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帰れる扉と、帰らない選択
「……帰れるの?」
「分からぬ。だが…近い」
「…帰りたい?」
「我は魔王だ。帰れば城がある」
「…うん」
「だが」
「だが?」
「ここには、主がいる」
(沈黙)
「…いなくなるって考えたら、ちょっと嫌だった」
「主は優しいな」
「優しくない。生活が脅かされるだけ」
「嘘だ。声が震えている」
(裂け目が光る)
「来る」
「どうするの」
「扉が開けば、我は帰るべきだろう」
「…魔王だもんね」
「だが」
「征服より、生活を知った」
「生活…」
「朝のゴミ出し、夜の供物、雨の日の黒き湖」
「コーヒーのことね」
「うむ。あれは良い」
(少し笑う)
「だから選ぶ」
「…選ぶ?」
「今、扉が開いても――我は帰らぬ」
「ほんとに?」
「主のためだ」
「……」
「そして、我のためでもある」
「ずるい」
「ずるいのは王道だ」
「今言うな!!」




