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お嬢様の中身は多分違う  作者: 此代野小和莉
第1章 お嬢様と執事
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第13話 ラブクレイジー・モンスター


『そんなカンタンに倒されてアゲル訳ないでしょ〜???』


「「「!?」」」


唐突に声が聞こえる。

この陰鬱な空気が漂う森にそぐわない、明るい女性の声だ。


「…っ!誰だ!」


『誰だって、酷いわ???

アナタ達が無礼にもアタシを討伐するなんて言うからでてきてあげたのに???』


すぐさまアルが投げかけた問いに返ってきた言葉は明らかにこちらを小馬鹿にしたようなセリフだ。


そして、その答えから察するに…サフィルのトラウマの根源である、この映らずの森(アンリフォレスト)のボスなのだろう。


だけど…


「で、殿下、声は聞こえるのに、姿が…」

「あぁ、何処にも見えないな。」


周囲を目を凝らし見てみても何もいない。

声は聞こえるのに、どこから聞こえているかは分からない。


『ウーン???

ねぇ、サフィル???

どうしてそんなに怖いカオしてるの???』

「…え、っ、ど、どうして…表情が」


ふと、ボスの声がサフィルに問いかける。

そして先程から悪かった顔色がさらに悪くなってしまう。


まずい!このままじゃ倒れてしまう!

とりあえず声に耳を傾けさせちゃいけない!


「サフィル様!ダメです!声を聞かないで!」

「あっ、あぁ。わ、かった」


『ちょっと!

ソコのコ、どうして邪魔するのよ???

今はアタシがサフィルに質問してるの!

アナタの出る幕は無いわ!』

「!どうしてもなにも!彼が嫌がっているでしょう!!!

貴女こそ!どうして彼をこんなに苦しませるの!?」


ボスの追い討ちをかけるような言葉に思わず反論してしまう。

するとなぜか私の言葉にボスからキョトンとした空気が流れてきた。


『苦しませる???

いいえ???アタシはそんな事していないわ???

だって、

アタシ………サフィルに一目ボレしちゃったんだもの!』


「「「は……?」」」


えっ、どういう意味?


『キャー♡言っちゃった♡

だからぁ、好きなコいじめるなんてヒトみたいなことする訳ないでしょ〜!』


ケタケタと楽しそうな笑い声を上げるボスに対し、私たちは先程の発言が理解出来ず固まってしまった。


ボスが…サフィルに…惚れてる…?

アリエナイ。

だって、ゲームじゃそんな事言われていなかったし、そもそもサフィルの話しぶりからしてそんな雰囲気1ミリも感じなかった。

ただただ、未知の魔物に対する恐怖があっただけだ。


アルも同じことを思ったのか不快そうに眉をひそめているし、サフィルに至っては表情が無となっている。


まあ、それはそうでしょう。

長年怯えた相手が自分に惚れているなんて言い出したら。


だけど、もしも本当ならなんでわざわざ好きな人から光を奪ったのだろう。

今までは単に光に飢えていたからたまたま迷い込んだ人の子供の視力を取ったんだと思っていたけど…



「…なら、もし、仮に貴女が本気でサフィル様に惚れているとして…どうして、視力を奪ったりしたの!?」


『???アナタ、不思議なコト言うわね!

()()()()()()()()()()()()()なんて普通じゃない!』


…これはダメだ。

明らかに感覚が違う。

同じものを見るという言葉通り、彼から奪った視力を通して彼と同じものを見ていたのだろうか。



「ひっ…!そ、そんな理由で…?」


『や〜んサフィル!

そんな理由って言わないで〜!

アタシはアナタと同じものを見たかったから契約したのよ???

言ったでしょ???『アナタの光をちょうだい???』って!

ちょっと怖がらせちゃったかもしれないケド、ちゃーんと外に帰してあげたでしょ???』



ボスの声は、ものすごくいい事をしたかのように誇らしげに声色を弾ませている。


こんにゃろ、姿が見えたらぶん殴ってやりたいぞ!


思わず言葉使いが汚くなるくらいボスに対して不快な感情を募らせる。もうこの森から出ないで、できることなら彼女のことを先に倒してしまいたい。


「…理解できないな。

散々サフィルに惚れていると言っておいて、今お前の愛するやつの事は一切見えていないようだ。」

「!殿下!!」



『なんですって???』


「いやなに、どうせ臆病だから姿も見せずにこちらに話しかけているんだろう?

…振られると分かっているから顔を合わせたくないんじゃないか?」


『…』


「おや、図星かい?

ならさっさと姿を見せてくれ。

コソコソしてる奴よりも堂々としていた方がサフィルと近づける確率は上がるんじゃないか?」


!?

突然のアルの暴挙に、思わず小声で問いつめる。


「ち、ちょっとアル!どうしたの!」

「いや、シティー。だってアイツ、サフィルをおもちゃか何かと勘違いしているじゃないか。

私は自分の側近となる人のことを舐めるやつなんて嫌いだ。

…それなら、いっそ、ここで戦って倒してしまいたい」

「ア、アル…」「で、殿下…」


「ですが、危険です!

御気持ちは有難く思いますが、僕の為に貴方を危険な目には合わせられません!」

「いいんだ!

シティーだって、そう思うだろう?」

「…えぇ!

サフィル様、私たちは戦えますわ!

…貴方も、一緒に戦って下さいますか?」


そうだ、彼らの協力さえあれば、ボスだって倒せるはず。そう思い、サフィルに手を差しだす。


「!…分かりました。貴方達となら彼女とだって、戦えます!」


がっしりと私の手を掴み、サフィルの目に光が点る。

良かった、前を向いてくれた。




『…どうして、そんな事言うの???

分かった、見せてあげる。

だからそんな目でアタシを睨まないで!


いいわ、いいわ。


思いっきり戦ってあげる!!!

そしてサフィル以外は死んじゃえばいいんだわ!!!』







そんな台詞と共に虚空から現れたのは巨大な派手色のフクロウだった。

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