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もう一度失う  作者: 雨上がり
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二十四人目の帰りの朝

「もう、決めたんだね。」

サタンは微笑んだ。

「はい。」

夢瞬は真剣な顔をして、うなずいた。


神のような人たちの側に育てられた、女の子がいた。

彼女は、人々から離れ、一人暮らしている彼女を一番近くて見ていた。

しかし、一人な彼女は、孤独ではなかった。

信頼できる仲間たちが彼女の側にいるから。

その女の子の小さな心の中に、いつの間にか大きな夢が芽生えた。


しかし、彼女の夢は、彼女が事実に悟ったときから崩れ始めた。

流すことすら忘れた涙。見えるのに見えないふりをした傷の痛み。

彼女の目に映るそのすべてが、一挙手一投足が苦しかった。

なのに、その女の子が彼女に訪ねるたびに、彼女はいつも微笑んでそう答えた。

「大丈夫。これが私の定めだから。」

女の子にとって、彼女が一番大切な人だった。

だから、彼女の夢は変わり始めた。

世界を変えたい。無力な彼女を縛る世界を変えたい。


「その女の子は、彼女への執着を捨てきれなかったから、神にはなれなかったでしょう。」

「しかし、彼女も、その女の子への執念の故に、ひいきを手放せなかった。」

サタンは夢瞬を見つめ、そして語る。

「あなたはこう言いました。私からミカエルの気配を感じたと。しかし、それは違うんだと思います。」

「どうして?」

「黒と白から選ぶのなら、私は灰色を選ぶのでしょう。」

サタンはビックリしたように、そしてフッと笑った。

「灰色…赤と橙から、もみじ色を選ぶみたいに?」

「その通りです。」

夢瞬は笑った。

「…ミカエルなら、白を選ぶだろう。」

「恐らく、純白です。」

「そうだな。そして俺は漆黒だろう。」

サタンは、笑顔を確信、真剣な顔をした。

「灰色の道を選ぶのか?」

「はい。」


永望が消えたあの日以来、夢瞬の中にはひとつ、ぼやけた記憶がいた。

永望も、あの暖かさもいたような、幸せな記憶だった。

その記憶を見ることができないが、夢瞬にはわかる。

十二天将たちもいた。

今までのように、優しく微笑んで、彼女の側にいてくれた。


「…!」

夢瞬は微笑んだ。

彼女の後ろから、無数の懐かしい気配がいた。

長い間彼女を見守っていたその十二人はやっと、彼女の側に帰ってきた。

彼らとの出会いも、話した言葉も、ぼやけても鮮明に、夢瞬の中に残っている。

そして、まだ少し距離感がある、それでもずっと彼女を守ってくれたあの十二人も。

少年から聞いた、彼らと晴明の話。

信じてもらえないと思ったこともあったが、少しずつ、距離が縮まった。

頼ってみて、慣れてみて、思いやってみて、悩みを解決してみようとした。

もちろん、大切な友人たちも。

もみじに舞い降りた月光のように、少年はいつも夢瞬に真新しい知識と世界を教えてあげた。いつも、怖くて踏み出せない彼女を導いてあげた。

そして、誰よりも夢瞬を大事にしている少女。六年間ずっと自分を探してくれた彼女を思うと、夢瞬は思わず微笑んだ。

「本当に、幸せすぎます。」

「どうして?」

「本来なら、ひとひらのもみじな私は、赤くなり朽ちていき、この世界から離れるのが定めでした。」

「ふむ。」

「しかし、空や夜、月も、棗も、朝日を待つ希望もいた。」

当たり前だと思っていたことは、いつも失ってからその尊さを知った。

しかし、取り戻せないことは、心を刻むほどの傷を残すしかできなかった。

失うことに怯えている女の子も、怯えているからこそ手を伸ばした女の子も、もうどこにもいないんだ。


「サタンさん、私は決めました。灰色に、もみじき、区別できない存在となります。」

驚いた天将たちを感じて、夢瞬はただ微笑んだ。

同じ約束をした女性がいたと、知っているから。

「ひいきできないのが神だと言うのであれば、私は自分のひいきも好き嫌いもすべて捨て、一番純粋な自分になります。」

「それは、どんな好き嫌いなのか?」

「十二天将たちも、月将たちも、光兎も剎華も好きです。そして、安倍永望も、あの暖かさも、私自身も好きです。」

「それを全部捨てると言うのか?」

夢瞬は笑った。試されているとわかっている。

人間の欲望や下心が煽られている。

「好きな気持ちや嫌いな気持ちを捨てるのは、とても難しいと思います。

「しかし、極端を求めているからこそ引き起こした悲劇は、もう有り余っています。

「サタンさん自身も、そうではありませんか?

「これ以上、大好きな人たちに怪我をさせたくありませんし、苦しまれるのも嫌です。そのためには…これが私の最善です。」

彼女と、彼女のために泣いている人々を見て、サタンは目を閉じた。




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