第21話 大海公爵
とり……鳥?
森から帰ってきたシティー達の無事を喜び、大海公爵への報告に行こうと彼の息子に目を向けた。
彼本人は怪我はしているものの変わり無さそうだったが、それよりもその近くを慌てたように忙しなく派手色のフクロウがちょこちょこ歩き回っている。
定期的に飛んでは落っこちているので怪我が酷いのだろう……じゃなくて
「そ、そのぉ…やたらとカラフルな鳥は一体なんなんだ…?」
「ボスです。」
「は?」
「映らずの森の主魔獣です。」
「えぇ…なんで連れてきたよ」
「どうやらヴォリア公爵令息に懐いたみたいなので。言っておきますが、私は関与してません。」
「…そっか…」
随分と澄ました顔で爆弾落としてくれたなぁ!
これ、ヴォリア公爵になんて言やぁいいんだ…?
「あの、ガーデナー公爵。」
「ん?なんでしょう?」
俺が頭を抱えていると、問題のヴォリア公爵令息が話しかけてきた。
「父には、僕からきちんとお話します。いえ、僕から話させてください。
彼女のことも、僕のことも、僕自身でしっかり伝えなければいけないんです。」
ふぅーん。この間シティーが言っていたヤツかな?
「そうですか。では私に着いてきなさい。君らが戻ったことを丁度報告しに行こうとしていたところなんだ。」
「!あっ、ありがとうございます!」
まぁ、何はともあれ、自分の事を自分で話すのは大切だ。彼がそうしたいと言うのならそれに越したことはないだろう。
それに俺も面倒な事話さないでいいしね。
○◆○
「失礼する。」
ご当主様と合流した後、ヴォリア公爵へお嬢様達が帰ってきた事を報告しに行く。
お嬢様と殿下はエリサに任せて、サフィル様を連れてご当主様はホールを後にし、比較的派手でない部屋の前に立つ。
ノックをして声をかけ、返事の後入室する。
ヴォリア公爵はホールからパーティーの参加者がわざわざ入らないような部屋に移動していたようだ。ヴォリア夫人やサフィル様の妹がいないのを見るに、彼女らはまだパーティー会場にいるのだろう。
ヴォリア公爵はご当主様に席をすすめ、サフィル様を一瞥した後話し始めたので、音を立てないように椅子の裏に立つ。
「やぁ、花園公爵。さっきぶり。息子を見つけてくれたようで感謝するよ。」
「んまぁ、俺が見つけたっていうか、うん…」
ご当主様はヴォリア公爵が苦手なのでなんだか言葉の歯切れが悪い。
「それで、どうして息子達が消えたのかについては、その鳥が教えてくれるのかな?」
「…そりゃ普通気になるよなぁ…それについては、彼が自分で話してくれるよ」
そうしてご当主様に促され、サフィル様が話し始める。彼はしばらくモゴモゴしていたが覚悟したように口を開き、森での出来事を語った。
突然飛ばされたこと、戦って彼女の事を知ったこと、使い魔にした事……
「ちょっ、と待て。使い魔?しっかり会話できる知能がある主魔獣を?」
「連れてきただけじゃないよなやっぱり…」
あっ、使い魔にしたとは言ってなかったなぁ。
我が国を代表する五公の二人が頭を抱えサフィル様とボス鳥を困ったように見つめる。
「…そうか。それで君はどうしたいかな」
ヴォリア公爵が話を一旦飲み込んだ、なんともいえない顔をしながら鳥に訊ねる。
『…アタシ、出来るならここに居たいわ。
サフィルに危ないことはしないし、危ないことがあったら助けるつもりよ???』
ボスはヴォリア公爵を見つめながら小首を傾げる。その目を真っ直ぐ見返し、公爵は口を開く。
「そうか。じゃあいいんじゃないかな。」
おや?ヴォリアは結構ガチガチな考えをする家だと思っていたが。以外とすんなり受け入れた。
「はぁ!?いっ、いいのか!?契約があるとはいえコイツはお前の息子を苦しめたんだろう!?」
「それはそうかもだけど、第一その息子が住まわせたいと言っているんだよ?」
「ぐっ……たしかに…?」
「それに、ボスを使い魔にしたとなればある程度の箔が付けられる。
誕生日に危険な森の主を従えたとなれば十分な逸話になるよ。息子が今まで苦しんだ分くらいの見返りになるさ。」
「まぁ…俺は口を挟む権利は無いし、お前がそれでいいならいいが…」
そりは合わないとはいえ、ご当主様も心配だったのだろう、反対の立場は取っていたが結局言いくるめられている。
そして…ヴォリア公爵が思ったよりもサフィル様を気にかけている事がわかった。
別に、彼が非情で息子に少しの気も回していないとは思っていなかった。
ただ、ヴォリアは代々現実主義的な家なのだ。しかし今回の件は他家への圧力以外にも、彼への慮りが見えた。
この国のヒトも変化が起こりつつあるのだろうか。
「お父様…ありがとう、ございます…!」
感極まった様に目を輝かせ笑うサフィル様の周りをちょこちょこと歩き回る。
その様子を優しい目でヴォリア公爵は眺めていた。
少し苦しそうな表情をしたと思ったら、ボソリと公爵が言った。
「…うん…ごめんな、何もしてあげられなくて」
「…?お父様には、色々してもらいましたよ。」
「そうか。そっか…」
なんでもない様にサフィル様に返されたヴォリア公爵は、心底以外だという顔をし、そして安心したように頬を緩ませた。
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