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その後、王国は騒然となっていた。
なぜなら、レナは次期王妃として、慈善活動に熱心であり、かつ、どんな身分の者にも分け隔てない態度で、庶民たちの人気が高かったからだ。
これは、レナが自分の身を守るために、一人でも多く味方を作るために頑張った結果だった。
だが、庶民たちの知りえない場所で、大人気だったレナは、王国を追放されてしまった。
庶民たちは王家のやることだからと、燻る気持ちを呑み込んだ。だが、どうしてレナが追放されてしまったのかについては、伝わってくる噂を信じる庶民はいなかった。
なぜなら、元々市井に住んでいたマリアンヌの方が、イカレテいるという認識だったからだ。
マリアンヌも転生者だった。だから、自分がどんな運命をたどるのか知っていた。そしてよく吹聴していたのだ。
「私は王太子の婚約者になるの!」と。
その時には既に、レナのすばらしさを、人々は目の当たりにしており、そのレナを押しのけて王太子の婚約者になれるような人間性も持ち合わせていそうにないマリアンヌが、どうして王太子の婚約者になるのかと、頭がおかしい認定をしていた。
だが、庶民であったはずのマリアンヌが、実は男爵令嬢で、そしてあれよあれよという間に、本当に王太子の隣に立つことになってしまった。
市井の人々は、マリアンヌの妄想が現実になったことに驚いて、そして、一体マリアンヌがどんなあくどい方法を取って王太子に取り入ったのかと穿っていた。
それほど、マリアンヌの周りの人々への態度が酷かったからだ。
何かあれば二言目には「私は王太子の婚約者になる身よ」で、えこひいきを求める。他の庶民を馬鹿にする。そんな人間が周りから好かれるわけはない。
対して、レナは辺境の地にでも将来のことを見据えて足を運び、不足と思えば寄付をするように父親に働きかけ、辺境の人々へのねぎらいや感謝の気持ちを忘れなかった。
だから、王都から離れても、レナが国を追放されたことを嘆く人々は多かった。国境警備隊もそうで、レナが国境を越えようとするときには、ひどくこの国の将来を嘆かれた。でも、追放されてしまったレナには、もうどうすることも出来ない。
レナが追放された情報は、瞬く間に国内に広がった。それと同時に、マリアンヌの悪評も広まっていた。あまりにも対照的な二人だったからだ。
それほどマリアンヌが国母になる国の将来を憂える庶民は多かったのだ。
そんな不穏な空気が立ち込める王国の空に、ある映像が映し出された。
マリアンヌの嘘を明らかにする映像だった。
レナが王国から出てしまったことで、ゲームは終了し、ゲーム補正が解かれたのだ。
レナが頑張って発動しようとしていた魔法へのブロックが、解除されたのだ。
そもそもこの魔法を実地で使ったのははじめてだった。レナは頑張って、何度も発動しようとしていた。だからこその不具合だった。だから、こんな不具合と思えることが起こるとは、レナもサイールも思っていなかったのだ。
そのせいで、本来なら、パーティー会場だけで映し出されるだけで済む映像が、王国内の至る所で再生された。