表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の宰相  作者: 奥田裕樹
20/32

新政権誕生②

 夕刻になり韓侂冑かんたくちゅうは屋敷に姿を現した。今日はかたわららに用心棒らしき大男まで付き従えてきていた。その証拠に腰に大きな剣を佩いていた。


「おっほん。趙汝愚ちょうじょぐ、あなたには失望した」


「おっほん」と言う奴が本当にいるとは思わなかった。数日前よりうっとうしさの度合いが格段上がっており、趙汝愚はすでに追い返したくなっていた。


 ところが当の韓侂冑は自分の世界に入っていた。


「私はこの国のためを思い身を削り、骨を折り、血を流し……おっと、血を流すは言い過ぎでしたね」


 全部だよと言いたかったが、とりあえず黙っておくことにした。


「趙汝愚殿、あなたは私に位を与えることを約束していましたよね」


「考えておくと言っただけだ」


「しかし、約束は約束です。それを反故ほごにすることはできないでしょう。もしそれを反故にしたということが外部に知れたら、あなたの評判はどうなりますか?おい、そこの使用人。新しい茶を持って来い」


 韓侂冑は趙汝愚の側に立っている李明りめいに命じた。


「俺は使用人ではありませんよ。この人の相談役ですよ」


「黙れ。身なりが薄汚いから使用人にしか見えん。くだらないことを言ってないで持って来い。私は気が短いのだ」


「俺じゃなくて、お宅のデカ仏にでも持ってこさせればよいでしょう。労働にはぴったりの体格じゃないですか」


「なんだと?貴様の屋敷の仕事を私の使用人の周筠しゅういんにやらせるつもりか?もうよい。周筠、斬ってよいぞ」


 周筠という男は、にやりと笑うと腰にいている剣に手をかけて李明に近寄った。


 趙汝愚の額から多量の汗が流れ出た。これはまずい状況になった。言いくるめて返そうと思っていたのだが、李明が余計なことを言うものだから、けんかにまで発展してしまった。


 ここはなんでもいいから、位を渡しておいた方がよいかもしれなかった。


「待て、韓侂冑。今のはこの李明に非がある。この男の非は私の非だ。だから私から謝る。すまない」


 趙汝愚はその場でいさぎよく頭を下げたが、この金持ちのお坊ちゃんがこの程度で許すとは思えないので、第二手を出すことにした。


「お詫びといってはなんだが、先ほどの位の件。重々承知した。そなたにぴったりの位を授けよう。しばしの間、待ってくれ」


 果たしてどうだろうかと思い、ちらりと顔色をうかがうとやはりだった。


 韓侂冑はさっきと打って変わってほくほく顔だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ