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お嬢様の中身は多分違う  作者: 此代野小和莉
第1章 お嬢様と執事
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第1話 お嬢様では無いかもしれない

ここからが本編となります。


 最近、気付いた事がある。

『うちのお嬢様、中身違うんじゃね?』

という事だ。


いや、変な話をしている自覚はある。だが、聞いて欲しい。

 信じられない程のじゃじゃ馬娘だったお嬢様が、今はとんでもなくいい子ちゃんにしているのだ。

 これは中身が入れ替わっていてもおかしくないと思えるほどの変わりようで、これまでがこれまでだっただけにお淑やかなお嬢様は奇妙で仕方がない。


一時の気の迷いだろうか、珍妙極まりないが気の所為という事にしておこう。




なんて思っていたら、嵐が家へやってきた。



◆○◆



 お嬢様が高熱を出し、おかしくなった日から約一ヶ月後のことだ。


「失礼、シティア嬢はいるだろうか?」


お嬢様の婚約者である殿下が公爵家へやって来た。

いや、別に婚約者同士なのだから来ては行けないということは無い。むしろこちらが出向いた方がいい位で、実際お嬢様はよく殿下に絡みに行っていた。

しかし、なんて言うか、その……恐らく、お嬢様は殿下からかなり嫌われている……ハズだったのだが。


目の前のこのお方の表情はまるで、恋する乙女というワードがピッタリだ。


とりあえず玄関で王太子殿下を待たせるのは不敬極まりないので、VIP様用の応接室へ通し紅茶を出す。


「殿下、今日はどんなご要件で?」

「なんだ、愛しい婚約者に会いに来てはいけないか?」

「いえ、そのような事は」


慌てて来たであろうご当主様が殿下へ尋ねるが、飽和した砂糖水のような返事を返される。


「それより、シティアは?」


殿下のお求めのお嬢様は、先ほど庭へ出ていった。花を愛でる趣味なんてなかったはずなのに。


「シティアは今庭にいるでしょう、呼んできますのでお待ちくださ」

「ならば、私が呼びに行こう」

「「!?」」


いやいやいやいやいや、ついひと月前まであんなに素っ気なかったでしょう貴方……

それがこんなにお嬢様にべったりで……

ちらり、とご当主様を見るとポーカーフェイスが剥がれかけているのが見えた。


「では、失礼する」


二人してポカンとしている間に殿下はお嬢様を探しに行ってしまった。


えぇー……っ



◆○◆



「なぁ、どう思う」

「はい?」

「いや、アレ」

「あぁ、殿下(アレ)ですか。」


殿下が出て行き、ご当主様と共に部屋に取り残された直後、そう聞かれた。


「だっておかしいと思わないのか!?

今までシティーには素っ気なくて俺は腹が立っていた、こちらから婚約破棄できるならしてやろうかとも思ったほどだ!!

なのに!!あんな、あんな砂糖菓子みたいな顔してるなんて!!いつの間に!!」

「お気持ちはわかりますが、大声を出しすぎると聞こえてしまいますよ?坊ちゃん」

「…すまん、声は小さくするから坊ちゃんはやめてくれ」

「ハハハ、申し訳ございません。

まぁ、ご当主様の言いたいことも分かりますよ。

なんて言うか…気持ち悪いですよね。」

「不敬だぞ」


ご当主様がじっとりした目で見てくるのを無視し、紅茶を入れ直す。


実際、気色悪いのだ、今の今までお高くとまっていた王子様が頬を染めて相手の親の前でふてぶてしい態度をとっているのは。


「……あっ、ほら見てください。お嬢様と殿下がいますよ。」


気まずい雰囲気を変えようと窓の外から見える庭を指し、ご当主様に話題を振る。


しかし、ご当主様は無言で立ち上がるとものすごい形相で窓にかじりついてしまった。

これはしばらく離れないな。




折角なので、ガーデナー公爵家について少し説明しよう。


ガーデナー公爵家は、我らがカルテール王国に十五家存在する公爵家の中でも上位に入る王家からの信頼を得た家である、五公と呼ばれる地位を持つ。


五公はそれぞれ、血筋に発現する魔力の属性で呼び分けられ、ガーデナー公爵家は代々地属性を発現することから、『花園公爵』と呼称されている。


今から約80年前、この国では大規模な戦争があった。その当時ガーデナー公爵家の当主だった人物が、後世に語り継がれるような傑物で、彼の戦果が評価され、ガーデナー公爵家は現在絶大な権力を所持している。


そして、現在ご当主様が眺めていらっしゃるお嬢様は、当代のガーデナー公爵家の第二子だ。


通常、魔力というものは強い者同士で掛け合せるとその子も強い魔力を持つとされている。

その為、王家は代々魔力の多い五公の中から婚約者を決め、王家へ嫁がせているのだ。


当代の五公は我がガーデナー家以外に王家の子息と年齢の合う女が産まれなかった為、王太子とお嬢様は婚約している。


婚約当初、ご当主様は大層ごねまくり、可愛い娘を渡さないよう根回ししまくっていたが本人が乗り気だった事もあり、泣く泣く婚約させていた。

ご当主様は少々、過保護なのだ。


とまぁ、こんな所だろうか、と思いご当主様の方を見るとまだ窓に張り付いている。

流石に長過ぎやしないだろうか。


「シティ〜〜〜……

そんなヤツのどこがいいって言うんだよォ」

「ほら、ご当主様そろそろ見苦しいですよ」

「うぅぅぁ……ぁぁん」


窓と一体化しかけているご当主様を引き剥がし、ソファへ座らせる。


「とりあえず!いつまでも恨めしそうにしてないで!仕事に戻ってください!!」

「えぇん」

「ほら!私も手伝いますから!」


応接室からご当主様を引きずり出して執務室のデスクへ座らせる。

すると、ご当主様も諦めたのか渋々仕事へ戻っていた。




あぁ……先が思いやられる……

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