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もう一度失う  作者: 雨上がり
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二十九命目の別れの夜

「式盤…?」

旭希を見た瞬間に、夢瞬はすべての記憶を取り戻した。

安倍晴明の後継者安倍夢瞬としての記憶を。

「安倍晴明様の時代で、占いに使うものだよね?」

「そう。」

「それは、永望を復活することと関係あるの?」

「…夢瞬、占いと予言の違いはなんだ?」

「…!占いには間違いの可能性があるが、予言は必ず叶うもの。」

「もし、未来と違った予言をした場合は?」

「…?それは…間違うことになるの?」

「間違った予言となるだろうね?しかし、君たちの力で、正しい予言にしてあげる。」

「正しい予言に?」

「つまり、未来を変えるんだ。」

「…!」

「詳しいやり方は、俺が教えてあげるよ。」

旭希は永望をゆっくり下ろし、音を立たないように立ち上げる。

絶対の占い。そのやり方を、彼は何度も聞かされた。

まるで運命のように、世界は旭希に、夢瞬の最後の希望を授けた。


「式盤は、円形の天盤と方形の地盤を組み合わせたもの。

「天盤の材料は楓人(ふうじん)、楓にできるコブ。

「そして地盤の材料は、雷に撃たれた棗の木。」

旭希は、地面に形を描きながら説明していた。

「今からそれらを集めるの?」

「ううん。絶対の占いには、直接な霊力根源が必要だ。この材料だけじゃダメだ。」

「だったら…?」

「そっちの子。土御門家の人か?」

夢瞬が本殿に入る前にすでに駆けつけた剎華は、驚きながらうなずいた。

「君が地盤の棗の木だ。その髪色が証なんだ。」

「…!」

「そして君は…藤原光兎だな?」

「はい…!」

「君が生まれた話なら聞いたことがあるけど、実際顔を見たことはないから、やっと会えたな。」

「僕も、あなたの話を聞いたことがあります。」

「そうか。君は雷の閃光を代表しているんだ。儀式の際には、土御門の子の隣に立っておくれ。」


「そして私が、天盤の楓だな。」

夢瞬は真面目な目線で旭希を見つめる。

「そう。でも、君たちだけじゃ足りない。」

旭希は、隣に立っている神々を見た。

「皆さん、手順を知っていると思うので、十二月将が天盤、十二天将が地盤でお願いします。」

命令された神々はすぐに返事するのではなく、あの二人に目線を送った。

「藤原さんの言った通りにお願いします。」

「旭希に従って。」

「はい。」

神々の了承を得た上で、絶対の占いの儀式も正式に準備し始めた。


「夢瞬。」

「うん?」

「次は、永望に与える天命を決めないと。」

「制限はあるの?」

「ある。まずは、今日の日付に関わること。」

「今日は二月二十九日だね。」

「だね。次は、占い師の歳に関わること。君は今何歳?」

「二十八。」

「数え年は二十九だな。最後に、占いに参加した人数に関わること。これはまぁ、調整できるんだ。」

「つまり、永望に二十九年しか与えないのか?」

「いや。」

旭希は微笑んだ。

「集めた数だけ、倍増できるんだ。」

「ってことは、八十七年だな。もう充分だ。」

「わかった。残りの二人を選びに行ってくる。」

「誰でもいいわけじゃないの?」

「例えば、北斗なら七人か九人、揃わないと意味ないからね。」

「そうか。」

夢瞬は旭希を見送った後、本殿に眠っている永望を見守っていた。


いくつの準備の末に、儀式は始まった。

人々は式盤の位置通りに立ち、人数を埋めるための旭希と夢九は、夢瞬の側にいた。

そして、儀式の真ん中に立っている夢瞬は、太裳が着付けさせた正式な服を身に纒い、旭希から教わった呪いを唱えた。

なぜか、この時の夢瞬の頭には、永望との無数の思い出が浮かべた。

「…!」

彼女が幼い永望を見守る記憶も、幼い彼女を見守る永望の記憶もあった。

「…ありがとう。」

夢瞬は天地にお礼を呟いた。

思い出が浮かべた理由がわかったから。

今後の彼女は、もう永望と同じ思い出を作ることができなくなったから。


そう遠くない夢瞬の背中を見て、旭希はいよいよ笑顔を下げた。

この儀式が終わったあと、もう彼女に会えなくなるとわかったから。

安倍夢瞬は、夢みたいに一瞬だけ世界に生まれ、そして速やかに去っていく。

そして安倍永望は永遠の希望となり、世界に生き、いつか死を迎えるまで。

彼は、安倍夢瞬と一緒に「そっち側」にいけないが、彼女を忘れることもできない。

「…!」

夢瞬が最後の呪いを唱え始めたとき、旭希は唇をきつく結ぶ。

危うく、本当の願いを口にしないように。

叶っては、いけない願いを。


…?

ここはどこ?

もう夜だね。

「永望…!」

「お父さん。」

私を抱き締めてくれたのは、一人で私を育ていたお父さん。

彼の後ろに立っているのは、お父さんの親戚の光兎さん。

剎華さん泣いている?

きっと、遊び疲れて寝ちゃって、心配させたんだろう。

「ごめん…」

「バカ、何に謝っているの?」

「夢を…見た。」

「夢?」

「うん。」

永望は目を閉じ、父に伝えたくないみたい。

なぜなら、それは母がいる夢だから。

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