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承認欲求学園  作者: む
2/2

我らが汝を評価する尺度は、汝を映す鏡と規則が異なる

朝の教室。


ざわめきはいつも通りだが、どこか空気が張り詰めている。


黒板の横、電子掲示板に数字が並ぶ。


── 月間承認ポイントランキング


1位 諏訪之 愛凛

2位 馬体 力

3位 東雲 蓮

……


そして、


17位 肥後 全


坂田「おい肥後、見たか?今年も愛凛ぶっちぎりだぞ」


佐藤「東雲も地味にすげえよな。勉強と読書会の貢献ポイントだろ?」


肥後は無言で席に座る。


(我らが汝を評価する尺度は、汝を映す鏡と尺度が異なる)


学園では、行動が数値化される。


発言、成績、部活、ボランティア、SNSでの反響。


すべてが“承認ポイント”になる。


だがそれは、


「他者から見た自分」だ。


諏訪之「全くん、17位おめでと」


肥後「微妙だな」


諏訪之「上がってるよ?」


肥後「それが問題なんだよ」


諏訪之「え?」


肥後「俺は何も変えてない」


東雲が静かに言う。


東雲「変わらなくても、周囲の見方が変われば評価は変わります」


肥後「つまり俺は、誰かの鏡に映っただけか」


東雲「ええ。本当の自分と、映る自分は違います」


諏訪之は少し眉をひそめる。


諏訪之「でも評価されるのは、いいことじゃない?」


肥後「評価は、安心材料だ」


東雲「でも依存にもなります」


一瞬、空気が凍る。


坂田「なあ愛凛、今度の公開討論出るんだろ?」


教室がざわつく。


公開討論。


それは全校生徒の前でテーマを語り、

拍手と投票でポイントが決まるイベント。


諏訪之「うん、出るよ」


坂田「さすが1位!」


視線が集中する。


愛凛は笑う。


完璧な笑顔。


だが、


肥後は気づく。


(あの笑顔は、鏡の前で作られたものだ)


放課後、図書館。


東雲「肥後くんは、出ないんですか?」


肥後「公開討論か?」


東雲「はい」


肥後「出れば順位は上がるだろうな」


東雲「それでも出ない?」


肥後「俺が語る言葉が、拍手で価値を決められるのは嫌いだ」


東雲は本を閉じる。


東雲「では、私が出たら?」


肥後「……意外だな」


東雲「怖いです。でも」


少し間を置く。


東雲「鏡ばかり見ていると、自分の顔を忘れてしまいそうなので」


肥後は小さく笑う。


肥後「想定外だな」


東雲「それが、あなたの望みでしょう?」


窓の外。


校庭では、愛凛が囲まれている。


拍手と歓声。


肥後はその光景を見つめる。


(我らが汝を評価する尺度は、汝を映す鏡と尺度が異なる)


(だがもし)


(鏡を壊したら、何が残る?)


翌日。


掲示板に新しい文字が表示される。


── 公開討論参加者一覧


諏訪之 愛凛

東雲 蓮

……


そして、


肥後 全


教室がざわめく。


坂田「おい肥後!?出るのかよ!」


諏訪之は目を見開く。


東雲は静かに微笑む。


肥後(全部、想定内じゃつまらない)


肥後(なら、鏡の前に立ってやる)


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