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126.ほのぼの日常ものかと思いきや

 久しぶりに教室でクラスメイトと顔を合わせると、自分が学生なのだと思い出させてくれる。

 夏休みは大人の顔を見ることが多かったからな。

 両親……はいいとして、ガタイのいい黒服と殴り合ったり、某社長親子を没落させたり、ナンパ大学生を改心させたりなど。高校生でそんなことを経験した奴はなかなかいないだろう。


「白鳥さんお肌ツヤツヤしてるー。夏休み何か良いことがあったの?」

「えへへ、たくさん良いことがあったわ」


 優等生で人気者でもある日葵は、早速クラスメイトに囲まれていた。

 一応清楚な美少女と認識されているらしい彼女が俺に流し目を送ってくる。その意味ありげな視線を追って、クラスメイトたちは何を察したのか黄色い声を上げた。


「黒羽さんも何か雰囲気が変わったように見えるよね」

「そう? まあ……そうかも」

「想像以上に何かあったっぽい!?」


 夏休み前に比べて、梨乃は明らかに色気が増したからな。

 それをクラスメイトたちに簡単に見抜かれたようだ。いつも一緒にいた俺だって変化を感じるのだ。久しぶりに会ったからこそ、その変化が大きく思えるのだろう。


「氷室さんは夏休みにどこか遊びに行った?」

「んー、海行ったり夏祭りに行ったりしたよ」

「郷田くんと?」

「え、ま、まあね……」


 俺と同じく不良としてクラスメイトから恐れられていたはずの羽彩も、気さくに話しかけられていた。

 外見は金髪ギャルでも、中身は純情乙女だからな。羽彩の恥じらう姿を見て、クラスメイトたちの親密度が上がっていくのがわかる。


「郷田くんはどんな夏休みを過ごしたの?」


 クラスメイトたちは俺にも話しかけてくれた。

 体育祭を通じてクラスメイトとは仲良くなったものだが、まさか二学期の初日から親しく接してきてくれるとは思わなかった。

 それだけ郷田晃生という存在は恐れられてきていたからな。夏休みで時間が空いたから、恐怖がぶり返してきてもおかしくないはずなのに……この変化はかなり嬉しいぞ。


「バイトしたり、海に遊びに行ったりしたぞ」

「案外普通だー」


 オイ、どんな想像をしていたんだ?

 ……いや、普通に言えないこともしてきていたな。振り返ってみれば濃密な夏休みだった。

 ワイワイと賑やかな教室。

 互いに近況報告をしたりして。俺もクラスに馴染んできたのだと自覚する。

 こうしてみるとエロ漫画の世界というより、ほのぼの日常学園ものの世界って感じだ。


「お兄ちゃん!」


 念願だったまっとうな青春を噛みしめていると、教室に聞き覚えのある声が響いた。

 聞き慣れているわけじゃないが、強烈に記憶に残ってしまった声。

 振り返れば……妹がいた。


「え、誰だよあの美少女?」

「ものすごく可愛いぞ!?」

「お兄ちゃんって……あんな可愛い子を妹にしている奴がいるのか!?」


 郷田伊織。彼女の登場に気づいたクラスの男子連中は大盛り上がりである。

 しかもかなりの美少女だと認識されている様子だ。俺の女たちを見慣れてしまったせいか、そこまで大騒ぎするほどかと首をかしげてしまう。

 そう思うのは、俺と彼女に血の繋がりがあるからか……。


「会いたかったよお兄ちゃん」


 赤いツインテールをなびかせながら俺に突進してくる伊織。あれ、デジャブ?

 イノシシのような勢いで突っ込んでくる彼女を慌てて回避する。伊織は急に止まれなかったのか机にぶつかった。


「痛~い。避けるなんて、酷いよお兄ちゃんっ」

「いや、お前がまた抱きつこうとしてくるからだろ」


 こっちはまだ脇腹が痛いんだよ。馬鹿力を警戒して構えてしまうほどに、身体が拒否の姿勢を見せていた。


「そんなの兄妹なんだから普通のことだよ。あんなにも激しく求め合った仲なのに……酷いよ!」


 ざわっざわっ。教室の空気が揺れたのを感じ取る。


「激しく求め合った仲?」

「あんな美少女と?」

「白鳥さんや氷室さんだけじゃ飽き足らず……許せん!」


 まずい。男子を中心に俺への不信感が高まっている。

 せっかく郷田晃生の不良イメージが払しょくされつつあったのに。小動物系女子がそんなことを言ったらシャレにならねえだろうがっ!


「何言ってんだ。俺とお前はさっき会ったばかり──」

「酷いよお兄ちゃん! わたしとの関係をなかったことにするつもりなの!?」


 目にいっぱいの涙を溜めて、伊織は悲痛な声色でそんなことを言いやがった。

 具体的なことは何一つ口にしていないが、想像力のたくましい男子連中が勝手に俺と伊織の関係を作り上げていくのが察せられた。


「あっ、そろそろ授業が始まっちゃうね」


 今にも泣きそうな顔をしていたくせに、ケロッと笑顔になる伊織。

 教室中をかき乱すだけかき乱して、奴は無責任に背を向けた。


「ちょっ、待て──」

「またじっくりお話ししようね。お兄ちゃん♪」


 赤いツインテールをなびかせながら、あっさりと教室を出て行ってしまった。


「「「……」」」


 突き刺さる数々の視線。ついさっきまで、ほのぼの日常ものの雰囲気だったとは思えないほどの居た堪れなさである。

 伊織は言った。「お兄ちゃんを後継者候補から脱落させに来たの……。それが、わたしの役目だから♪」と。


「……」


 これ、むしろ社会的に抹殺しに来ていないか?

 妹という厄介な存在に、俺は戦慄せずにはいられなかったのであった。



『僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです』という青春ラブコメものを投稿しています(ちょっと苦いかも?)


https://ncode.syosetu.com/n1459kk/


キリのいいところまで毎日更新していきますので、応援してもらえたら嬉しいです!(アピール)


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