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さぁ、もうすぐ―1





 姿見の前にて頭を抱えて唸るアステリアは、どっかんという大きな音と同時に周囲を襲った地揺れで我にかえった。


「な、ダイレクトに干渉された!」


 アステリアのダンジョンが誰かに直に干渉されたのだ。アステリアは干渉されたポイント――寝台付近の壁を見た。戸惑うアステリアに、


『あ、来ちゃったかなー……?』


 と明後日の方角を見ながら叔母は頬をかいた。

 それを見たアステリアはピンと来たらしく、姿見をガタガタと揺らした。本当は叔母の肩をつかんで揺さぶりたかったが無理なので代わりである。


「あんたかー! あんたが呼んだからー?!」

『落ち着いて、落ち着こうよ、ね? アスティ! キャラ崩壊してるよー?! 揺らさないでー! 画面揺れて気持ち悪いー! 吐くー!』

「誰が落ち着けますか?! 無理よー!」


 某剣闘士とキャラが被る手前の叔母と、キャラ崩壊が発生した姪の騒ぎは――


 ドゴォオオオ!!!



「え、壁が破壊されたぁあ?!」


 アステリアが感知していたポイントに――つまるところ壁に大穴が開き、土埃がもうもうと立ち込め、二匹のモンスターの影が現れた。


「いや?! あたしの部屋がー!!」


 ラビリントで、いち早く周囲を舞う土埃をダンジョン内部から“排除”したアステリア。排除された土埃は一瞬にして消え去った。排除は、ダンジョンマスターが“いらない”と思った“異物”をダンジョン内部から速やかに排除できる。しかし非生物に限るので、討伐隊やらは無理ではあるが。



「黙りなさい。黙らなければ数秒のうちにここを爆破しますわよ。はい、5・4・3・2――」

「『カウントはやいわ!!』」


 アステリアの母、リンダリンダの過激(?)発言に叔母と姪は素早く突っ込んだ。


「母さん、これは………何?」


 ゆらゆらと怒気を立ち上らせ始めた娘に、母は後方を指差して一言。


「あれ」

「あれね……」


 叔母のターリアは、姪のこれからするであろうことに思わず視線を逸らした。


「と・う・さ・ん!?」


 父が何かいいかけたのを待たずに、娘の怒気その他諸々が込められた鋭い蹴りが、父に放たれた。


「ごめんよぉおおアスティ〜〜!!」




――この日、死の島の上空で一匹のミノタウロスが星になった。







「何か聞こえませんでしたか?」

「さぁ」


 気を失う盗賊(早々に戦線離脱)を休ませた狩人が剣闘士に問う。しかし彼にもわからないので、彼は首を振って否と答えた。

 今彼らはかなり奥まで来ていた、というのもだいぶ地かに潜ってますねと狩人が判断したからだ(もちろんカンで)。しかしまだ最奥部ではないし、そもそも彼らより下に落ちたはずの魔女たちと遭遇すらしない。やはり迷宮、内部は複雑極まりなかった。


「もう少ししたら行きましょう」

「それは」

「どれ、気付けの作用する方法で起こしますか」


 役立たなさすぎる盗賊はもはや“それ”扱いだった。逃げて逃げて逃げるだけ、気配を隠して後ろから寝首をかこうにも、すぐにモンスターにやられて「いいっ」とか意味不明な発言と共にダウン。

 剣闘士はかなり真面目に置いていこうかとどうしようか悩んだ。盗賊が聞いていたら「言葉攻め!」と別世界の新境地に旅立っていただろう。盗賊はここに至るまで、えのつく別世界の扉をいくつも開けたのだ。そう、えの前にドがつくくらいに。


「まぁ、まだ最奥部ではありませんが、近づいてきていることには確かです」


 にこにこと、狩人は盗賊の上体を起こし、膝立ちになって彼と向き合い、


「一発」


 平手を一発見舞った。言葉通り一発だった。しかしスパァアオンと変に甲高い痛そうな音だった。側で聞いていた剣闘士が思わず頬に手を当ててしまうくらいには。


「かはっ………」


 どこか幸せそうな顔でむせながら盗賊は覚醒した。狩人は少し嫌そうに視線を逸らした。なんだか盗賊のへん○いっぷりが直視できなくなってきたのは気のせいだろうか。





 狩人、剣闘士、えのつく世界に目覚めた盗賊。

 二人の常識人と一人のえのつく変人は刻々と最奥部に近付いていた。




 怒気を放つミノタウロス(メス)と、姿見越しの(一応)この島の(雇われ)主と毒舌妖精たちと先に出会うのは、果たしてどちらか。


「どっちかな〜」


 それを知るのはおそらく雇われ主の雇用主である。ちなみにアステリアの変身を知るのも雇用主のみである。

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