表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度失う  作者: 雨上がり
50/61

二十五銀目の輝きの朝

「サタンさん。」

夢瞬は振り向き、サタンの方を見る

「…わかった。話したいことは?」

「まずは、夢九のことです。」

「夢九?その九生の化け猫か?どうした?」

「彼女は私のペットで、友達です。返してもらってもいいんでしょうか?」

「返す、なるほど。それはダメ。」

サタンは速やかに答えた。

「その化け猫は、君と同時に死ぬはずだったが、十の災いの被害者になってしまった。

「だからといって、それも彼女の天命だから、君のために変更することはできない。」


サタンの後ろに立っている夢九は、夢瞬のことをずっと見つめていた。

今の彼女には、余計な思いがない。

死ぬ瞬間に、すべての記憶が消されたはずだったから。

しかし、目の前にいるその女性のことを、彼女は少し哀れ…というより、その思いに共鳴してしまった。


「どうして…?」

夢瞬は驚いて、サタンの後ろにいる、声を出した夢九の方を見る。

「夢九?」

「この夢九という存在は、あなたにとってそんなに大事なのでしょうか。歴史を変えたいと思えるほどでしょうか。」

「夢九は、私にとってとても大事な存在です。」

どうして…か。

夢瞬は少し微笑んだ。今までの彼女は、一度でも深く考えたことはなかった。

迷わずに誰かのことを大事だと言える、考えずにそう断言できるのは、どれだけ素敵な夢だろうか。

少なくとも、過去の夢瞬にとって、それはただの夢だった。


「それが安倍夢瞬小姐か…!」

「永望様に似ているが…」

「あぁ、霊力の差が大きすぎる。」

永望が真っ暗な夜なら、夢瞬が明るい朝方。

永望が希望なら、夢瞬が届かない夢の世界。

永望が永遠なら、夢瞬が…

「一瞬の虚しさ。」

夢瞬は目の前の人々を見て、未練もないように外へ行った。

相変わらずの朝。

安倍夢瞬は、一度でも、夜を眺めることがなかった。

できなかった。


「…?」

遠いところに、騒いでいる人たちがいた。

しかし、通りかかる人々は、彼らと目を合わせないようにしている。

いつも喧嘩している二人。

冷静に見えるのに、炎のような彼のせいで、いつも暴走している人。

「…」

夢瞬は微笑んだ。

人と言う友達や、家族は、きっとあんな風にだろう。

自分と違う。

父の身分も知らず、母と会えることすら難しく。

側に、家族がいない自分と、違う。

「…おはよう。」

一人の女性は微笑んで、夢瞬の隣に来た。

「…?」

「初めまして、夢瞬さん。十二天将の太裳です。」

「十二天將…?太裳…?」

「ええ。そこにいる人たちが、安倍永望の式神、十二天將。」

「なるほど。」

「太裳は私の名前。そう呼んでくれると嬉しい。」

「わかった。」


「夢瞬さんは、その人間たちと話をしないの?」

「いつも母の方がすごいって言われるもん。」

「永望すごいからね。」

「私もそう思うけど。」

夢瞬は無表情に言う。

「しかし、側にいてくれないのなら、どんなにすごいでも。」

「夢瞬さん…」

「どうして私は朝でしか活動できないの?力がないっていうのに、凡人みたいに夜でも活動できるはずでは?」

「その通り。あなたの判断力は、相変わらず素晴らしい。」

「そう?」

「幼すぎて、覚えていないかもしれないが。」

「そうかも。」

「夢瞬さんは、本当になんの力もないんだ。」

太裳は微笑んだ。

「だからか、吸血鬼のルールですら、真逆に作動してしまう。」

「しかし…」

「それが、世界の答えのかもしれない。あなたと永望が一緒にいられないように。」

「それはなんのため…!」

夢瞬を見ている太裳の真剣な顔が、夢瞬を夢中にさせた。

「距離は、失う錯覚をもたらし、本当の失いに繋ぐのさ。」


「今、夢九が私の目の前にいる。」

夢瞬は真剣に言う。

「夢九と安倍永望が消えたあと、私は、君たちに二度と会えなくなったと思った。

「しかし私は間違った。

「君がここにいる、私の目の前にいる。

「見えないふりをして、もう一度君を失うなんてことはできない!

「これ以上失わない。

「距離が遠いだからって、失ったわけじゃない。

「夢九の心だってきっと、隠されただけで、消えたわけじゃない。」

距離は、失う錯覚をもたらし、本当の失いに繋ぐ。

しかし、だからこそ、失わないように、距離を縮める。

別れても大丈夫な絆を築くために、一体どれほどの勇気がいるだろう。

「サタンさん、復活させるなんて言いません。せめて、輪廻に入らせ、生まれ変わらせても?」

「…はぁ。近道を見つける才能か。」

サタンは苦笑いして言う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ