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【2巻10/1発売】エロ漫画の悪役に転生した俺が、寝取らなくても幸せになる方法  作者: みずがめ@10/1『エロ漫画の悪役』2巻発売!


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151.信じるべき目

「伊織ちゃんが『不幸を届ける少女』と呼ばれていたという話を覚えているかな?」


 夏樹から出た単語に、俺は頷いて答える。


「ああ。確か伊織と仲良くする奴は不幸になるんだったな。財産を失ったり、最悪命を落とすって……」

「最初に『不幸を届ける少女』と言い始めたのは、どうやら彼女の母親らしいんだ」

「は……?」


 母親? 母親がなんで娘の悪い噂を流すんだ?

 初っ端から混乱する。頭の中で「なぜ?」と疑問ばかりが浮かぶ。

 夏樹は視線を落とし「あくまで噂なんだけどね……」と言いづらそうにしながらも、続きを話してくれた。


「伊織ちゃんの母親……最初は彼女も子供を授かって喜んだそうだ。愛する人との愛の証と言っても過言じゃないからね。私も同じ女として気持ちはわかるつもりだよ」


 うっとりとした顔で俺に熱視線を送る夏樹。

 今はそういうのいいから。さっさと続きを話せ、という気持ちを込めて視線を合わせてやった。夏樹の目の輝きが増した。


「彼女は産んだ子が男の子ではなかったことにガッカリしたらしい。男の方が後継ぎとなるために有利と思ったのだろうね。だから諦めきれずに、自分の娘に男性名である『伊織』と名付けたのだそうだ」


『伊織』という名前は昔の武士に多かったのだそうだ。柔らかい響きだから女の子でも全然引っかからなかったな。

 そういえば宮本武蔵の弟子が宮本伊織って時代劇で言ってた気がする。まあエロ漫画原作のこの世界が、同じ時代劇をやってるとは限らないんだけど。


「伊織ちゃんは、最初男の子として育てられたそうだ。強くなるようにと空手や剣道などを習っていたし、服装ですら男物しか許されなかったのだとか。でも、そんなの長く続けられるものじゃない」

「……だろうな」


 現在の伊織は髪型をツインテールにして、いかにもな女の子って印象だ。

 たぶん、どこかで母親に反発して、今の伊織が出来上がったのだろう。

 ……運動能力に関しては、空手や剣道を習ったくらいで校舎の四階から飛び降りて走れるようにはならないと思うが。


「詳しいことはわからないけど、いつしか伊織ちゃんの母親は娘と関わらないようにと距離を置いたんだ。親戚の家に預けて、顔すら合わせなかったらしい」

「……」


 育児放棄じゃねえか。そう口にしそうになって、自分に返ってくることに気づいてやめた。


「最初、伊織ちゃんは親戚の人たちに可愛がられたらしい。母親のあまりの扱いに可哀想だと同情されたんだろうね」

「そこから『不幸を届ける少女』の始まりか……」

「その通り。伊織ちゃんの面倒を見てくれた人たちが次々と不幸に見舞われた。それからすぐに彼女の母親が『伊織と関わると不幸になる。あいつは不幸を届ける少女なのよ』と言い出した。そして、いつしか誰も関わりたくないと、たらい回しされたんだ」


 おそらく夏樹は、その情報を当時から掴んでいたのだろう。

 自分とそう歳が変わらない女子の嫌な話だ。気分の良いものじゃなかったんだと、目の前の顔を見れば察せられる。


「実際のところ、どうなんだ?」

「どう、とは?」

「伊織がその不幸とやらに関わった可能性だよ。そもそも、その母親が伊織に命令していたってわけじゃねえのか?」


 伊織の口ぶりでは、今回俺を後継者候補から脱落させようとしているのも誰かに言われたからのようだった。

 どんな理由かはわからないが、その母親に消したい親戚連中がいたのだとすれば……。伊織に命令して何かをやらせた可能性がある。

 直接的な行動でなくとも、伊織に注目が集まるようにして別の刺客を送り込むとか……って、そんなこと考える時点で、このエロ漫画世界に染まってきた証拠だな。


「それはわからない。一応私の方でも調べさせてはみたんだけど、何一つとして痕跡が残っていなかった。まさに不幸が訪れたとしか言えなくてね」

「全部偶然なのか?」

「証拠がないのだからそうとしか言えないよ。でも、私は伊織ちゃんを信じたいと思っている。まあ仮に彼女が本当に犯人なのだとすれば、私程度じゃ尻尾を掴むことはできないということだろうね」


 自虐的に笑う夏樹。

 こいつにどこまでの力があるかは知らないが、たぶん郷田グループに匹敵するほどの影響力はあると思う。

 そんな夏樹が調べて何も出なかったのなら、伊織の周りで起こっている不幸は、本当に偶然と考えた方がいいのかもしれない。


「あと気になってんだが、夏樹はなんで伊織を信じられるんだ? 顔を合わせたことがあっても、別に仲が良かったわけじゃねえんだろ?」


 少し気になっていたことだ。

 仲が良ければエリカと接する時みたいに、少しくらいは砕けた態度になるだろう。

 伊織もとくに夏樹に対して気にする様子がなかったしな。

 そうなると、夏樹が一方的に伊織を信じているってことになるんだが。


「……別に、深い理由があるわけじゃないんだ」


 なぜか夏樹が頬を染める。

 俺に熱っぽい視線を送ってきて……な、なんだよ?


「伊織ちゃんの目が、小さい頃の晃生くんによく似ていてね……。ああいう目をする子は信じられると、私の勘がそう言ったんだ」

「……」


 勘……? 勘ときやがったか……。

 昔のことがあったとはいえ、悪の竿役だった俺にここまで固執するくらいには、夏樹の目は曇っているからな。

 場合によっては話半分で聞き流していた方がいいかもしれない。俺は夏樹の評価を下方修正した。



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