表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度失う  作者: 雨上がり
14/61

七つ目の咲きの朝

「夢瞬さん、おはようございます。」

「おはよう。剎華(せっか)さん。」

夢瞬は目線を、自分のとなりに立ってる少女に置く。

彼女は夢瞬のクラスメート、土御門剎華。

棗色で長い髪のせいで、彼女は優しく、そして弱くに見える。

「光兎さんと一緒に教室に来れませんでしたよね?」

「光兎は課題を提出しに行った。」

「なるほど。仲がいいんですか?」

「うん。光兎はいい人だ。」

「そうですね。」

剎華が微笑んで、夢瞬も少し微笑んだ。

他人とふれあいたがらない夢瞬でさえ、剎華と一緒にいるときは、いつも安心できる。


「そういえば、夢瞬さんに関して、少し噂になっていますよ。」

「私?」

「はい。夢瞬さんの苗字、安倍ですよね。安倍晴明と関係してるのかなーって。」

「安倍晴明様の子孫ではありますが、あくまで分家です。」

「へぇ...!本当に安倍晴明の子孫でしたか!」

「うん。」

「みんなきっと驚きますよ。」

「光兎...光兎の藤原も、古代の名門では?」

「それはそうですが、小さい頃から耳にしていますので、もう驚きませんよ。」

小さい頃から...。

夢瞬は自分の記憶を閉じ込めた。


「ごめん、夢瞬、お待たせた。あれ?土御門さんも?」

光兎は慌てて席についた。

「はい。一人ぼっちになったレア夢瞬さんを捕獲しに来ました。」

「それで?」

「手間取りますね。また来ます。」

剎華はくすっと笑った。

「今日のところは夢瞬さんを返します。夢瞬さん、また今度。」

「ええ。」

剎華の背中を見て、夢瞬はふっと微笑んだ。

「剎華さん、本当にいい人だね。」


「そういえば、夢瞬。誕生日もうすぐだろう?」

「そうね。」

「秋で生まれるにぴったりな髪色だな。」

夢瞬は自分の、紅葉色の髪を撫でて、微笑んだ。

「たしか、たくさんの『ああいう』人が、誕生日のパーティーに来てくれるんだよね?」

「うん。」

「でもそれだと、夜中でパーティーをしなければならないじゃん?」

「早めに時差を調整してもらうみたいです。」

「さすが夢瞬様。」

「...いつも申し訳ないと思ってるけど、あの人たち、いつも楽しそうなの。」

「そりゃ、君の成長を見届けるんだからな。そういえば、安倍様はどうする?」

「来てくれるよ。詳しくは知らないけど、会場の時間を夜に設定すれば、お母さんも来れるようになるらしい。」

「へぇ...すごい。」

「光兎も来る?」

「いいの?夢瞬ならともかく、他の人は頷いてくれるかな...」

「天将たちに聞いてみるよ。せっかくのパーティーだから、来てもらいたい。」

「うん!」


家に帰った夢瞬は、貴人を慌てて探し回っていた。

他の天将ではなく、貴人を探す理由は、貴人にある唯一無二の身分。

十二天将の頭。

「貴人...!」

「夢瞬さん?どうかしましたか?」

「友達を、誕生日のパーティーに招待してもいい?」

「藤原家の光兎様ですか?」

「うん。」

貴人は立ち上がって、寒くなっていく風を感じる。

「...わかりました。招待しましょう。」

「...!ありがとう!」

「夢瞬さんにとって、藤原様はどんな存在でしょうか。」

「え...?光兎は、友達だよ。」


「...夢瞬さん。晴明が生きている頃、彼は常に藤原家のために力を尽くしているのを、知っていますよね?」

「知ってる。」

「晴明が亡くなって以来、その力を受け継げる者は現れず、安倍家と藤原家も、段々繋がりを失っていきました。」

「うん。」

「しかし、永望が現れました。」

夢瞬は、お母さんが現れることは、家族の関係性を良くなるきっかけになれると思った。

しかし、貴人の顔付きは、それを否定した。

「藤原家は、権力を握るために、晴明を優待したのです。」

「天皇陛下の権力に負けないように?」

「はい。しかし、状況が変わりました。天皇に実際な権力を持たない今、藤原家にとって、永望は脅威になりました。」

「どうして?」

「晴明が亡くなってあと、占いに関する術式を独占してるのが、藤原家です。」

貴人は珍しく、厳しい表情をしていた。

理由は、他にならない。

「永望は、私たちを見つけて、説得して、そして私たちから術式を教われました。」

「つまり、優勢に立ってるはずの藤原家は、君たちとお母さんのせいで、劣勢になったってこと?」

「はい。今はとても厳しい関係性になっています。永望は藤原家にどうこうするつもりはないが、される可能性なら十分あります。その時、あなたはどうします?」

うつむいた夢瞬は、自分の答えを知ってるが、向き合う勇気はなかった。

貴人は微笑んで、隣に咲いてる朝顔を摘んで、夢瞬の髪に飾る。

「...?」

「夜になると枯れる花です。彼女が生きている限り、あなたの答えを聞かせてあげましょう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ