十八層目の直前の朝
「そういえば...ハーデースさんが言った平等王って誰?」
「何も知らずに降りてきたのか..!」
光兎は思わずつっこんだ。
「地獄には十人の裁判官がいて、それぞれ違った仕事を担っている。」
「うむうむ。」
「十八層地獄って言っても、諸説がある。僕が聞いたのは、八熱地獄と八寒地獄、そして近辺と孤独地獄。」
「へぇ...!」
「ハーデースさんが言うところの平等王さんは、最大の地獄、阿鼻地獄を管理している方。」
「でも...?」
「今回我々の目的は彼の仕事内容ではなく、彼の部下目連だな。彼は冤罪の魂を見つけ出し、平等王に改めて審判してもらうんだ。」
「ふむ。」
「目連さんは各地獄内に歩き回るので、安倍様を探してくれると思う。」
「なるほど...!」
「夢瞬さん。平等王に訪ねる前に、まずは第五層の裁判官に会っておきましょう。」
「どうして?」
「彼が閻魔王、裁判官の頭なので。」
「閻魔王…毎年誕生日に来てくれる閻魔さん?」
「その通り。」
「...わかった。六合、案内してくれ。」
「了解した。」
六合の案内で、夢瞬と光兎、そして十三月将たちは閻魔王殿の前に到着した。
「安倍晴明の後継者が来る場所ではないが?」
殿堂の一番奥に座っている閻魔王は、ゆっくりと顔を上げ、夢瞬を見つめる。
「ご無沙汰しております。」
「少し大人っぽく見えるようになったな。」
「ありがとうございます。」
「地獄に降りて、何を求めてる?」
「同じく安倍晴明の子孫である安倍永望を探すために来ました。」
「...見つけたらどうする。先に言っておくが、死者を簡単に連れ出させはいしないよ。」
「冤罪の魂を見つけ出し、平等王さんに裁判してもらう目連という方がいるとお聞きしましたが。」
「それがどうした?」
「安倍永望に訪れたのは、彼女の終わりではなかった。目連さんに探してもらうが、すべては平等王の裁判に従うまで。」
「...若いのに、若さがない子供だな。地獄の規則を破るつもりがないなら、旧知の晴明の顔に免じて、少し力添えをしてあげようか。」
閻魔王の微笑みのあとに、夢瞬と光兎は急に大きな違和感を感じた。
「これは...?」
「人類の一生は、あまりにも短いからな。」
「まさか...!」
「そんな体じゃ、十八層についた途端に消えてしまうんだろう。加速している時間を止めてあげることはできるが、願いを叶えるのは、あなたたちの努力次第だ。」
「承知しました...!」
夢瞬が振り向いて、殿堂から出ようとしたが、光兎はまだ閻魔王を見つめていた。
「...どうした?」
「藤原家の藤原光兎と申します。この度は夢瞬の願いを叶えるために一緒に来ましたが、閻魔王さんにひとつお聞きしたいことがあります。」
「言ってみろ。」
「藤原家に、高い霊力を持つ男性が現れたこと、ご存知でしょうか?」
「知ってる。」
「...!彼の名前を教えていただけませんか?」
「藤原旭希。」
「彼は...まだ生きていますか?」
「いいえ、彼はすでに死んだ。あなたが七歳になった年に。」
「...!」
絶望な顔をしている光兎を見て、夢瞬は何も言ってあげることができなかった。
彼から一度でもこの話を聞いてなかった。
「藤原旭希は藤原家の珍しい才能を持つ者として、長く生きるべきだったが、ただ...」
「ただ...?」
「ただ、彼は安倍家に関わってしまった。」
「...!」
光兎はすぐ夢瞬の方を見たが、夢瞬は頭を振って、知らないと示した。
藤原旭希という名前、彼女にも初耳だった。
「閻魔王さん、僕も安倍家に関わり続ければ、同じように...?」
「それはどうかな。あなたの運命だから、詳しくはは言えないかな。」
「...」
光兎は下を向いて、少し考えた。
「それでも、安倍夢瞬の隣にいたいです。」
「そう?残念だな。」
閻魔王の殿堂から出て、彼らは平等王の殿堂に向かっていた。
しかし途中に、長い列に出会って、少し立ち止まった。
「天秤宮、あれは...?」
「五道転輪王の殿堂に向かっている列ですね。そこで輪廻に再び入ります」
「へぇ...!」
「列の一番先には、六道輪廻が待っています。そして、働いている誰かがいます。」
「誰かが...?」
「それは、六合さんの方がわかっているのではないでしょうか?」
天秤は六合に向かって、少しからかった。
「...夢瞬さんに気付かせたくないのに。」
「逃げ続けてもダメだよ、十二天将。」
「六合。天秤宮が言ってるのは誰?十二天将の人?」
「...病気と葬式を管理している、白虎のことだ。」




