第15話 どうして
「!シティー!それは本当か!?」
「っえっえぇ、多分、だけど…」
思った以上にアルが食い付き、少しのけ反りながら頷く。
「本当ですか!?ガーデナー嬢!
…して、それはどんなーー」
『ちょっと!
アタシ抜きで楽しそうなお話しないで!』
そんなセリフと共にまた風属性の魔法がバンバン飛んでくる…が、それは全て下位のものだ。
「シティー!
どんなのかは後で教えてくれればいい!
今私は何をすればいい!?」
飛んできた魔法を自分の魔法で相殺しながらあるがこちらに話しかける。
「!えっと!アルはそのまま攻撃を続けて!
なるべく火属性魔法だけで!」
「分かった!
放出:位下ーー充填:火属性ーーー《火弾》《火矢》!」
そう言うとアルがまた攻撃魔法を発動するーーって二重展開!?
「すっごい…」
「そうです!殿下は凄いんです!…じゃなくて、僕は何か出来ることはありますか?」
うーんそうね…アルはどんな条件か分からないのだからサフィルには話してサポートしてもらった方がいいかもしれない。
「…サフィル様には発動条件を教えておくので、アルのサポートをお願いします。」
「分かった。」
「あくまでも私の予想ですけど…多分、あの魔法は三属性以上の攻撃がないと発動出来ないんだと思います。それか三人からの攻撃。」
「!なるほど…
だったら、僕は地属性も持っているからそっちをメインに戦うことにする。
ただ、花園公爵家の貴女には敵わないから、攻撃は任せても?」
「えぇ!分かったわ!」
そう言われ、また攻撃を再開する。
アルの打つ攻撃の邪魔にならないよう、球と矢の間を上手く抜けられるように撃つ…難しいっ!
なかなか思ったところに飛んでいかず苦労しながら魔法を撃つ。
とりあえず、三人からの攻撃なのか、三属性なのかをはっきりさせたい。
よし。
「アルの魔法に合わせて、《土球》を撃つわ!
サフィル様はそれと同時に《地壁》をボスの足元に出してください!
空を飛ばれたら上から叩き落とすように《地壁》を出すので、そこを狙って!!」
「!分かりました、攻撃扱いでいいですか?」
「えぇ!」
良かった、サフィルが察してくれて。
ならば…!
アルが両手に貼っている魔法陣から打ち出される魔法を見て…今っ!!
「放出:位下ーー充填:地属性ーーー《土球》!」
『ぶっ!』
「ボスは空中…なら、
放出:位下ーー充填:地属性ーーー《地壁》」
ドガァァァッッッ!!!!
私の魔法がボスの丁度顔面に当たり怯んだ所にサフィルが《地壁》の陣をを空中に作り出す。
結構難しい筈なのに簡単にやっているところを見て、思わずさすがは攻略対象者!と考えてしまう。
『うぅっ!
どうして!サフィル???
なんでこんな酷いことするの???』
壁に押し潰されて苦しそうにするボスがサフィルに問いただす。
アルがボスの発言にわなわなと身体を震わせる。
…あの中位魔法は撃ってこない。
「酷いこと…?
お前の方がずっと!ずっと、ずっと!酷い事をしたじゃないか!!!!!」
『アナタに聞いてないわ!!
それに、アタシは酷いコトなんてしてないでしょ???
なのにこんな仕打ち…酷いわ!!!』
「貴様の身勝手でどれだけサフィルが傷付いたと思う!?
なに被害者ぶっているんだ!?」
「あ、アル…」
「いいよ、シティー、私が話す。」
「で、も…」
「殿下!いいです!これは僕の問題ですから…」
まるで自分だけが痛めつけられたかのように振る舞うボスにアルが怒りをぶつける。
それもそうだろう。
大事な従者を傷付けられたのだから。
それに多分、知らずにいてしまった自分のこともアルは責めてしまっているんだろう。彼は優しいから。
ちょっと空回りしたり、間違えてしまうこともあるけれど、誰よりも周りの人を考えて気遣える人なのだ。
『…ふーん。
いいわね。アナタ達は。
アタシはサフィルと一緒のものを見たいって願っただけなのに。
アナタ達はもっと色んなことが出来るんでしょ???
ずるいわ、ずるいわ。』
諦めた、のかしら?
そう思うほど淡々とボスが話し出す。
『…どうせ、アタシの願いが叶わないんなら…』
「…?」
「…?シティー、念の為下がって。」
「えっ、えぇ」
アルにそう言われ、一歩後ろに下がるーーーーッ!
その瞬間、ボスが壁を押し退け私に向かって飛び出してくる。まだそんな力があったなんて…!
上半身へ、鉤爪に掴まれたような衝撃…
それと同時にさっき感じたような気持ちの悪い浮遊感が身を襲う。
『放出:位中ーー充填:風属性ーーー《標識転移》』
「!?シティー!!!!」
「ガーデナー嬢!?」
遠くで焦った様なアルとサフィルの声が聞こえる。
まずい、どうしよう、アル達とはぐれてこのまま死んでしまうかもーーーーー
その時。
首にかけたネックレスが視界に映る。
透明なビー玉のようなものが一つだけ付いたデザインの、シンプルなネックレスだ。
ーーーー『お嬢様、もし、本当に緊急事態が起こったら、コレを握って私を呼んでください』
…流石に今は緊急事態といえるよね。
そう思い、ネックレスを握って彼の名前を呼ぼうとして………
思い出せない。
あ、れ、あれ、あれ、
彼について、何も思い出せない。
どんな顔をしていた?
どんな声だった?さっき思い出したセリフはどんな声でいわれた?
髪は?長かった?何色だった?
目は?口は?
名前は?
分からない。分からない!?
「どぉして…?」
貴方は一体誰なの?
転移魔法陣が発動し浮遊感の後、開けた視界に大きな真っ黒の三つ編みが踊る。
「おや、鬼でも蛇でも無く可愛い小鳥さんでしたか。」




