二十四人目の集りの夜
「もう決めたのなら、これ以上止めないよ。」
サタンは目線を、夢瞬の後ろにいる人たちに向ける。
「久しぶりじゃないの、話しない?」
「その前にまず、あなたに聞きたいことがあります。」
夢瞬はサタンを真剣な目で見つめる。
しかし、それに対して、サタンはただ微笑んだ。
「君が何を悩んでいるのか、心配しているのかはわかる。
「しかし、失いたくないものすら掴まないのなら、失ってから心を痛むのはまたなぜだろう。
「心が決めたのなら、なおさらこの時間を大事にしなさい。」
サタンの言葉に気付かされた夢瞬は振り向いた。
「お久しぶり。十二天将。」
「…」
六合と、成人式に出た四人以外の天将たちは、悔しそうな顔をした。
「勾陣、そんな感情的な人じゃないでしょ?
「貴人、永望のために最後まで頑張ってくれたんだね。ありがとう。
「騰蛇、私はまた君と朱雀が作った料理が食べたいのよ。
「天后、私の友達を助けてあげて、ありがとう。君のおかげで、私はここまで来れた。
「天空、あのね、白羊宮を見る度に、いつも君の言葉を思い出すんだ。
「太陰、北斗七星の開陽に出会ったとき、私のために距離を置いた君のことを思い出したよ。
「そして太裳、成人式は手伝ってもらえなかったから、来年はよろしくね。」
夢瞬は笑って、天将たちの顔を一人ずつ見つめていた。
そんな笑顔を見た天将たちはかなり驚いた。
「夢瞬さん…」
六合は微笑んだ。いつも彼女の側にいる彼だからこそ、彼女の変化をよく知っていた。
まるで運命のように、天将たちに触れることで、冷たかった夢瞬が少しずつ暖かくなった。
「さっきの話、聞いたよね。」
夢瞬は俯いて、少し恥ずかしそうに話す。
「この残酷で無意味な循環を終わりにしようと思う。だから私は灰色に、もみじ色に、神になる。
「そのためなら、過去への未練を全部捨てなければならない。君たちのことも。
「いつも迷惑をかけているけど、改めて、正式にお願いしたい。
「十二天将の貴人、天后、太陰、玄武、太裳、白虎、天空、騰蛇、朱雀、六合、勾陣、青龍。
「安倍家を手放し、十二天将の生活に戻り、自分の人生を選びなさい。
「安倍晴明様を大事にしているかもしれないが、彼はすでにこの世にいなかった。
「僭越ながら、私が代わりに、君たちを自由にしてあげる。」
「十二天将か?なかなか元気な若者たちではないか。」
かつて、彼は彼らにそう言った。
それは、彼が初めて高級式神を召喚する際に、天の理が彼に与えた答えだった。
「天将って、天地の理を守っている存在だな。」
「はい。」
十二天将の代表として、貴人は無表情に答えた。
「なら、もし俺がその理を破ろうとしたら、君たちはどうする?」
「さすがにそれには協力できない。」
「…じゃあ使えないな。」
彼は笑った。
「君たちが俺のために理を破れるようになるまで、俺たちは主僕な関係ではないんだな。」
「しかし…主僕な関係ではないのなら、私たちも君の側にいるつもりはない。」
「未来の犯罪者を見張るとでも思ったら、貴人さん。」
「…!」
貴人はかなり動揺した。
自分の名前が呼ばれたことではなく、彼のその、まるで未来を知っている態度に惹かれた。
「今まで、私たちの主になった人間って、一人すらいなかったが。」
「俺が、最初の人になろう。」
「夢瞬さん。」
貴人は穏やかな口調で言う。
「最初の頃、晴明はこうして私たちを誘った。平安京を一緒に守ろうと。」
「はい。」
「晴明にとって、大事なのは王室でも、都でも、家族でもない。」
「はい。」
「晴明にとって本当に大事なもの、知ってる?」
「本当に大事なもの…」
「それに答えれないのなら、私たちもあなたの願いに答えることができばい。」
わかっているはずなのに。
六合が夢瞬と一緒に地獄へ行ったとき、みんなで夢瞬を心配した瞬間に、すでにわかってしまったはず。
彼女が、この十二人にとっての、唯一無二。
しかし、一度失ったその痛みを思うと、恐れてしまうんだ。
もう一度失うこと。
安倍晴明にとって、本当に大事なものはなんだろう。
夢瞬は目を閉じ、自分が晴明だと想像する。
天将たちと、妻も子供も、陰陽寮の寮生たちもいる。
しかし、それらは本当に大事なのか?
夢瞬は自分のことを見直す。
天将たちと、永望も、光兔も剎華も夢九もいる。
しかし、それらは本当に大事なのか?
自分はなんのために、この道を選んだのか?
「…大事なものがないからこそ、ひいきせずな神になれる。」
夢瞬は穏やかな口調で言う。
「安倍晴明様にとって本当に大事なのは、まさに大事なものがないという事実。」
貴人の瞳から、憂いが見える。
自分が間違ったと、夢瞬は一瞬そう思ったが。
「…正解。」




