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もう一度失う  作者: 雨上がり
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三十歲目の無尽の夜

「夢瞬さーん…!」

「今なら、木の上にいるだろう」

天后は玄武の後ろから近付き、ゆっくりと話す。

「じゃああとで声をかけよう。太裳は夢瞬さんの着付けを終わらせたの?」

「うん。今はハーデースさんとサタンさんの接待を。」

「白虎もそこだね。僕も行くよ。」

玄武は、頭の上に乗っている小さな亀を地面に置いて、本殿に入った。

天后も、木の上をちらっと見たあとに、玄武について行った。


「騰蛇、ドリアはまだ?」

「あと少し…!はい!」

「ありがとう。次はスープね。」

騰蛇からドリアを受け取った貴人は、台所から出て、宴の会場に来た。

そこでは、賑やかに会話をしている神々がいた。

「青龍、朱雀が作るスイーツは?」

「見れば分かる、全然足りない。早く補充しろって言ったばっかりだ。」

「ふふ、程ほどにね。」

「わかった。」

青龍の顔を見る限り、貴人は自分の助言が効いたとはまったく思えない。

しかし、彼らの言い争いを眺めるのも、十二天将の趣味のひとつ。消えたら困る。

「そういえば、六合いないね。」

「彼ならあそこだろう、いつもそう。」

「でも今日は少し遅いね。」

「確かに…」


青龍が言う「あそこ」に、六合は静に夜景を眺めていた。

緩やかに舞い降りたもみじは、柔らかい月に照らされ、さらに美しく、そして妖しく見えた。

「六合。」

「夢瞬さん。うん?それは?」

六合は、夢瞬の頭に乗っている亀を指差して聞く。

「玄武が置いてくれた。木の上から降りたときについでに保護した。」

「なるほど。」

「何をしているの?」

「もみじを眺めている。」

「そう。」

風は優しく夢瞬を頬を掠り、彼女のもみじ色の髪を巻き上げた。

「…それは?」

「行ってくる。あぁ、朝顏だね。」

「朝顏…」

「枯れたけど、どうする?」

「花束だから、人間が置いていたものだろう。放っておこう。」

「この花はおそらく、あなたへのものかと。」

「私に?そういえば、秋分に晴明祭あるからね。」

「…はい。」

「どっかに飾ろうか。」

「はい!」


「六合。」

六合が振り向いたら、花瓶を持っている太陰がいた。

「その花束、飾るよね?」

「ありがとう。」

「夢瞬さんは?」

「客たちと話をしている。」

「それは、その人からの?」

「はい。」

「誕生日祝い?」

「のはず。ただ、夢瞬さんは…」

「避けたね。」

太陰は微笑んで、花を花瓶に飾った。

「わからなくなってしまうんだ。忘れたか、忘れたかふりをしているのか。」

「そんなに違うの?」

「違うよ。」

「六合なら、夢瞬さんがどっちの方がいいの?」

「忘れる方。」

「躊躇なしね。」

「夢瞬さんの喜びが、我々の喜び。そうだろう?」

「同意だな。」


「もみじ狩りね、風流だな。」

いつの間にかまた会場から出た夢瞬は、再び楓の木の上で、霊力で浮いていた。

「…!」

人間の気配。

「綺麗だな。」

本当だね。

「もみじは本当に、魅了されるほど美しいな。」

中途半端だからこそね。

「花のような色なのに、結局葉っぱだよな。」

人間っぽく見えるのに、結局ただの魂の私にそっくりだね。

「夢みたい。」

夢?

「正しいのように、間違っているように、現実と幻想の中に彷徨う。」

確かに、そうかもしれないね。

「それでも、一瞬だけの夢でも、俺にとってそれが俺の永遠だ。」

変な男。

「ハハハ、俺って変かな。」

うん。変だよ。

「それでも、君を忘れないんだ。夢瞬。」

忘れてくれ。

「だから、俺たちのことを忘れてくれ。」

…!

「君が、もう一度失わないように。」

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