8/8「ゴーレムの子守唄」
暖かな日の光が満ちる昼頃。
思わず魔物ですら昼寝してしまうようなこの時間にも、そのゴーレムは規則正しく徘徊していた。
ゴーレムに敵意などは無く、攻撃したら嫌がるだけで反撃すらしない。
そんなゴーレムの討伐依頼を俺は引き受けていた。
依頼主は近々そこに別荘を建てたい金持ちらしく、徘徊するだけのゴーレムが邪魔だからと討伐依頼をギルドに出したのだ。
全くもって自分勝手な依頼だが、俺がその依頼を引き受けたのはゴーレムの活動を停止できる方法を知っているからだ。
ゴーレムの側頭部には小さな取っ手がついており、それを回すとゴーレムの活動が停止する。
どういう仕組みなのかはよく分からんが破壊されてしまうよりはましだろう。
活動停止した後に邪魔にならない場所に運べば良いのだ。
そう考えて俺はゴーレムの機能停止を実行し、無事成功した。
森に運んだまでは良いのだが、何かの拍子にゴーレムが再び動き出したのだ。
それからゴーレムはひたすら俺についてくるようになった。
言葉も解するらしく、命令すればその通りに動く。
俺はそれに戸惑っていた果たしてこれでよかったのだろうか?
元々害が無かったのだから俺から離れて生きるようにすることも考えた。
だがそれはあくまで俺がした『命令』に過ぎない。
そんな命令にあのゴーレムは縛られて生きていくことになるんじゃないかと。
再び機能停止しようにも、結局決断は下せなかった。
そんな思いをゴーレムに話したりもしてみた。
いつか、答えてくれたらいいな……。
そうして年月は流れ、そのゴーレムは今も花畑と苔の生えた特徴的な形をした石を見守っていると言われている。