十五日目の揃いの朝
「夢瞬...!」
「光兎さま、ご心配なく。蛇夫宮が今夢瞬さまの隣にいます。」
「蛇夫宮か...!」
光兎は深く気を吐いた。ここで夢瞬に死なせたら、自分を許せなくなるだろう。
「しかし天罡、こいつら一体...?」
光兎に天罡と呼ばれた天秤宮は、四つの怪獣を見て、真剣な顔を見せた。
「あれは邪神四凶です。かつて封印を破り逃げ出したが、当時安倍永望様のおかげで改めて封印できたはずです。」
「安倍様が死んだから、封印も解けたのでしょうか?」
「いいえ、封印は、封印をかけた者の生存にかかわらず、安倍永望様の死で解くものではありません。」
「だとしたら一体なぜ...?」
「光兎さまはひとまず三途川の向こうに行きましょう。夢瞬さまのことなら、我々に任せてください。」
「しかし...!」
光兎は夢瞬の姿を見つめ、なかなか決めなかった。
「蛇夫宮...?」
「はい。ご存知ないのも無理ではありません。」
「知ってるよ。ただ...私の友達によると、君は十二月将ではないはず。」
「そうですね。しかし、今後は入れるんでしょう。元々空にありますし。」
蛇夫宮は微笑む。
「話を戻りますが、夢瞬さま。この四つの獣を覚えていますか?」
「他の三匹は見たことないけど、そいつ...窮奇は、一度安倍家まで来たことがある。」
「その通りです。封印を解けたのはどこの誰かは知りませんが、お二人の命を守らなければなりません。」
「どうするつもり?」
「川を渡してもらう、ですよね?蛇夫。」
宝瓶宮の声が現れたと同時に、水色の長髮な女性も二人に近付いてきた。
「はい。」
「でも蛇夫宮、さっきその話をしたんだけど、今の私じゃ渡れない。」
「それはどうしてです?」
「天秤宮によると...女性が渡る場合、初めて性行為をした男性に手を繋いでもらう必要があると。」
「...!」
蛇夫は驚いたが、それは女性限定の条件ではなく、夢瞬の態度が原因だった。
思春期の少女にしては穏やかすぎる。
「その条件に関して、夢瞬さまが心配する必要はございません。既にこちらで解決法を見つけました。」
「解決法...?」
「はい。」
蛇夫は微かに笑い、そして右手を差し伸べた。
「夢瞬さま、僭越ながら、手を繋がせていただきます。これで問題ございません。」
「でも...?」
「宝瓶宮、護衛を任せてもいいんですか?」
「気を散るとやばいんですか?」
「距離がちょっと、ね。」
「...わかりました。夢瞬さま、蛇夫を信じてあげてください。」
「...わかった。宝瓶宮がそういうなら。」
夢瞬は頷き、二人の提案を受け入れた。
「夢瞬の条件を、蛇夫が解決できますと?」
「はい、彼がそう言いました。」
混乱中に光兎を見つけた太衝、すなわち天蠍宮は言った。
「それはどうやって...?」
光兎にも、蛇夫の能力を知らなかったし、本にも全く記載されていなかった。
蛇夫を手伝ってもらうのも、月将以外の力が欲しいだけで、こういうどころに力になってもらえるとは想定外だった。
「それより光兎さま、早めにご決断を。邪神たちそろそろ動けるようになります。」
「...わかりました。川を渡りましょう。夢瞬の方には誰かが手伝いに行けますか?」
「神後は既にそちらにいますし、夢瞬さまの荷物を持ってる從魁と、いざの場合脱出可能な傳送も行くと思います。」
「...了解です。こっちも出発しましょう。」
光兎は月将たちに支えながら立ち上がり、三途川の向こうに向かって、走り出した。
「夢瞬さま、走れますか?」
「大丈夫。」
夢瞬は頷いて、蛇夫宮と手を繋ぎ、走り出した。
一方、宝瓶宮も自分の力で、飛んでくる砂ぼこりを止めていた。
「夢瞬さま、お手伝いさせていただきます!」
「無理だと感じたら、いつでも現世に連れていけます。」
「了解。」
十二天将と長い間一緒に過ごしたからか、夢瞬は月将たちとは友達のように、普通に会話することができた。
「少々お待ちください...!」
蛇夫は急に立ち止まり、繋いだ手を離さないように、夢瞬もすぐ立ち止まった。
「どうしたの...?」
「夜が明けました。」
「え...?」
夢瞬が見上げたら、真っ暗な夜空が段々明るくなった。
賽の河原の朝が来た。




