十二個目の星光の夜
「こんばんは、安倍さん。」
水色のロングカール、彼女は優しく夢瞬に微笑んだ。
「宝瓶宮、かな。」
「ええ。主には少し用事があって、遅くなるらしいので、私だけが先にここに来ました。」
「君は十二将の一人?」
「...それは驚きます。そこまで知っていますね。」
「私が、弱そうに見えるから?」
「いいえ、運命を抗っているように見えますから。」
夢瞬は宝瓶宮を見上げる。
好きではないが、嫌いになれない。
「十二月将も、何かを管理しているの?」
「ええ。しかし、十二天将と少し異なり、前者と後者の関係性を重視しています。」
「例えば?」
「私の場合、前者の磨羯宮がとても頭が固い方なので、私は自由であるべきです。」
「後者は、双魚宮?」
「ええ、自由な私は、感情さえ無視したりするので、双魚宮が感情の波動を重視してもらいます。」
「天秤宮は?私、てんびん座なの。」
「へぇ...天秤宮の前者は処女宮、磨羯宮と同じ固くて、細かいどころまで気にかける方なので、天秤宮は結構大雑把な方でした。」
「天蠍宮は?」
「夢瞬さんから見れば、ご自身の何かが足りないのでしょうか?」
「...?」
夢瞬は宝瓶宮と目を合わせた。そこには、果てしない深みだった。
「...物事への執着。」
「故に、天蠍宮はそれらに結構執着する方です。」
「へぇ...!」
「ちなみに、私たちは四つのエレメントに分類されていることも、ご存知でしょうか?」
「うん。」
「私とあなたは同じく風の星座なので、ある程度似ていますね。」
「...光兎はどの星座?」
「それは言えませんね。まぁ、自由自在で、感情をたまに無視する星座かもしれませんが。」
宝瓶宮は夢瞬の頭を撫でて、少し子供っぽい笑顔をした。
暫くして、磨羯宮と天秤宮と同時に、光兎は現れた。
「ごめん、遅くなった。」
「大丈夫。おかげで、宝瓶宮と少しお話しできた。」
「...そうか。」
「この二人は?」
「彼女は黄道十宮磨羯宮、物事を客観的判断できる人です。」
磨羯宮は、ほぼ地面につく裾を少しつまみ、夢瞬にお辞儀をした。
「彼は黄道七宮天秤宮、個人な感情に影響されず決断できる人です。」
天秤宮は軽く頷き、夢瞬と目が合った瞬間に、少し微笑んだ。
「十二月将の封印は、ホロスコープを持って解除しなければならない、そう聞いたことがあるけど?」
五人は安倍家のリビングに座っていた。
光兎の隣には月将三人、夢瞬の隣には小さな化け物一匹。
「そう。」
「そのホロスコープ、安倍永望に保管されていると聞いた。」
「そう、で、僕がそれを盗んだ。」
「...!安倍家に対抗する力を手にするため?」
永望と藤原家の間に、どっちかを選ばなければならない場合だったら、その答え、夢瞬はすでに決めていた。
しかし、永望不在の今だったら。
「最初はな。でも、そんな考えをしたから、彼らに追い出されちゃった。」
「追い出されて...?」
「我々十二月将が封印されたのは、十二天将より強いわけではなく、人類の意識そのものに影響できる故でした。大自然を操る十二天将と違います。」
磨羯宮は淡々と語った。
「故に、我々を操りたい者なら、せめて恨みや執着に惑わされないくらいな精神力を持たないといけません。断った理由も、それに過ぎません。」
「だったらどうして...?」
「僕が天后さんに救われたから。」
「...!」
「その話言ってたよね?実は天后さんから、僕を救った理由を教えてもらったんだ。」
「...どうして?」
「君の友達だから、と。」
今まで、知らないうちに何度も十二天将に救われてきたことを、夢瞬は知っている。
四凶も、九生の化け猫も。
十二天将は、彼女の友達でさえ救った。
冷たく見える彼らの優しさを、安倍夢瞬は誰よりも知っている。
「...光兎、私は安倍永望を探しに行きたい。いいえ、見つからなくちゃ。」
「探すって?でも安倍様はもう...?」
「そうね、死んだはず。だとしても、地獄に入るとしても、彼女を見つけ出す。」
夢で出会ったその温もりに託された、最後の言葉。
未知な存在なのに、夢瞬は、理由なく彼を信じれるとわかっている。
「光兎、私には何の力もない。今だって、彼らが見えるだけで、まともに戦えない。」
「...手伝え、と?」
「うん!お願い!」
「...準備する時間をくれ。」
「準備...?」
「大したことじゃない。家出した弟を迎えに行くだけ。」




