二十六聖の恐れの夜
「待ってください!どうして夢瞬を否定するのですか?」
光兎は夢瞬の前に立ち、二十六聖人に向かって叫ぶ。
「彼女が求めている未来が、正しくない未来だからです。」
「どういう意味ですか?」
「安倍夢瞬さん、あなたは恐らく、すべての力を一人に集めたいと考えているのでしょう。」
夢瞬はうつむき、少し頷いた。
「集権しなければならない、なんてことはございません。あなたが選んだ道は間違っています。」
「君たちが決めるようなことじゃありません!」
光兎は怒りをただぶつかる。
「そこまでしなくてもいいなら、夢瞬だってこの道を選ぶはずがないのに!」
「光兎、十二月将の力を奪ってこい。」
父にそう言われたとき、光兎は理解できなかった。
「どうしてですか?」
「すべての力が安倍家に集まっている現状を破らなきゃ。」
「土御門家も力を持っているはずですが?」
「彼らは安倍家の分家、結局安倍家に従うんだろう。」
「しかし…どうして…」
「なんだ?」
「どうして安倍家が力を持ってはいけないの?安倍様、そんなにすごい人でしたら大人…!」
「お前はバカか!」
光兎の頬っぺが熱くなると同時に、彼の心が冷たくなった。
「安倍家の権力がこれ以上広がったら、俺ら藤原家がどうなるのか、考えてみればわかるだろう?」
安倍家って、そんなにヤバい家族なのか。
あの安倍様は、それ以上の力を求めているのか。
集権じゃ、ダメなのか。
「ごめんね、光兎。」
父の部屋から出てきた光兎は、庭に散歩していた。
そこで、彼の三個上のいとこに会った。
「どうして謝る?」
「私の力不足で、君があんな風に言われることになったから。」
「聞いたの。」
「うん。」
光兎は夜空を見上げ、明るい月を眺める。
それだけで、落ち着ける。
「どうして…どうして安倍家が力を持ってはいけないの?」
「だって、怖いじゃない。」
「怖い…?」
「天将が万物、月将が時間、北斗が道標、すばるが美しさ、太陽系がこの文明の背景。」
「うん。」
「もしそれら全部を掌握できる人が現れたら、それはとても怖いことだと思う。」
「怒らせたら終わりみたいな…?」
「そんなところかな。」
「しかし…!」
「それに、こっち側だけじゃないよ?」
「どういう…こと?」
「夢瞬は、怖がる人や嫌がる人がいることを知りながら、自分の答えを探しているんです!」
「光兎…」
夢瞬は光兎を見つめ、その言葉に感動された。
「人々は、罰されることを恐れています。だからこそ、夢瞬がすべてのひいきや偏見を捨てようとしています。
「その道の苦しさを知っているからこそ、一人になろうとしています。
「苦しんでいるのは、我々だけではありません。夢瞬だって、残酷な事実に向き合わなければならなくて、苦しんでいます!
「どうしてすべての過ちを夢瞬のせいにします?どうして彼女の覚悟を否定します?
「この子は、人々のために数えきれない悔しさを耐えてきたのに、どうしてこんな風に否定されなければならないのです!」
「私も、あなたたちの行動に反対します。」
剎華は冷たく言い出す。
「夢瞬がこの道を選んだのなら、私も彼女を全力で支えます。
「彼女を邪魔する者は全員、私の敵です。」
土御門家の一員である以上、君は永遠に安倍家の僕。
生きている以上、永遠に安倍家のために身を捧げ。
それが君の定め、君の使命。
「はい。母上。」
高貴な着飾りと、艶やかな簪。
しかし、この家族でどんなに高い地位を得たとしても、安倍家の僕に過ぎない。
それが宿命。
「剎華さま…!」
「どうして!どうしてそんな!」
「それは…」
剎華に報告した女官も、きっと彼女の反応を予想できなかっただろう。
女官に、安倍家の令嬢について訪ねたのが、剎華自身なのに。
「どうして彼女は力を持たない…!」
奉仕する価値や、主の弱さなど、剎華は気にしていなかった。
年が近い故か、剎華はただ悲しんでいる。
「剎華さま…!涙が…?」
「だって、あの安倍夢瞬が…!」
あんな家族に生まれ、あんな血縁を持つ。
あの人の後継者なのに、微塵の力もないただの凡人。
それは、どれほど苦しいことでしょう。
「母上。」
もし、安倍家のために身を捧ぐのが、私の定めであれば。
「不躾なお願いがあります。」
だったら、私が守るべき存在は、あの人しかない。
「私は、今まで私が得た知識や力を」
こんなにも弱く、こんなにも強い方。
そんなあなたの苦痛を、私が身代わり受けるとしよう。
あなたが、私の宿命。
「ただ一人、安倍夢瞬さまのために使います。」




