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夢者  作者: 高島 良
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王国兵5

 やっと見つけた宿のベッドに転がりため息をつく。栄えた王都で宿探しに困る事は無いのだが、少しまともな宿に泊まる必要があった、配属書? をもってきた綺麗な制服の青年に渡された袋なのだが、みんな渡されてたので、当然金が入っていると思って特に確認もしなかったのだが。移動中ちょっと中をのぞいてみると金貨が大量に入っていた。

 この世界では普通は金貨なんて見る事はない、俺が見たのは数回で貴族様がやばい仕事を頼む時ぐらい。それも一枚だ、この袋にはたぶん100枚以上入っている、一枚の価値がどれくらいかと言うと、正直よくわからない。金貨何枚の価値なんて発言をするのは、貴族様だけで宝石ギラギラの剣を自慢していた時ぐらい、もう別の通貨に近い。よって、この金貨は領主様への届け物であると推測し、その詳細はたぶん命令書に書いてあるんだと思う、しかし読めないし、道行く人に読んでもらって、こんなに金貨もってるとばれればどうなるかぐらい見当がつく。


 翌日、とりあえず命令書の内容をさらっと安全に確認する為に衛兵の詰め所に行って頼み込んで隊長さんに読んでもらう。


「これを、あんたが渡されたのか?」


 隊長さんの目には、明らかに不信感がみなぎっている。


「そ、そうです。フィールに行けばいいんですよね?」

「そうだな。」

「わかりました、お手間とらせてすいませんでした!」


 とりあえずさっさと撤収、このままでは俺は命令書を盗んだ盗賊扱いで、また猿ぐつわに黒い袋からやり直しになりそうだ。

 フィールへ向かう道は、宿で聞いて朝でれば夕方には着くとの事だったので、王都脱出へと門を出ようとしたのだが、衛兵さんに止められる。呑気に朝飯食ってる間に手配されてしまったのだろうか、言い訳しようにも、助けてくれそうな俺の知り合いといえば、歩兵隊の隊長さんか、秘書さんぐらいだが、本名知らない……。

 綺麗な制服を着た男が入って来ると、衛兵達が姿勢をただす、どうやら偉い人のようなのだが、荷物を持ってくれて、いや取られてしまったので、素直についていく。高そうな馬車が止まっており、中にはさらに偉そうな貴族様が座っている。


「あの、失礼ですが、お名前を伺っても?」

「……あぁ、気にするな、近所の領主だ、気楽にいこう。いや、素晴らしい活躍だったそうじゃないか、フィールまで送ろう、道中話し相手になってくれないか?」


 とりあえずこの領主様、体格が良すぎる、身長はちょと高いぐらいだろうが、マッチョな軍人が綺麗な貴族様の服を着ているような、違和感を感じる。

 話してみると、大隊長の知り合いだったらしく、昔は一緒に戦場にでていたそうだ、一度俺の話もしていたらしい。大隊長や弓の話など、質問攻めにされ、名前や領地の名前も聞けないままフィールに到着してしまった。

 あんな領主様が上司ならよかったのにと思いながら馬車に手を振る。なにせこの世界の領主様は絶対的な権力を持った人で、王様でも国を裏切ったり、大量虐殺でもしないかぎり何も言わない、領主同士戦争してもほったらかしなぐらいなので、領主様には逆らったり出来ないのだ。しかも、聞いた話ではかなりやんちゃな領主様がおおく、ドジっ子な部下がさらっと処刑される話は日常茶飯事だ。下っ端の衛兵が領主様に会う事なんて無いんだろうが、言動には気を付けなければいけない。

 馬車が見えなくなり、振り返るとやらかした事に気づく、町の人達があからさまに距離をとって警戒している、声をかけようと近づいていくと、足早に去っていく。見せてほしいと言われ、馬車で弓を組み立ててしまい、そのままだったのがいけなかったのか、やらかした転校生みたいになっている。 

 衛兵達の詰め所に向かい、やる気無さそうな隊長に命令書を見せると、開きもせずにつき替えされる、読めないというか、見てはいけないらしい、紙の材質でわかると言うのだが、面倒事は避けたいのだろう、領主様に直接渡せとの事で、領主様のお屋敷へ。いきなり殺されたりはしないだろうが、とりあえず綺麗な奥方や娘さんがいても、目を合わさないようにしよう。

 街はずれの林を抜けた先にあるその屋敷、大きさはララのとこと一緒ぐらいなのだが、ちょっとお手入れが雑、ボロってほどではないのだが、掃除嫌いな領主様なんだろうか。

 でかい扉は、ノックしてもほとんど音がしない、しばらく待っても反応がないので、とりあえず中に入る。屋敷の中は綺麗に掃除されている、と言うか何もないし誰もいない、半日歩き回ったが、屋根裏にあった数個のシングルベッド以外、ロウソクの一本もない。これだけ何も無いと、逃げ出したわけじゃないんだろう、引っ越したって感じだろうか俺は連れていってもらえなかったんだろうか。

 夜になって、屋根裏にもどってベッドに横になる、久々に静かな一人の夜。レッドテイルも、弓隊も俺を置いていくのか、なぜ連れていってくれなかったんだろう。


 翌日は、もしかしたら戻って来るかもしれない領主様の為に、やたらと広い庭を掃除する。夕方になっても、一割も終わらない、とりあえず町までもどって、食べ物を探す。

 酒場に入って、領主様がどんな人か知っているかと聞くと、カウンター越しに店主は知らないと答える。今まで酒を飲んでいた客たちが、一斉に店をでていく、懐かしい光景だ。傭兵村に着いてすぐの頃もそうだった、黒の魔法を持つ弓使いは、どこにいっても嫌われ者だ。


「店主、すまなかった、酒とパンを分けてくれるか。」

「気にすんな、客を選べるほどいい酒と女がそろってるわけじゃない。数日もすればみんな慣れるさ、それまでは貸し切りだ、人の倍は食って、飲んでくれ。」

「……ありがとう、そうするよ。」


 翌日からは、酒場から屋敷に通い、庭掃除と少し弓の練習をして、酒場に泊まる日々が続いた。店主が帰ろうとする客に、俺を屋敷で働く新しい衛兵だと言って回り店に客は戻った。とりあえず、ホールには顔を出さず、2階の部屋を借りて食事も酒も運んでもらった。女はいらないと言って、多めに宿代を払っていたのだが、店主の従妹で店を手伝いに来ていた人妻に手をだしてしまう、まいど自分の意志の弱さがいやになる。こんなの領主様にばれたら、いや、領主様が帰ってくることもないのかもしれないが。

 一週間が経過して、命令書解読の為に色々と回ってみたが、そもそもこの世界は字が読める人が少ない上この無駄に豪華な紙は偉い人意外手にとってはいけないとか言って見てもくれない、そして偉い人に会いにいっても門前払いされる。王都で読んでくれた衛兵は、実は意味分かってなかったのだろうか、自分で書き写して見せてみたのだが、解読不可能と言われてしまった、書いてる俺が見ても同じ記号に見えないのだから、それもやむなし。

 このままでは、使えない金貨に手をだしてしまいそうなので、山に入って魔物や獣を狩って、宿代代わりに酒場に渡す、毎回店で使い切れない分は売ったと言って、律儀に渡してくれるので、貯金も増える。


「ユズ、一回も領主様って見たことないの?」

「そうですね、町に来ることがあってもたぶんお忍びですから、領主様とは名乗ってはくれないんじゃないですかね。お酒もっともってきます?」

「いや、大丈夫。今日は、もう帰るの?」

「お客様がいるのに、帰れないじゃないですか、大丈夫ですよ、孫が泊まりに来て親達はよろこんでます。」

「いいのか? 旦那は?」

「めったに帰ってこないし、帰って来ても、他の酒場で遊んでます。あの不良鉱夫は家には寄り付きませんから。」

「こんなかわいい嫁がいても、帰ってこないのか。」

「そんなこと言ってくれるのは、お客さんだけですよ。」

「みんな見る目ないなぁ。」

「もう30ですよ、店の若い子じゃなくていいんですか?」

「いや、むしろお客取ってないのに、こんな事になって。」

「嫌だったら、もっと抵抗してましたよ。」


 そういってゆずは、すこし笑う。この人の笑顔はとても落ち着くし、あたたかな可愛さがある。しかし、人妻である事に変わりはないわけで、面倒な事になるのを恐れてもいる。毎日猟師として生活して、こんな女性がまっている家に帰るのも、いいのではないかとも思う、領主様が帰ってこないのであれば本気で考えてもいいのではないだろうか。


 まだあまり土地勘もなく、山に入っても何も捕れない日もおおい、朝夕は屋敷によっていたのだが、ある日の夕方、門の前に馬に乗った兵隊が待っていた。

 どうぞと手紙だけ渡して、去って行きそうになるので、中を見るまで待ってもらう。とりあえず、読めない単語をその兵隊さんに読んでもらい、一週間後の王宮で行われる祝賀会に来いと、書いてあるらしい事がわかる。意味がわからないが、兵隊さんが言うにはあて名は俺宛てらしい、警備の増員だよね? と兵隊さんに聞くも、詳細はわかりかねますと、丁寧にかわされてしまった。特にすることもないし、上司もいないので問題ないだろう、それに王宮にいけば命令書を読んでくれる人がいるかもしれないし、領主様もいるかもしれない。自分でもいい方に考えすぎだと分かりつつも、これしかないと投げやりに王宮に向かう事にする。

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