十七年目の到来の朝
「ハーデースさんは普段どこにいるの?」
夢瞬は六合と歩幅を合わせながら、天秤宮に質問する。
地獄の朝はいつも曇りの日で、日差しのない心地いい朝だった。
「死者を分類する場所ならすぐそこだが...」
「だが?」
「ハーデースさん結構忙しいので、話聞いてくれるかどうかはわかりません。」
「そういえば、彼とは誕生日パーティー以来だったね。」
あまり話しなかったが、光兎と彼の話をしたので、夢瞬には結構深い印象が残した。
秋の気配をしてる人だ。
当時ハーデースは、夢瞬のことをそう評価した。
「...神後。」
「うん?どうした?夢瞬さまに聞かれそうな場合で私の本名で呼ぶなんて、珍しいですね。」
「聞きたいことがあります。」
「...夢瞬さまの外見のことですか?」
「そう。」
光兎は、三歩先に歩いている夢瞬の背中を見つめた。
肩に触れる短髪は既に腰くらいに伸ばし、身長も六合の肩と同じくらいになった。
「夢瞬さまだけではなく、あなたもそうですよ。」
「...!そうですか?」
「夢瞬さまの成長に気付けるのも、変わらない我々天将や月将と比べてからでしょう。」
「つまり僕の身長も伸びた...?」
「精確に言うと、数年過ぎましたね。」
「それなのに全然感じませんが...?」
「それはそうでしょう。ここは地獄ですよ?お二人が三途川を渡った時点で、運命は既に加速し始めました。」
「六合、ひとつ聞いてもいい?」
「答える範囲内なら答える。」
「ふふ、わかった。いつぞや私に聞いたこと、覚えてる?」
「何年で起こったこと?」
「全部覚えてるの?」
「うん。」
「初めて食事中に君たちに声かけた日のこと。。」
「しかし、珍しいね。夢瞬さん、どうして急に私たちに声かけるの?」
「完全記憶か。」
「それがどうした?」
「当時答えたんだけど、その答え、嘘だってわかったんだよね?」
「うん。」
「私の本音すべて知ってたの?」
「僕だけじゃない。天将全員、あなたの本音を知っている。」
「だったら...安倍永望の本音とは一致してるの?」
六合は夢瞬をチラッと見たが、彼女はただ淡々でいた。
彼らを失ってからこそ、すべてを考える時間ができたのかもしれない。
「...瓜二つ。」
「えへへ、そうだと思った。」
「そうだ、六合、もうひとつ。」
「どうぞ。」
「私と光兎に何があった感じがする。」
「というと?」
「光兎身長伸びたし、私の髪もほら。」
「夢瞬さんは理由を何だと思う?」
「大きくなった気がするが、魔法かけられていないし。」
「...」
夢瞬の口調があまりにもかわいくて、六合はふと笑った。
そして笑った六合を見た夢瞬も一緒に笑った。
「地獄にかけられた魔法なんだ。」
「地獄...?」
「地獄という場所は、深く降りれば降りるほど、時間の流れも速くなるんだ。今のあなたなら、すでに二三年過ぎただろう。」
「二三年...!」
「失いすぎたか?」
「...」
六合の言葉の裏に気付き、夢瞬は微笑んだ。
「ずるい質問だね。これくらい平気だよ。」
「だろう?」
しばらく歩いたら、夢瞬たちはひとつ関所みたいなどころについた。
そこから先の道は二つに別れた。
果てのない向こうから続いてきた、人々が並ぶ長い列は、その関所に入っていた。
「ここがハーデースさんの家なの...!」
「夢瞬さん、僕たちが先に声をかけてくるのはどうでしょう?」
「それがいいと思うわ、六合。」
「磨羯、宝瓶。二人は六合と一緒に入ってください。」
「うん。」「わかりました。」
三人は関所に入り、光兎と夢瞬は他の月将と一緒に待っていた。
「さっき六合に聞いてみたんだけど、地獄に来たせいで、私たちはもう十七歳になったと。」
「そうか。それは不吉だな。」
「うん?なんで?何十九歳だと事故に遭いやすいという言い伝えなら聞いたことあるけど。」
「事故...それはおそらく、次の段階に入る寸前に恐怖と迷いを感じてしまい、特別な思い出を残したくなり、結局自分を危険に晒してしまったと思う。」
「じゃあ光兎が言いたいのは?」
「十七歳の方だ。十八歳になる寸前ではあるけど、日本において成人年齢は二十歳だから当てはまらない。」
「だね。」
「しかし、イタリアだったらやばい。そこでは、十七が結構不吉な数字らしい。」
光兎は言った。




