十九本目の火炎の朝
「そういえば夢瞬、イスラム教の地獄って知ってるの?」
「…知らない。」
「ほーら。まったく、次はちゃんと考えてから行動してよ。」
「藤原家の少年に同意する。」
「光兎!六合!」
夢瞬は二人を睨み、自らスピードを落とした。
白くて、ふわふわな猫さんの隣に。
「白虎なら知ってるよね?教えてくれる?」
「もちろん。イスラム教の地獄、ジャハンナムは炎の地獄。すなわち、炎で処刑する。」
「ふむふむ。」
「処刑を担当するのは炎の神。そして地獄を管理しているのは、十九人の天使。」
「平等王さんのアドバイスって、その天使たちに聞きに行くってことだよね。」
「その通り。」
「そういえば、イスラム教の地獄でも十八層いるの?」
「いいえ、七層だけ。」
「少ないというか…?」
「分類の方法が違うだけ。罪を犯した人が地獄に落ちる、これはどこでも同じだよ。」
「なるほど。白虎は中国文化の地獄で働いているの?」
「はい。地獄っていうより、陰陽の境界線だけどね。僕は元々中国の人々の想像により生まれた神なので、そこで働いている。」
「へぇ…!」
白虎は微笑んで、道の先を見据える。
「まだまだ長いね。」
「ところで白虎、どうして急に来てくれたの?」
「先ほど皆さんが通りかかったとき、僕は一応見かけたんだけど、あなたに会っていいのかどうかが分からなくて、仕事を続けることにした。」
「うん。」
「それで天罡が来て、藤原家の少年が呼んでいると。」
「天罡…?」
「あぁ、夢瞬さんは十二月将の本名が知らないだっけ。天秤宮の本名なんだ。」
「なるほど。つまり、光兎の命令で、天秤宮が白虎を連れてきたの?」
「はい。ただ、仕事も大事なので、天罡に手伝ってもらった。」
「天秤宮も同じ仕事をしているもんね。」
「はい。」
夢瞬は、その振り向かないように必死な背中を見て、ため息を漏らす。
「光兎。」
「…後悔させたくないから。」
「わかってる。ありがとう。」
自分のことだから、夢瞬は誰よりも自分の感情を知っている。
しかし、直面できないのもまた、事実。
「そうだ白虎、十二月将に詳しいでしょ?」
「はい…?」
「あの人たちに、光兎にも聞けない問題があるんだけど。」
「六合にも聞けないの?」
「私を心配しすぎている光兎がいるから、聞けないの。」
白虎は思わず微笑んだ。
あの自分を感情を隠した夢瞬も、心配されることの文句を言えるようになったなんて。
「夢瞬さんは何が聞きたいの?」
「十二星座ってあの…屬性?とかあるよね。」
「風、火、水、土のエレメント?」
「そう。で、十二天将もあるよね?白虎と太陰が金将で、六合と青龍が木将のように。」
「対応しているのか、ということでしょうか。」
「そう。」
「まったく対応していないよ。十二月将にも五行の属性があるけど、エレメントとは関係ないんだ。」
「そうなんだ。」
「例えば、宝瓶宮のエレメントは?」
「風。」
「その通り。しかし彼女…神後は同時に水将でもあるんだ。」
「…!全然違うんだね!」
「夢瞬さんの知っている通り、僕たちは四季を管理している。」
「知ってる。天后と玄武が冬で、白虎と太陰が秋を管理しているよね?」
「その通り。そして、十二月将も似たような仕事がある。例えば神後が管理している冬至までの冬、それも玄武の管理範囲内なんだ。」
「白虎なら、夏至後の秋だから…」
「傳送。」
「双児宮!」
「そう。天罡なら、春分を管理しているので、勾陣の役割だね。」
「あの二人か…似ているか…似ていないか…」
「普通なら似ていると思うよ。同じ時間を代表するので。」
「宝瓶宮と玄武も、やんちゃなところがあるよね。」
「ふふ、確かに。」
「六合は誰と?」
「太衝、つまり天蝎宮。」
「似てる…!」
夢瞬と白虎は同時に言い出し、そして笑いあった。
「僕は…本当は、六合が羨ましいと思った。」
「うん?なんで?」
「彼は永望に約束したんだ、彼女の代わりにあなたを守ると。」
「…!」
「永望が消えたあと、僕たちもどうすればいいのかが分からなくなって、結局バラバラになった。」
「うん。」
「でも六合だけは約束を守って、ずっとあなたを見守っていた。」
「…白虎、あなたたちの迷いの理由がわかる。だからこそ、声をかけないようにと考えた。」
「はい。」
「しかし今、あなたが私の目の前にいる、私と話をしている。これ以上、知らない振りをしてはいけないと思う。」
「…!」
「これからの道を、一緒に歩いてくれないか?」
同じ言葉を言った女性がいた。
それは、十二天将を集め、安倍晴明の後継者になろうとしている女性だった。
「はい。」
白虎は微笑んで、当時と同じ答えを言い出す。




