6話 キャバルト
地球の環境と似た星だが違った文明を持つ世界の物語
俺は馬車に乗りラングルを出発して南へ向かいキャバルトの街へ向かっている
キャバルトの街は温暖で過ごしやすい気候に位置しているが、厳しい寒さがなく凍死の恐れが無いせいか貧困層の者が多く集まる、また過ごしやすい気候に高級な住宅を持つ富裕層も多く貧富の差が激しい地域になっている、犯罪も多く発生してハンターギルドには護衛の依頼が山ほどあると言う噂だ
富裕層は常駐のハンターを雇って護衛させているはず、何か大事なモノを運ぶ等の時にハンターを増やして対応すると思われる、富裕層の依頼なら高額報酬案件もあるのではと期待しながら馬車を走らせる
この世界では人類に親子の関係は存在しない、大昔人類は富も貧困も親から子へ引き継がれ貧困を引き継いだ子は人生をマイナスからスタートさせていたが、この世界の貧困者は本人の選択ミスによるモノ、生まれ持った才能に合わない選択をした自身の失敗だ、自信の選択以外を責めるなら選択の難しい才能を持った運の悪さくらいだろう
この世界の人は行政に管理され生きている、生まれた時から個人番号を与えられ平等な教育を受け大人になる10歳での最初の選択で間違うと人生は終わったも同然になる、行政から毎月渡されるお金3万ギル、人にもよるが大人1人の1ヶ月の食費くらいで生活する事になる
10歳で就職した者には15歳まで10万ギルが上乗せされ払われ、15歳から20歳までは5万ギル上乗せして払われる、15歳で就職した者には20歳まで5万ギル上乗せして払われる、一部勉学が優秀な者だけが20歳以降も行政機関職員としての資格を持ち教育を受けることが出来る、各大陸で若干の違いはあるが似たような制度をどこもとっていると聞く
全ての大陸で所得と売買取引の3割が税金として取られる単純な税制度をとっている、行政の支援は20歳以降は全人類ヘ一律3万ギルの分配のみ、最悪野宿していれば食べる事は出来るが病気をすれば終わる、これが選択を誤った者の一般的末路だ、その状況で一部の者が盗賊等の犯罪者になる
お金と言っても手のひらに埋め込まれた機械に数字が追加されるだけで、大昔の現金と言うものは無くなっている、お金のやり取りも全て記録され罪人は把握され手に埋め込まれた機械は遠隔操作で使用出来なく制限がかかる、罪を犯して得た金は使う事が出来ない
罪人は闇で物々交換をして生活する以外の手段しか無くなるとても面倒だと思うが、それでも犯罪に手を染める者がいる何を考えているか俺には理解出来ない
旅をしていると必ずと言っていいほど遭遇する盗賊、俺はこの者達を殺す事に何の躊躇いも無い、自分達が人生の選択ミスで道を踏み外しただけなのに他人を襲うなど許されない、今俺の前にいる3人の盗賊にも情けなどかけない
「スピリットウォリアーズやれ!」
霊体化した軍団を見て逃げようとするが逃しはしない、今3人の失敗者が死んだこれで3人分9万ギル行政は無駄な金を払わずに済む
「これが今の世界だメデゥーサ理解したか?」
「私はダンジョンの中しか知りませんでしたから、それに私は霊体だから3万ギルはもらえませんね、管理もされていませんし」(メデゥーサ)
俺はメデゥーサと話をしながら馬車を走らせる、1人で歩いていた時は大違いの旅をしている
数日馬車を走らせるとキャバルトの街に到着した、噂通りの大きな街だが少し街から離れると路上生活者の地域がある、しかし丘の上には立派な建物が見える本当に貧富の差の激しい街のようだ
ハンターギルドの近くに宿を取り、まずはメデゥーサの武器探しに武器屋に行く、特に悩む事もなく彼女はトンファーを選んだ、人けのない場所に行きファイターと手合わせさせてみた、剣を持つファイター3人と互角以上の手合わせをしている、コレに石化魔法が合わされると思うとゾッとする、味方で良かった
キャバルトに到着した翌日ハンターギルドへ良い依頼がないか探しに行く、常駐長期の警備依頼が多くあるが旅の途中の資金稼ぎが目的である1週間以上の依頼は受けたくない、この街に長期滞在するかもしれないが旅を再開したくなった時に困るからだ、旅の資金が今日明日足りなくなる訳ではない様子を見てみる
翌日もハンターギルドで依頼を確認するが増えたのは長期の警備のみ、少しでも強いハンターを護衛にと考えていると思われる、この街での金稼ぎは諦めるべきか考える
この旅は俺の見聞を広める旅、貧富の差の激しい街で嫌なモノも見た次の街を目指そう
俺は街を出て旅を再開させる、人口の多い街には当然悪人も多い街を出て森の中に入ると盗賊が出て来る
「メデゥーサ、トンファー試すのに良い実験台だ」
「そのようですね主人様」(メデゥーサ)
メデゥーサは馬車を降りて盗賊の前に出る、普通は男が前に出ると思っていたのか盗賊達は呆気に取られた顔をするが、次の瞬間には襲いかかって来ている、1人目2人目をトンファーで叩くと攻撃を受けた男達の剣が折れた、3人目4人目が襲って来ると
「ファサル」(メデゥーサ)
石化魔法で石にした、折れた剣を持った最初の2人は石化した仲間を見て逃げ出す
「ウルフルズ逃すな」
逃げようとした2人の前にウルフルズが対峙する、追って来たメデゥーサがこの2人も石化した、メデゥーサは石化した4人の盗賊をトンファーで叩き粉々にする、戦いを終えたメデゥーサが馬車に戻ってくる何事もなかったように
「主人様とても使いやすい武器ありがとうございます」(メデゥーサ)
メデューサは一言礼を言って俺の隣に座った、馬車は次の街ケカンを目指して東へ向かう