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イマドキ魔女は、ルンバに乗ってやってくる!?

作者: 0024

 魔女の乗り物には変遷があるという。


 私なんかは中世からずっと生きている古株の魔女なので(年齢は訊かないで)、伝統的な『ホウキ』を使う。

 それが当たり前だし、それ以外の魔女を知らない時代も長かった。


 でも、時代は進んでいく。


 デッキブラシに乗る魔女。

 掃除機に乗る魔女。


 時代が進めば、乗り物も変わる。

 それは確かに、致し方ない事だろう。

 だが。


「……な、何、あの空飛ぶ円盤みたいなの」


 私が久しぶりに(何年ぶりかは訊かないで)魔女会合に参加し、色々な年代の魔女と語らおうとしたときに、一人、明らかに異質な乗り物に乗ってきた魔女がいたのだ。


「こんばんはっ★」

「こ、こんばんは……」


 私はその見慣れない乗り物をしげしげと眺める。

 周りの魔女は困惑していないらしい……。

 60年代生まれの魔女に私は尋ねた。


「……ねぇ、コレ何? 箒の一種なの?」


 すると彼女は答えた。


「ルンバっていうらしいわ。自動的にお掃除してくれる機械なんですって。便利よね」


 ルンバ……そんなものが今の世にはあるのか。

 同じく60年代生まれの魔女が私に言った。


「ウチも自宅では使ってるわよ」

「マジで!?」


 そう言う彼女の乗り物はごく普通のレトロな掃除機だが。


「魔力を込めるのはやっぱりこっちのほうがしっくりくるのよ」

「そうよねぇ」


 60年代同士の会話も私にはついていけない。

 魔女と言えば箒、そういう時代を長く生き過ぎたが故の弊害なのだろうか。


「どしたんですか? 大先輩」

「あ、いえ、ちょっとジェネレーションギャップを感じているだけ」


 目の前の魔女は現代日本の女子高生という奴らしく、制服のまま魔女会合に来てるし(かろうじてとんがり帽子と黒マントだけ身に付けているあたりが、ギリギリ魔女と判定できるポイントだろうか)。


「やっぱり棒状のモノに乗らないと、魔女として気分まりょくが乗らないと私は思うんだけれど……」


 私は年若い魔女にそんな苦言を呈してみる。

 だが、彼女はあっけらかんとして笑った。


「あっはっは、大先輩、価値観旧いですよー★ 80年前にだって、戦闘機を模した装置ユニットを履いて、股間丸出しで飛ぶ魔女ウィッチがいたそうですよ?」

「そ、そうなの?」


 いかん、何年ぶりの魔女会合なのかがバレる。

 だがその言葉には周りの(80年代生まれくらいの)魔女がフォローしてくれた。


「いや、あれは都市伝説でしょ。架空の魔女よ」

「えー? そうなんですか?」


 なんだ、そうなのか。

 そうだよな。

 戦闘機みたいな速度スピードで飛べる魔女なんているわけない。

 まして、股間丸出しで。


「……でも、性的興奮を基盤ベースにして魔力を生み出すのは魔女の伝統ではあるわね。ある意味、股間を丸出しにするのは理にかなっているのかも」


 私はそんな古臭い理論を頭の中で打ち立て、架空の魔女とやらに想いを馳せる。


「下着は履きますよ? なんで完全に丸出しだって思ってるんですか、大先輩」

「履くの!?」


 ついでに言えば下着じゃなくてズボンだそうです、と言う。

 私には理解不能である。


「と、兎も角。今はそこじゃなくて貴女のそのルンバ……? とやらよ。それってホントに魔力を込めて飛べてるの?」

「そですよ? 見たじゃないですか★」


 実際、私が箒で空を飛ぶのと遜色ない動きで飛び回っているように見える。

 跨りもしないのに、良くバランスを保てるものだ……。


「そりゃ落ちないように力場を発生させてますし。大先輩の時代からそうなんでしょう?」

「まぁね」


 箒に跨って、そのまま安定感が出るわけがない。

 当然、落ちないように力場を発生させるのは、中世時代からの当たり前の常識だった。


 しかし、中世時代は箒の棒状の部分が股間を擦る事による性的興奮によって生み出される魔力という要素があった。

 目の前の円盤はそういう要素がまるでなさそうに思える。


「情緒がないというか……近未来的というか。まるでUFOね」

「でも、カッコよくないです? もっと巨大化させたら本当にUFOみたいに見えるし★」


 まぁ、それはそれで新しい価値観なのだろう。

 私にはまるで理解できないし、操作コントロールも出来そうにないが。


「大先輩も試しに乗ってみましょ★ 温故知新、色んな価値観を交えてこその魔女会合でしょ★」

「え、ええ。無理よそんなの」


 中世からずっと箒以外に乗った事がないのに。

 時代が掃除機というトレンドに切り替わった際だって私はずっと箒を貫いてきた。

 ン百年愛用し続けた箒からそういうのに乗り換えるのは、心理的抵抗もある。


「逆に貴女は箒に乗る訓練はした事ないの?」

「んー、生まれた時から掃除機ベースでした★」


 ガックリ来る。

 数世紀も世代が離れると、もう箒を使う家庭もないのか。



「そのうち、そのルンバとやらもまた新たな掃除器具に変わってしまうのかしらね」



 私はそんな風に悲しげな目線を送りつつ、ああ、そろそろ大掃除の時期だな、などと思うのだった。


(終わり)

ども0024です。


突発的思い付きをネタにしてみました。

まぁ、突発的と言いつつ、実は結構前から色々こういう妄想はしてたんですけど。


以下のネタを書きたかっただけです。


デッキブラシに乗る魔女……言わずもがなですね。

掃除機に乗る魔女……例が出ませんが、そういうのもスッと描写されるフィクションはあるはず。

戦闘機に乗る魔女ウィッチ……言わずもがなですね(笑)


あと、箒が性的なモチーフになっているというネタも書きたかった。

そんくらいですかね。

キャラの名前がないのも、特に物語として書きたい内容があった訳じゃなく、こういう小ネタを書き連ねたくなったからというだけです。


そしてそろそろ、大晦日で大掃除ですね。


みなさん、家の掃除は何を使ってやっていますか?

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