四つ目の邪神の朝
「ただいま。」
夢瞬は階段に上がる前に、台所をちらと見た。
朱雀も騰蛇もいない。
「勾陣。」
「うん?」
「朱雀と騰蛇は?」
「少し問題があるので、彼らに向かわせた。」
「危ない問題?」
「ええ。」
「教えてもらえる問題?」
夢瞬は顔を上げて、自分より高い勾陣を見つめる。
勾陣はため息を吐いた。
「邪神四凶。封印されたはずだが、何故かその封印が解かされた。永望が目覚める前の時間を凌げなければ。」
「邪神四凶?」
「ええ。渾敦、窮奇、檮杌、饕餮、合わせば邪神四凶。」
「勾陣!夢瞬さんはどこに!」
「ここに。」
夢瞬は、窓の外にいる太陰にびっくりした。
こんな風に慌てる太陰なんて、滅多にない。
「太陰?」
「夢瞬さん、来てください。」
「え...勾陣は?」
「勾陣、ここは任せた。」
太陰と、心配そうな夢瞬を見て、勾陣は微笑んだ。
「わかってる。夢瞬さん。」
「勾陣...」
「私は凶将。君を守るより、ここで戦う方が似合う。太陰について行ってください。彼女は一番優れてる守備力を持っている。」
「わかった...太陰、行こう。」
太陰に手を握られ、夢瞬は迷わず振り向いた。
太陰と共に、夢瞬は滅多に入らない、安倍家の奥に入った。
ここには、昼間で開けたりしない部屋がいる。
「太陰、邪神四凶のせいなの?」
「ええ。騰蛇と天空は、虎の形を持つ窮奇や檮杌と戦ってる、そして朱雀、玄武と白虎は渾敦と饕餮を相手している。他のみんなも、彼らをカバーしているんだ。」
「だったら、隠れる必要はあるの?」
「邪神四凶の力は測れない。騰蛇と天空は凄まじいが、さすがに二匹相手ではきつかった。窮奇がここに近付いてると、報告を受けた。」
「窮奇...」
「翼を持ってる虎の邪神だ。でも大丈夫、勾陣はきっと勝ってくれる。」
夢瞬は、奥にいるその部屋を眺め、無性に怯えてきた。
窮奇が勾陣を倒せたら、自分はどうしたらいいのだろうか。
一方、勾陣は安倍家の屋根に立って、近寄ってる大きな虎を見つめていた。
「はぁ...醜い。」
金髪を整い、勾陣の戦闘準備は完了した。
その矢束、すでにいっぱいに引き収めて、いつでも離れるみたい。
「キーン!」
虎の頭に矢が刺したとき、彼女は微笑んだ。
しかし、獣の匂いは消えなかった。
「夢瞬さん、なぜ我々はこの家を勾陣に任せたのか、知ってるの?」
夢瞬は太陰に頭を振る。
「十二天将の中には、吉将と凶将と分けているが、基本的には凶将の方が戦えるし、その中にも勾陣は格別だ。」
「うんうん、わかる。」
「しかし、人を救えなかった場合もあるんだ。そしていつも、一番悔しいのも勾陣だった。」
「...!だからお母さんは、勾陣をうちに置くのか?」
太陰は笑って頷いた。
「勾陣を毎晩任務に向かわせたら、きっと何度も自責するなろうから、代わりに、この家を任せたわけ。」
夢瞬は振り向き、勾陣がいる方角を見つめる。
「例え勾陣が負けたとしても、お母さんが目覚めるまで凌げる。」
「お供するよ。」
「また話せるなんてね、窮奇。」
「俺も、やっと復讐できる。」
窮奇は憎しみを含める目で、勾陣を睨んでる。
「安倍永望を寄越せ。」
「永望は渡さない。無論、ここも通さない。」
「安倍晴明は死んだんだ。お前らはその女に何を求めてる?」
「...」
「お前らはただ虚しさを埋めようとしたでは?その女の娘を守ることが一番の証拠だ。」
「...」
「安倍永望を寄越せ。そうすればお前らも自由になれる。」
「...」「自由になったりはさせないぞ!勾陣!」
急に現れた声は、両方の会話に飛び込む。
「女の子...?」「夢瞬さん!?」
「お母さんを渡せたら、絶対君を恨んで追って、死ぬまで君を追い詰めていくからな!勾陣はお母さんのために私を守っているのか?なら丁度!私だって自分のために君と話してるんだから、関係ない!今だって、私は自分のために君を引き留めていたんだ!」
大事な人を失いたくないだけなら、人を大事しなければいい。
でも私は、失わないように、足掻きたい。
「夢瞬さん、下がりなさい。」
勾陣は微笑んだ。
「暴れるから。」




