7話 ケカン〜首都へ
地球の環境と似た星だが違った文明を持つ世界の物語
俺はキャバルトの街を出てケカンの街へ向かっているケカンの先には首都トシントンがありキャバルトと同じように温暖で首都の隣りの街と言う事で栄えている、キャバルト、ケカン、トシントン、アレリア大陸の南に位置する3つの街のエリアが都心部とされている
俺の目指しているケカンは南の大陸への船も出航している、幾つかの小島を経由して5日の距離だが小島の間を小舟に乗って密航して来る者もいる、全て犯罪者で南のフギア大陸に居場所が無くなった連中だ
南方のキャバルト、ケカンに盗賊が多いのは密入国者が多いのも関係しているのだろう、ハンターの護衛を付けていない俺の馬車、男の俺と霊体だが普通の女性にしか見えないメデゥーサ、襲うのに良い標的になるようだ
目の前に今日2組目の盗賊が姿を見せた
「今度は俺が行こうか?」
俺がメデゥーサに尋ねると
「いえ、コレは私の仕事主人様はお待ちください」
メデゥーサは平然とした様子で盗賊の前に立つ「ファサル」と石化魔法をかけ石の盗賊をトンファーで砕く単純作業を行うだけで盗賊が片付く、メデゥーサに殺される盗賊は痛みや恐怖を感じる事なくあの世に行けて他の盗賊より幸せなのかもしれない
馬車を走らせ2日でケカンの街に着いた、盗賊には襲われたが疲れる事なく順調な道中だった
到着した翌朝ハンターギルドへ行く、此処では今まで訪問したギルドとは違った依頼がある、オープンリクエストと言われる随時行われている依頼だ、この街の沖には南の大陸まで連なる小島がある、そのせいで密入国者が多い密入国者の捕縛がオープンリクエストだ(報酬は減額されるが死亡させてもリクエスト達成となる)
俺達の左手には機械が埋め込まれている、個人データ以外に財布や口座の役目もする、お金の流れは全て管理され密入国者の財布の機能には制限がかけられる、居場所がないからと逃げて来ても生きて行く事は困難と思われるがそれでも密入国者が居なくなる事は無い
密入国者はほぼ犯罪者どこの国も入国して欲しくない人物だ、運良く出会えば捕縛していつでも差し出して比較的高額な報酬を得る事が出来る、長くこの街に住んで土地勘のある者がこのリクエストを達成するだろう、俺も念のため密入国者データはもらっておく
この街でも大きな稼ぎは出来なさそうだ、俺1人の食費は行政からの3万ギルで足りる、スピリットウォリアーズは俺の魔力が食事代わりでお金はかからない、南の大陸へ行くにしても移動許可証が必要だが許可証は首都で発行してもらわなければならない、距離も近い首都へ向かう事にする
ケカンから首都トシントンへは街が繋がっている建物の間をゆっくりと馬車を走らせる、トシントンにはすぐに到着した街の中央に大きな建物があり此処だけが数百年から数千年文明が進んだように他とは違う雰囲気がする
この大きな建物がアレリア大陸中央総合行政事務局で全ての行政機関の頂点、建物の中に入るが機械化され閑散としている案内板を見ると歴史博物館もある許可証を発行してもらう待ち時間に博物館を見て回る、今のDの時代は前のCの時代の歴史を参考にして発展させて来ている、Cの時代は複雑な行政システムで税金、年金、法律全てに多くの人が関わり無駄が多かった今のDの時代は所得税30%消費税30%ベーシックインカム3万で年金は存在しないお金は全て電子マネーと単純な仕組みで人口はCの時代の20分の1を基準値として調整している
Cの時代は人口が増え世界大戦が起こり核兵器と言う物で地上の生物約95%を死滅させた、人類は同じ過ちを犯さない為に遺跡に残された文献を見て今のシステムを作った、少数精鋭、シンプルシステムが基本的な考え方で世界は発展している等と歴史博物館では俺にとって難し過ぎる事が説明されている
この星が3度滅び4度目の世界であると言うのはお伽話のように言われているが、遺跡から情報を得て確認された本当の出来事のようだ
星を丸ごと滅ぼしかけたCの時代、核兵器は悪魔の兵器と言われていたそうだが、次の時代にもたらした功績もある、その一つが人体の進化だ人の身体は血液を作ると同時に魔力を作り放射能に耐え得る体に進化して後に魔法が生まれた、また数千年経過した大気に含まれる成分が人の寿命を伸ばしたとされている
詳しい事は俺には難しくて分からないが魔力の恩恵を多く受けている俺には有り難い面が多い、今の時代が俺に合った制度であるのも前の時代の過ちを反面教師にして作られたものだから、今俺が良い時代と思っているのは過去の過ちのお蔭とも言える
俺は歴史博物館を見学した後、現在のアレリア大陸の様子を模型にした展示室を見つけて模型を見ながら旅の行き先について考えている、少し戻って南の大陸へ行くつもりだったがこの大陸も行っていない場所が多い事を模型を見て思う、行き先はこの首都トシントンに滞在して考えよう