第17話 一緒に
お久しぶりです。
「さて。
この鳥、どうするつもりです?
こちらに攻撃できないようにはしましたが、ここからはお嬢様次第ですよ。」
お嬢様に言われた通り、ボスの動きを止めはした。
しかし……お嬢様の事を信用していないという訳ではないが、魔獣がヒトに惚れるという話は荒唐無稽すぎて信じ難い。
「わ、分かってるわ。
とりあえず…サフィル様と殿下を見つけないといけないわね。
貴方の言う通り、彼の話も聞いてあげたいの。」
「なるほど。
ちなみにその惚れてるって言うのは本当なんです?
嘘つく意味もないですが、本当のことなら彼かなり可哀想ですね。
このまま会わせない方が彼のためかもしれないですよ?」
少しの脅しも込めてお嬢様に聞いてみる。
ボスがサフィル様に惚れているとして、長い間苦しめられた彼に、かなり酷なことをしようとしているのを自覚してもらいたい。
「うっ…でも彼にはなぜ呪いをかけられたのかを知る権利があると、私は思うわ。
そしてそれを解いてもらう権利もね。
彼女だって、なんだか悪気があった訳じゃなさそうだし……」
…ふぅん。まぁ、好きにさせよう。
「そうですか。
では、お二人を探しましょう。彼ら同士ははぐれていないですよね?」
「多分?
私だけボスと一緒に転移したから……」
「了解です。でしたら……」
そうお嬢様と話しながら目に魔力を送る。
条件は、ふたつ一緒に行動する人間。範囲は森の中。
ぐるり、と見回し……いた。
「見つけました、こっちです。私が連れてきますので、ここに居てください。」
「ぅえっ!?えっ、ちょっ、ちょっとまっ!」
お嬢様にそう言い残し、猛ダッシュで二人の元に向かう。
なんか言っていたけど…まいっか。
○◆○
「し、シティー!!良かった、無事だったのか!
急にコイツが現れたから人攫いかと……」
「ガーデナー嬢…良かった……」
二人を回収しお嬢様とボスの所へ戻ってきた。
殿下達は急に消えたお嬢様を探していたらしく、かなり安心している。
というかサフィル様、いつの間にかお嬢様への態度が変わってないか?
「二人も、怪我は無いかしら?見つかって安心したわ。」
「私達は特に大きな怪我は無いよ。君の怪我の方が大変だ、なにか手当をしないと……」
「私の怪我は後で大丈夫。
それよりも……サフィル様。
彼女と、話してあげてくれませんか。」
「っ!……」
殿下の言葉を遮り、お嬢様がサフィル様を真っ直ぐ見つめる。
サフィル様は少しボスから目を背けたが、なんとかもう一度前を向き直す。
トラウマの根源であるヤツと話す、というのは彼にとってかなり苦痛だろう。
でも話す姿勢を見せたのはなぜなのだろうか。
…もしかしたら本当に、彼女はサフィル様に惚れていたのかもしれない。
「サフィル様。今、彼女はこちらに危害を加えることが出来ませんわ。
だから安心してください!」
「!わ、分かった…」
お嬢様がサフィル様に声をかけ、ついに覚悟を決めたのかサフィル様が口を開く…
「あっ……と」
『ねぇ、サフィル。』
「!な、なんだ」
『アタシ、間違えちゃったのかな。』
「間違えたって…?」
『アタシ、ホントにアナタが大好きなのよ???
嘘じゃないわ。
だから、アナタとおんなじものが見たくって、アナタの視力をもらったわ。
アタシは景色が見えないけど、アナタを通してそれを知ったわ。
でも、ヒトは違うのね。』
「…僕は、ずっとずっとお前に、恐れを抱いていた。」
『…』
「幼い頃に迷い込んだ森で訳も分からない間に呪われていて、いつか来る暗闇にずっと怯えていた。」
サフィル様が責めるかのようにボスへ話す。
「でも、怯えて知ろうとしないのは、失礼だと思ったんだ。
僕を助けてくれた殿下やガーデナー嬢、それと一応…お前にも。」
『!』
「僕にとってお前は、一生付きまとう恐怖の象徴なんだ。
だけど、お前があまりにも純粋に見えてしまって、どうしても、恨みきれなくなってしまった。」
『ごめ、んなさい…
アナタをそこまで追い詰めていたなんて、思ってもなかったわ…』
少ししょんぼりとした雰囲気をボスが醸し出し、二人の間に変な空気が流れる。
そこに、突然
「なぁ、僕にかけた呪いを、解いて欲しい。
その代わりでは無いけれど、僕の使い魔になってくれないか?」
「「『!?』」」
『サ、サフィル、それって』
!?
サフィル様が衝撃的なことを言い出した。
使い魔とは、自分に縁のある魔物と特定の契約を結んで自身の相棒とする関係のことだ。
もちろん、縁は強すぎるほどあるが、信頼関係がないと契約したあと苦労するのだが…彼にボスを受け入れられるのか?
そう考えている間に彼はまた言葉を続ける。
「別に、使い魔でなくてもいい。ただ、これからは僕と一緒に、色んなものを見よう。
お前が持っている分の視力はあげるから、今度は僕を通してなんかじゃなくって、二人で。」
『…ホントに、本当に良いの???』
「お前が、今後人に危害を加えないのなら。」
『!えぇ!えぇ!当然よ!
アタシ、アナタの使い魔になるわ!
ヒトのことはわかんないけど、頑張って優しくするわ!!!』
器用に首を傾げながらボスが問うが、サフィル様の心は決まっているようで、堂々と条件を言い放った。
そんな彼に殿下が近づいて小声で話しかける。
「…いいのか、サフィル。私は君がいいなら文句は言わないが…」
「えぇ。…僕も、少し前に踏み出して見ようと思ったので。」
殿下にそう言った彼の顔は、なんだか憑き物が落ちたように見えた。
半月以上更新していなくて誠に申し訳ありません。
4月の新生活でスケジュールに変更が多く、なかなか書ける時間が取れませんでした言い訳です。
ですが今後も最低ひと月に一話は更新しますので、どうかお付き合い下さい。
その月の更新頻度をいつも月で最初に出した話のあとがきで書かせていただいておりますが、翌月の予定が出たら削除致します。




