出勤したくなくば、寝るな
夢。かつては素晴らしいものだったらしい。
だが現代に住む俺は絶対に夢を見たくない。なぜなら寝たら「出勤」になる世界だからだ。
過去、夢を見ればどんなものも見ることができた。
あらゆる場所に行けた。それは素晴らしい話だった。
だけど、今は違う。
夢とはふざけたものだし、俺にとっては最低最悪のものだった。
俺は起きる。寝てしまえば出勤しないといけない。
「絶対に寝ないぞ」
ここまで強い決意なのは、昨日、職場で彼女を怒らせたからだ。
俺が他の男と仲良くする彼女に嫉妬して、イライラをぶつけたから、だから怒らせてしまった。
こんな状態で出勤できない! 絶対に怒られるし! どう謝ればいいかわからないじゃないか!
だから俺は眠らないのだ。
寝なければ出勤しなくていい。
だから俺は起き続けていたのだ。
「ああ、眠い」
そんなことを呟く。
思いとは裏腹に、とても眠かった。
チョコ、唐辛子入りスナック、エナジードリンク。その他もろもろが転がっている部屋。
俺は寝たくなさ過ぎてそんなものを食べ、飲んでいた。
限界も感じていた。もう二日も寝てない。
その時。スマホが震える。
「ん?」
スマホを反射的に手に取る。
『いつ出勤するの? 待ってるよ』
俺はそれを見て、即座に寝た。
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