジョンが地下にある場合―――その上にある、ダンジョンではない部分の地面やら森やらを破壊し、その延長の勢いでダンジョンを破壊するという手法だ。

 前者の破壊方法の場合、ダンジョンの構造に直接干渉するので、ダンジョンマスターがすぐ気付く。

 しかし、後者はそうではない。ダンジョンの構造との間にワンクッション置いて破壊するので――今回は地面――マスターに気付かれにくい。

 だからこそ、この迷宮ダンジョンのマスターであるアステリアは気付かなかった。まさか、空に蹴り飛ばした父が、この迷宮ダンジョンを落下点にして落下するとは思いもよらなかったから。


「あたし、海上に落ちるように調整して蹴り上げたんだけど。何で、落下点がここなの?」


 アステリアは、姿見に手をのばした。何度か鏡面を撫で、最後に魔力を一気に流し込む。これで、破壊された天井は修復されたはずだ。ダンジョンではない地面までは完全に修復できないけれど、剥き出しになったダンジョンの天井を地面に擬態させ、周囲の地面に溶け込ませた。これで、ぱっと見たところダンジョンだとは気付かないだろう。……アステリアよりランクが上のモンスターなら見破るかもしれないが。


「どうしますの、アステリア?」


 母・リンダリンダがアステリアに話しかけた。彼女がどうしますの、といった対象はもちろん、あれだ。


「父さんと、父さんが巻き込んだドラゴンと、さらに巻き添えを食った討伐隊のメンバーよね」


 アステリアたちの前にある姿見には、父・ゲオルダンデウスが派手に粉塵や砂煙を撒き散らしながら、ドラゴンと討伐隊のメンバーである魔女を巻き込み、最下層まで落下していく様子が映し出されていた。


「アステリア、あなたならすぐあそこまで行けますわよね」


 母・リンダリンダが床を指差す。彼女が示すのは、床ではなく、ダンジョンの最下層。死の島の底部と隣り合わせの場所。


「うん、大丈夫……でも」


 アステリアは、母の言わんとすることがわかりがたかった。


「何するの? 父さんなら放置しても平気でしょう。父さんならあのドラゴンに負けないし、今なら手負いだし……それより、そこにいる規格外な討伐隊をどうにかしたいんだけど」


 アステリアは、扉の向こうにいる狩人が怖かった。だからこそ、ここを離れたくはなかった。ここには、要がある。スキルの要たる姿見が。これを破壊されてしまえば、二度とアステリアはスキルを使用できない。


「何も、あなたにあちらへいけとはいってませんのよ」


 母は、娘を安心させるために微笑んだ。


「ちょっと、あの馬鹿にお仕置きをと考えていますの。あの魔女にも……確かめたいことがありますのよ」


 リンダリンダは微笑みながらいった。しかし、父の話になった途端に、それは黒い微笑みにとってかわった。


「魔女?」


 魔女といえば、巻き込まれた、あの見た目が……かなり少女趣味がすぎた幼い外見の魔女のことだろう。


「ニンゲンなら、無事じゃないでしょ」


 モンスター族は、ニンゲンに対し思い入れがない。だから、理不尽な発言もする。アステリアは、暗に命が無事でないといいたいのだ。

 ニンゲンがモンスター族をどうでもいいと思っているように、モンスター族もニンゲンをどうでもいいと思っている。まぁ、一部のモンスター(あのインキュバスのように)を除くけれども。

 何で、ニンゲンである魔女を気にするのか。気にかけるのかが、アステリアにはわからない。だから、アステリアは母に聞く。

 そして母は、娘が驚く事実を口にする。


「たぶん、あの魔女は先代の魔女王ですわよ。幼い姿で気付きませんでしたわ、全く。落ちている間に、偽っていた魔法がほどけたようですのよ―――あの姿は間違いありませんわ」


 先代の魔女王。それが意味するのは―――


「まさか、……」

「まさか、ですわね」


 母は、娘の導きだした答えを肯定した。


「あなたの曾祖母ですわね」


 アステリアの曾祖母、リンダリンダの祖母はニンゲンだった。甚大な魔力により、不老になった魔女。いつしか魔女王と呼ばれ、時を経るにつれてニンゲンの味方をしたから、曾祖父と別れたという。

 風の噂で、百年前くらいに、まだ幼い義理の孫に魔女王の位を譲ったとか。


「嘘ぉ……」


 アステリアは、自分の運のなさに悲しくなった。

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