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もう一度失う  作者: 雨上がり
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初めて声かけた朝

「ただいま。」

夢瞬はカバンを下ろして、窓の外を眺めていた。

透き通る空と、静かな庭。

「今日は静かだな。」

「騰蛇と天空が一緒に出掛けたから。」

金色の長い髪の末は、まるで蛇の鱗のように。

美しく隣に立ってる彼女は、蛇よりも冷たい目線をしていた。

「君は出掛けないね。」

「この家を守ることが私の使命だから。」

「平安時代の時からずっと?」

「...あの頃は都を守っていたが、今はここだけ。」

夢瞬は少しぼーとしたあと、再び青い空を眺めた。

「ねぇ、勾陣。」

「うん?」

「どうして私、ここから出ると君たちのこと、見えなくなるの?」

「...私たち、ここでしか現さないから。」

夢瞬が何度も聞いた質問なのに、勾陣は何度も答えてあげた。

夢瞬がなくなったあと、きっともっと答えてあげたいと思うと、そう知ってるから。

「なぜ、お母さんが見えないの?」

「それは、彼女が君の母親だから。」

「...腹減った。」

「朱雀はすでに食事を準備してる。」

「...そうか。」

もう一度空を眺め、夢瞬は、再び目を閉じた。


「朱雀!ごめん、遅くなった。」

「そろそろ終わるところだ。夢瞬さんを呼んでくれ。」

「え...」

朱雀は振り向き、嫌がってる騰蛇を見つめる。

「仮にでも兇將だ。女の子一人に参ったなんて...」

「参ったじゃない!ただ...仲良くなりたくない。」

「気持ちはわかるけど、永望に、夢瞬さんを見守れと頼まされただろう?」

騰蛇はふてくされたが、一人の女性と目が合わせた。

「騰蛇、夢瞬さんを呼んで。」

「...わかったよ。」

不満の顔をしたままが、騰蛇は二階へ飛んで行った。

「さすがボス。」

「朱雀も、早く料理をテーブルに。」

「了解...!」

貴人は、二人とも行動したと確認したあとで、台所から去った。


「ただいま!わぁう!今日のご飯美味しそう!」

「帰ってばっかりで食べようとすんな。」

天后は、テーブルにダッシュしてる玄武を掴んで、そして朱雀に頷いて、挨拶した。

「夢瞬さんは?」

「騰蛇が呼びに行った。」

「そうか...」

「二人とも、水神の仕事?」

「ええ、季節を交代もしなければ。」

天后と玄武は、たった二人の水神で、冬を代表する天将でもある。

春が来る度、彼らは春の木神である青龍と六合(りくごう)に交代する。


「ただいま...」

気力のない声を聞いて、台所にいる三人はふと笑った。

一番元気のない天将、白虎が帰ってきた。

「天后、玄武、朱雀、こんにちは。ご飯まだ?」

「帰ってばっかりで食べようとすんな。」

今度は朱雀と天后同時に言った。

「しかし白虎、太陰は一緒じゃないの?」

天后は白虎後ろにいるはずの太陰を探してた。

「彼女もうすぐ当番だから、忙しいんだ。」

「そういえば、もうすぐ酉の年だよね。君も大変だな。」

「交代って、する方もされる方もしんどい。これが一番嫌だ。」

「十二年一回だけじゃん。まぁ、お疲れ様。」

白虎は、今申の年の当番であり、病気と葬式を管理する天将でもあった。

冬から春に移る時は、人間にとって病気の起こりやすい時期であって、白虎にも仕事量が一気に上がった。


「...ご飯の時間なのか。」

夢瞬の声を聞いた途端、天将全員はすぐ道を開けた。

「夢瞬さん、どうぞ。」

夢瞬が着席したあと、天将たちは順番に従い、貴人、天后、太陰、玄武、太裳、白虎、天空から、騰蛇、朱雀、六合、勾陣、そして最後の青龍まで、席につく。

「いただきます。」

「いただきます。」

いつも通り、静かな食事。

「...もうすぐ年明けだよね。」

「...!」

夢瞬が質問したあと、十二人は全員、驚いた目線で彼女を見つめる。

十三年続いてきた、十三人の食事で、彼女が何かを喋るのは、今回が初めて。

「十二人で順番を回してるの?干支とか十二支とか?」

「ええ...今は白虎で、来年は私。」

「へぇ...」

夢瞬は少しぼーとしてた。話題を探してるみたい。

「十二人いるけど、十二星座とか関係あるの?」

「関係はあるが、それは私たちの責任じゃない」

太裳は穏やかに言い出す。

「我々は十二天将と呼ばれている。そして、私たちと対応してる十二月将こそが、黄道十二星座を代表する者。」

「あの十二月將たちと、仲はいいの?」

「十二天将は夜中でも出歩けるが、私たちと月将たちは太陽と月のように、ほぼ会わない。」

「...私とお母さんみたいだね。」

夢瞬は苦笑いで言った。


「しかし、珍しいね。夢瞬さん、どうして急に私たちに声かけるの?」

六合は無表情で、みんなが聞きたい質問を言い出す。

「...私、普通の人間と同じ、いつか死ぬよね。」

これは、夢瞬が認めなければならない事実。

他人にとってごく普通な運命は、彼女の悪夢だった。

「...十二天将と話したことがあるって、自慢したいからかな。」

夢瞬は知ってる。

この十二人は、すべてを嘘を見抜ける。

それでも、彼女が嘘をついた。

願いを語ってしまえば、叶えなくなるからだ。

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