十四人目の帰還の夜
「夢瞬、お参りは終わった?」
「ちょっと待って...!」
夢瞬は慌てて本殿の前に走って、二回拍手してから、目を閉じた。
「安倍晴明様、私が無事に安倍永望を連れて戻れて、再び親子になることを、どうか見守ってください。。」
目を開け、夢瞬は静に待っていた光兎の隣に戻る。
「行きましょう。」
「双児宮、お願いします。」
「はっ。」
傳送は歩き出し、伝送能力を使う。
数秒後、全員一条戻橋の上にいた。
「行こうか、夢瞬。」
「...はい。」
緊張と不安を抱え、二人は同時に橋から降りた。
一瞬に、景色が変わった。
「夜...?」
夢瞬は周りの景色を眺める。晴明神社の色はすべて內、夜のせいで暗くなって、あやかしくなった。
「地獄だから、だろうか?」
「いいえ、光兎さま。ここは地獄ではありません。」
白虎と同じ仕事を成す、病と死亡を担当する天秤宮─天罡が言う。
双児宮と真逆でシンメトリーの美を感じさせた服装は、ヨーロッパ古代ナイトの服だった。
「というと?」
「ここは賽の河原です。あなたが言うところの地獄、すなわち冥界にたどり着くには、その川を渡らなければなりません。」
天罡が指差した川その方向、人間界では晴明神社の鳥居の方向だった。
「三途川...?」
「その通りです。」
「光兎、三途川って?」
「現世と彼岸を分ける境目なんだ。」
「賽の河原は?」
「ここ、三途川の川原のこと。親より早く亡くなった子供は、ここで積み石塚を完成しなければならないが、それを鬼が邪魔するので、永遠に終わらない。地蔵菩薩に救済されるまで、ね。」
「...!」
「天秤宮、三途川を渡るには、六文銭を与えればいいと聞いたことがありますが?」
「はい。月将である我々はこのまま渡れますが、お二人なら用意する必要があります。ただ...」
「ただ?」
天秤宮は夢瞬の方を見て、少しためらった。
「男性なら、支払ったらそのまま渡れますが、女性の場合、誰かに手を引いてもらわないといけません。」
「僕じゃダメですか?」
「...ルール上、初めてを奪った男性に手を引いてもらうのですが。」
「えぇ...!?」
光兎は夢瞬の方を見る。
「どうしよ...?」
同一時間、現世。
少年は、永望がよく歩いた階段を上り、そして途中に座った。
「初めまして。僕は十二月将の例外、蛇夫宮。」
その名前、聞いたことがあります。
「今は藤原光兎の手下です。そして今回も、手伝うように言われました。」
十二月将を操れるほどの力を、持つようになりましたか。
「蛇夫宮の能力って、知っていますか?」
しかし、蛇夫宮は十二月将に入っていないため、能力も持たないのではありませんか。
「いいえ、入っていませんが、能力くらいはあります。時空の制限を越えます。」
へぇ...!
「だから、この瞬間に、賽の河原にいる我が主が困っていることを、知っています。」
はい。
「十四年前のことも、知っています。」
...僕も、彼らが賽の河原で何に困っているのか、くらいは知っています。
「なら話は早いです。手伝っていただけませんか。」
「仕方ない。君だけで行こう。」
「ダメ!安倍様を連れて帰るのは夢瞬の考え、君自身が行かないと!」
「でも...!光兎!後ろ!」
「...!?」
光兎が振り向いたら、近付いてきた変わった四つの猛獣にすぐ気付いた。
月将たちはもちろん、光兎と夢瞬もすぐ隣に逃げたが、衝撃に当てられ、結構長い距離に飛ばされた。
光兎は必死に見上げたら、自分が積み石塚にぶつかる寸前に、天秤宮に助かれたとわかった。
しかし、夢瞬の周りには月将はなかった。
「夢瞬...!」
「光...兎...」
衝撃で少しめまいがした夢瞬は、とある温もりを感じた。
彼女と同じくらいの身長の人が、後ろから彼女を支えて、衝撃をだいぶ代わりに受けてくれた。
「大丈夫、ですか?」
「玄武...?」
「ごめんなさい。十二天将の玄武様ではございません。」
意識が戻ると同時に、夢瞬も、二人の声が違ったことに分別できた。
振り向いたら、やはり助けてあげたのは男の子だった。
若く見えるが、瞳の深さから長い歴史を感じた。
しかし、その穏やかな雰囲気に、夢瞬も思わず安心できた。
「誰?」
「十三人目の月将、蛇夫宮です。」
手伝っても構わないが、蛇夫宮、ひとつ約束してもらいたいことがあります。
「交換条件ですか?構いません。」
今後は自分のことを、十二月将の例外とかではなく、十三人目の月将と呼んでください。
「どうして?君には関係ないでしょう?」
言霊、なんて格好つけて言いたいんですが、こっちの言い方の方が好きですね。
変化をつけることを恐れないで。




