十四人目の待ちの朝
少し重みのあるカバンを手にとって、夢瞬は安倍家を片付けてから、外に出た。
一緒に過ごすようになった小さな化け物もついていた。
瞬きの間に、十三人が現れた。
「...!」
「夢瞬!おはよう。」
「おはよう。」
「双児宮の能力なんだ。次の目的地にも連れていってもらうの。」
夢瞬は双児宮の目の前に行って、笑って頷いた。
「そっちが全部の荷物?」
光兎は夢瞬のカバンに指を指して聞く。
「うん。」
「誰かに持ってもらおう...?」
「自分で大丈夫。」
「僕にとって、君の体力はまだ未知数。冒険してはいけない。」
夢瞬のカバンを取って、光兎はそれを隣の少年に預かった。
少年は、若く見えるがとても落ち着いていて、文弱のように見えるのに、力強い感じがする。
「お願いします。金牛宮。」
「はい。」
宝瓶宮が言ったように、すべてのサインは繋がっている。
双魚宮の感情豊かさ故の行動しづらさから、行動力高いが衝動的な白羊宮、そして安定で少し面白み足りない金牛、それからゴロゴロ変わる伝送能力を持つ双児。
「お願いします。双児宮。」
「はっ。」
双児宮は真っ黒な右目を閉じ、そして白く輝く左目を閉じた。再び右目を開いた瞬間、全員が目的地に到着した。
安倍晴明の故居、日本京都の晴明神社。
「ここは...!」
「目的地はこの辺りだが、せっかくなので、参ろうかなと思って。」
「そうだね。」
夢瞬は晴明神社の鳥居を見上げた。
来たことはないのに、なぜか懐かしい気がする。
「夢瞬、来たことある?」
「一度でも。光兎は?」
「何度かだけ。」
「来たことないけど、なんだか、落ち着く。」
「そうか。」
少し肩の力を抜いた夢瞬を見て、光兎も微笑んだ。
「そういえば、今度は一緒にここの晴明祭に来よう。」
「晴明祭?」
「そう。秋分の日にやるの。夢瞬の誕生日も近いでしょ?」
「うん。たしかに。」
「じゃあ一緒に来ない?偉大な祖先様だよ。」
「あまり実感ないんだけど。」
夢瞬は微笑んで、そして隣の小さな橋と彫像に引かれた。
「光兎、それは...?」
「一条戻橋と、安倍晴明様の式神。」
「式神、全然違う。」
「想像ってやつだよ。」
「光兎。」
「うん?」
「君と同じクラスに入る時よりずっと前から、君のことを知ったの。」
「なんで?」
「とある宴会で君と初めて会ったの。そのとき、私のことを安倍夢瞬さんと呼んでくれた。」
「ほう...!」
「嬉しかった。安倍家の付属品ではなく、一人の人間として見てくれること。」
式神に触れて小さな手のひらから、冷たい触感が伝わってきた。夢瞬も少しリラックスできた。
顔は全く違ったはずなのに、安心させる力は同じのようだ。
「安倍晴明様も、このように、心を許せる友人を持っているんのだろうか。」
「あるといいね。」
「いいえ...それはきっと、とても悲しい話だと思う。」
「どうして?」
「光兎は、これらが見えるから、私を受け入れてくれた。」
「夢瞬は、これらが見えるから僕と友達になったわけ?」
光兎の口調から、夢瞬は怒りを感じた。
その上、自分の悪い言い方にも気付いた。
「...いい話だといいな。」
「そうだな。」
「光兎、どうして式神の彫像がここに立つの?」
「噂によると、式神たちは一条戻橋にいて、彼らに話せば、晴明様に伝えるんだって。」
「へぇ...!」
「あと、晴明様の奥さんがあやかしが苦手で、神将たちは橋の下に隠れるんだって。」
「天将だよ。剎華に言われたの。」
「そうか。」
「でも、橋の下に隠れるなんて、彼ららしい。優しい人たちだから。」
「だね。全員と顔合わせたことはないけど、安倍様と君を大事する人たちだと感じた。」
「うん、それだけは疑わなく信じれる。」
夢瞬は式神の彫像を見て、微笑む。
「ところで光兎、どこに行って安倍永望を探せばいいの?」
「安倍様多分死んだと言ったよね?だったら、地獄に行った方が早いかなと思って。」
「ほう...!」
「この一条戻橋ってね、上にいる間だけ、死者が甦るんだって。だから戻橋っていうの。」
「この橋の上に行くってこと?」
「それだと、ただ人間界に戻るだけ。」
「...なるほど。双児宮の力を借りて、橋の上に行くんだね。」
「そう。逆の道を歩くんだ。」
光兎は月将たちを見て、そして神社の入り口を確かめた。
あの人は、現れなかった。




