二十六聖の守りの朝
「晴明神社?」
「はい。」
「彼女…よく晴明神社に通うの?」
「はい。特に用事がない夜なら、いつもそこに行く。」
「そう…」
永望は、一体何のために晴明神社に行くのだろう。
夢瞬はどう考えても、安倍の血縁の関係しか思い付かない。
「そこに行こう。」
「夢瞬ちゃん。」
サタンは急に呼び掛けた。
「…?」
「安倍永望と安倍夢瞬の運命は深く繋がっている。彼女を救うには、君しかできないことがある。」
「わかっています。」
「しかし、現状を戻りたいだけじゃ、ただのやり直すに過ぎない。」
「…はい。考えがあります。」
夢瞬は笑って、サタンにお礼を言った。
そして、光兎と剎華、そして月将、北斗七星、夢九たちと一緒に、十二天将に別れをつけ、晴明神社の鳥居前に戻った。
「六合。」
「…」
「六合!」
六合は不満そうに振り向き、後ろにいる青龍を睨む。
「なんだ?」
「どんなことがあっても、夢瞬さんの側にいると誓ったのでは?」
「だったらなに。」
「だったら、どうして彼女の側にいてあげない?」
「…夢瞬さんが望んでいることは、僕たちが改めてこの絆の意味を考えることではないか?」
「どういう意味?」
「僕たちは最初、安倍晴明の後継者を見守っているだけだった。しかし、これからも彼女の側にいたいのなら、彼女との信頼関係を結ばなけえれば。」
「…だから、そのつもりなんだけど?」
「本人が気付けないとね。」
六合は苦笑いをした。
一方、双児宮傳送の力で、夢瞬と光兎、剎華たちは無事に安倍晴明の故居、晴明神社に戻った。
「最初はただ一条戻橋を借りたいだけだったのに、まさかここがゴールとは。」
「そうだね。彼女が、こんなに近くにいるとは。」
「しかし光兎、どうして神社内に転送しないの?」
「それは僕にもわからない…」
「他の力に邪魔されました。」
傳送は冷たく言い出す。
「本殿に転送しようとしたが、邪魔されました。晴明神社のどこにでも転送できませんでした。」
「何だと…?磨羯。」
「光兎さま。」
「邪魔している存在を調べてください。」
「はい。」
磨羯宮の大吉は頷き、処女宮の太乙と、金牛宮の從魁と一緒に去った。
「光兎。」
「大丈夫。多分だけど、僕たちが安倍様の居場所を見つけたことが、天の理に気付かれたから、こうして邪魔されているのだろう。」
「…一つ、聞いてもいいかな。」
「何を?」
「安倍永望は、その力の強さの故に、自然現象のように恐れられていると、そう言ったよね?」
「うん。」
「もし…もし私があんな風になったら、君は今のように私と接してくれる、寄り添ってくれるのか?」
光兎は少し驚いたが、夢瞬と目が合った瞬間に、彼女の真剣さを感じた。
「これは、君にとってとても大事なことだな?」
「うん。」
「…君と知り合わなかったら、怖くて声かけなかったんだろう。」
「うん。」
「でも、今なら、変わらないよ。」
「剎華は?剎華も側にいてくれる?」
夢瞬は剎華を見て、そして後者は微笑んだ。
「夢瞬に力がいてもいなくても、強くても弱くても、君が私の一番大事な人だよ。」
「…!ありがとう。」
今になって、夢瞬はやっと初めて本当の笑顔を見せた。
「光兎さま、見つけました。」
磨羯宮の大吉の声が出たと同時に、三人もすぐに対戦状態に戻った。
「誰ですか?」
「相手の動機はまだ不明ですが、身分ならわかりました。」
「教えてください。」
「二十六聖人について、ご存知でしょうか?」
「…豐臣秀吉による犠牲者、でしょうか?」
「はい。当時の豐臣秀吉はキリスト教を邪教だと判断し、二十六人のキリスト教徒を処刑しました。
「彼らの遺体は保留され、そして聖人として愛され、二十六聖人となりました。」
磨羯宮は淡々と述べた。
「しかし、どうして彼らは僕たちを?」
「それは多分、私のせいだろう。」
「夢瞬?」
「私がやろうとしていることは、ある意味で、あの惨事と同様だから。」
夢瞬はうつむいて、少し後悔しているらしい。
しかし、彼女がもう一度見上げたとき、悔しさがすでに隠された。
「それでも、私は立ち止まらない。これは私がやるべきこと、乗り越えなければならない困難。」
「安倍夢瞬さん、その意志、しっかりと伝わりました。」
三人は振り向き、晴明神社の入り口に、いつの間に現れた二十六人を見る。
「二十六聖人…?」
「その通りです。先ほど安倍さんの言葉を、本音だと考えてもよいのでしょうか?」
「ええ。」
「でしたら…」
聖人たちは一列に並び、晴明神社の入り口を防いだ。
「…私たちは、あなたたちを止めます。」




