150.生徒会長はだらしなくて凛々しい
夏樹は見てわかるほどに緊張していた。なのに動きに迷いはなく、俺の衣服に手をかける。
「うわぁ……」
直接竿を目にした夏樹の口から声が漏れる。驚いているような、戸惑っているような、喜んでいるような……様々な感情が混ざっているみたいに聞こえた。
「す、すごいね……さすがは晃生くんだ」
夏樹の瞳に映っている俺のムスコは、大層なもんだった。その「晃生くん」はどっちに対して言っているのか、俺自身わからなくなる。
「下ばっか見てんじゃねえよ」
「あ……♡」
夏樹の顎を持ち上げる。
顔が真っ赤になっていて、身体に力が入っている。しかし目は期待で輝いており、口元は緩んでいた。
「んふっ」
唇を重ねる。身体を密着させて、舌で彼女をなぶっていく。
苦しそうな鼻息が漏れる。こういうことに慣れていないのだろう。先輩相手に教え込んでやろうと鼻息が荒くなった。
「んっ、んっ、んんっ……」
どんどん熱がこもっていく。
さすがは優秀な生徒会長と言うべきか。ただやられっぱなしというわけではなく、俺に合わせようと熱いものを絡ませてくる。
「んん~~っ♡」
しばらく夢中になって没頭していると、夏樹が身体を震わせた。
ビクビクと跳ねる身体を優しく抱き留める。顔を離せば、幸せそうにだらしなく緩んだ表情をさらしていた。
ようやく痙攣が収まったので、弛緩した身体をベッドに横たえてやる。
「あ、晃生くんのお世話をしないといけないのに……っ。私がしないといけないのに……っ」
「身体に力が入らねえんだろ? 無理しなくてもいいぞ」
「ううぅ~~!」
夏樹は緩んだ顔のまま、悔しそうに呻く。
夏樹の制服に手をかけて、少しずつ脱がしてやる。まともに動ける状態ではないのか、俺にされるがままだった。
「あっ、ゴム……」
そういえば引っ越したばかりでゴムを買っていなかった。さすがにこのまま本番に突入するのは躊躇われる。
「そこに置いてある私のカバンの中にゴムが入っているよ」
「あん?」
夏樹に指し示されて見てみれば、ベッドの近くに鞄があった。
鞄の中を見ていいとのことだったので手を突っ込んでみれば、男女の営みに必要なゴムの箱があった。
「夏樹……生徒会長のくせに、こんなもん持ち歩いてんのかよ」
「こ、これは晃生くんにいつ求められてもいいようにだよ……乙女のたしなみさ」
たしなみって……。まあ、ありがたく使わせてもらうけどな。
改めて夏樹に覆い被さる。
外見は男女ともに人気のある美人の生徒会長だ。中身は俺のことが好きすぎて空回るポンコツ女子なんだけどな。
「制服……ちょっとしわになっちまうかもな」
「晃生くんに汚されるなら本望さ」
「汚さねえよ」と言いながら、半脱ぎにさせたまま行為を始めるのであった。
◇ ◇ ◇
朝からスッキリした俺は、学校へ行く準備をした。
「ふんふふふーん♪」
俺以上にスッキリした顔をしている夏樹は、朝食の準備をしてくれている。
制服エプロンはそそるが、スッキリしているので襲ったりはしない。襲ってほしそうに尻を振っているように見えなくもないが、クールな俺は気にせずテレビをつけてニュースを眺める。
「この匂い……」
もうすぐ朝食が出来そうなのか、食欲をそそる匂いが鼻孔をくすぐる。
「晃生くんのために良い豚肉を買ってきたんだ。朝からがっつり食べて、英気を養ってほしくてね」
「……ちなみに何作ってんだ?」
「生姜焼き定食さ!」
明るく言い放つ夏樹の声に、俺は黙り込んでしまった。
昨日は伊織相手に言いづらかったが、生姜焼き定食は二日連続だったんだよな……。
これで三日連続で生姜焼き。まさか羽彩、伊織、夏樹と、三人が連続で同じメニューを作るとは思いもしなかった。俺ってそんなにも生姜焼き定食が好きそうに見えるのか?
メンバーを考えれば話し合いが行われるはずがないし、メニューが被ったのは偶然でしかないのだろう。意外と気が合うのかもな。
「さあ晃生くん。召し上がれ♡」
ニッコニコの夏樹が生姜焼き定食をテーブルに並べてくれた。
朝からスッキリしているおかげで、腹も減っている。三日連続同じ料理でも関係なく美味しく食べられた。
「はぁ~、二人きりの食卓というものは良いものだね」
夏樹は食事している俺をうっとりと見つめながらそんなことを言う。
「まあ、二人きりになる機会があまりないからな。それにしても、夏樹って料理できたんだな。美味いぞ」
「ふふっ、ありがとう。君のお嫁さんになるために花嫁修業をした甲斐があったというものだよ」
花嫁修業って今時やっている奴がいるんだな。なんて思うのは偏見か。
一応郷田晃生の婚約者ってことになっているんだし。俺の嫁になるために努力していても不思議じゃないのか。
「……」
そこまで思われていて、悪い気がする男はいないだろう。
それが物心つく前に初恋を抱いた女の子ならなおさらだ。
「それで晃生くん、昨晩は伊織ちゃんと何かあったのかい?」
食事中に突然そんなことを言われて、むせそうになった。
俺を見る夏樹の目は確信めいている。
「伊織から何か聞いたのか?」
「いいや。でも、昨晩伊織ちゃんに会うと何やら様子がおかしくてね。本人は言わなかったけれど、晃生くんと何かあったのだと思ったんだ」
「その様子だと私の勘は当たっていたようだね」と笑う夏樹。どうやらカマをかけられたらしい。
「まあ……ちょっと晩飯をご馳走になっただけだ」
別に隠すことでもないので素直に話した。
「へぇ、あの伊織ちゃんがね……」
夏樹は顎に手をやりながらしみじみと頷く。
「夏樹。お前は伊織のことをどこまで知っているんだ? 俺に話していないことがあるなら全部教えろ」
「まるで私に隠し事があるみたいな言い方だけれど、そこまで詳しくはないよ。親しい仲というわけでもないしね」
「それでも」と、夏樹は続ける。
「後継者候補の中で、晃生くんが一番情報不足なのは確かだろう。純粋な姿が見たいからと、余計なことをしないようにと言い含められているのだけれど、もう少し知らなくてはフェアじゃない」
夏樹は凛々しい表情で姿勢を正した。少し前までだらしない姿をさらしていた奴とは思えない雰囲気に、俺も背筋を伸ばした。





