隣人、来訪
ピンポーン。
「……こんな時間に誰」
「敵襲か」
「敵襲じゃない!」
もう一度。
ピンポーン。
「静かに。絶対声出さないで」
「承知。王は影で笑う」
「笑うな!」
チェーン越しにドアを開ける。
「はい……?」
「隣の者です。さっきから大きい音がして……あと、羽みたいな影が……」
背筋が凍る。
「か、カーテンです!大丈夫です!」
ドアを閉めて振り返る。
ソファの上。
魔王の羽が、しっかりはみ出ている。
「……羽、出てる」
「出ておらぬ」
「窓に影出るサイズ!!」
畳もうとして――
バサッ。
余計広がる。
「だから!!」
「畳むのは難しい」
「難しいじゃない隠して!」
クローゼットを開ける。
「ここ入って!」
「王を衣装棚に……」
「早く!!」
羽が引っかかる。
「狭い」
「羽!!」
「反抗期である」
「今なるな!!」
ピンポーン。
「“征服”って聞こえて……」
終わった。
「テレビの映画です!ファンタジーで魔王が!」
「……魔王?」
「ゲームです!!」
沈黙。
「……分かりました」
足音が遠ざかる。
「帰った……?」
クローゼットの中から声。
「見事な交渉であった」
「寿命縮んだだけ!」
扉を開ける。
羽は畳めたが、角がぴょこ。
「角!」
「健康である」
「健康アピールいらない!」
少し静かになる。
魔王がぽつり。
「主の世界を乱す気はない」
「……急に真面目」
「王はやる時はやる」
その瞬間。
ピコン(スマホ通知)
「ぬっ」
羽ビクッ。
「だから!!羽しまって!!!」
「……努力しておる」
「成果ゼロ!!」
思わず笑ってしまう。
「明日は静かな家電にしよ」
「音に慣れる修行か」
「日常って言え」
魔王はうなずく。
「日常……修行」
ピンポーン(また鳴る気配)
「敵襲か!」
「羽しまって!!!」




