ニット帽、反乱
「よし。角、完全封印」
「封印とは言うな。王の威厳が窮屈になる」
「威厳よりバレ防止」
ニット帽を深くかぶせる。
角は押さえ込まれている……はず。
外に出た瞬間。
ビュオッ。
「ぬっ」
帽子が浮く。
「ちょ、帽子!」
「帽子が逃げた」
「風!!」
押さえる。
角がぐいっと押し返す。
「角が反発してくるんだけど!?」
「角は誇りだ」
「誇りじゃなくて物理!!」
遠くから子どもの声。
「ねーあの人、角みたいなのあるー!」
「ないです!!」
マフラーを頭まで巻く。
「主よ、我の顔が消える」
「今だけ消えて!」
完全に不審者。
「怪しさが増した!」
「怪しさとは強さの別名だ」
「違う!!」
人の少ない道へ退避。
その時。
散歩中の犬が、魔王をガン見。
「……」
「ぬっ、背後!」
羽がバサッ。
「羽しまって!!!」
「礼儀である」
「犬に礼儀で羽出すな!!」
背中を押し込む。
「収納!収納!」
「主、くすぐったい」
「今言うな!」
犬が去る。
「……心臓に悪い」
「危なかったか」
「アウト寸前!」
魔王が真面目な顔。
「ならば策を変えよう。我が堂々と怪しい者として歩く」
「最悪の策!!」
帰宅。
帽子を取った瞬間、角がぴょこんと伸びる。
「角、伸びするな」
「角も疲れるのだ」
「角に感情持たせるな」
ため息。
でも少し笑う。
「……まあ、散歩はできた。今日は勝ち」
「勝利である」
魔王が翼を動かしかける。
「勝利の羽ばたき禁止!」
「……承知」
一拍。
「主よ。次は“つうわ”なる術を――」
「やめて!!絶対やめて!!」




